ロナさんとぶらぶらする ①
「ロナさん、凄く可愛いー!」
「そ、そうかしら?」
「うん。可愛い。ね、パパ」
ロナさんはわたしがおすすめした服を着てくれている。やっぱり普段は黒いドレスだからね。こういう可愛い系のワンピース着ていると、いつもと違う感じがしてより一層ロナさんの良さが出ていると思うの。
ちなみにおさげで二つ結びにしているの。わたしとおそろいだよ。わたしもね、ロナさんと同じく黄色のワンピースを着ているの。
柄は違うけれどこうして同じ色のワンピースを身にまとっているとおそろいで、なんだか嬉しいよね。
パパに可愛いよね? というと、似合っているとは思っているのか「ああ」とだけ答えた。
ロナさんみたいな美人さんの普段とは違う姿を見たらドキッとしたりする人って多いのかなって思うけれど、パパって鉄壁な感じがするよね。
「ロナさんとおそろい、なんだかすごく嬉しい! 今日はよろしくね、ロナさん!」
「ええ。私もベルレナと一緒にお買い物に行くの楽しみだわ」
ロナさんが優しく笑ってくれて、わたしは嬉しくなった。
髪が長いと色んな髪型が出来てなんだか楽しいよね。ロナさんはわたしに付き合ってくれて一緒に髪型変えてくれるんだ。
「じゃあ、パパ。行ってくるね」
「ああ。何かあったら呼べよ」
「パパ、ロナさんも一緒だから大丈夫だよ」
わたしがそう言っても、パパは難しい顔をしている。そしてロナさんに向かって、「ベルレナを守れよ」という。
それに対してロナさんは、
「魔導師の名にかけて、ベルレナを傷つけさせないわ」
そう言い切った。
そのロナさんの言い方は何か特別な意味を持つのか、パパはそれ以上何も言わなかった。
それからわたしはロナさんと一緒に転移で、街に向かった。初めて行く街にロナさんと二人で行けることにわたしは嬉しくて仕方がない。
「ふふふ~ん」
「ベルレナ、楽しそうね」
「楽しいよ。ロナさんと一緒に買い物だもん」
「ベルレナは本当に可愛いわね。私、子供にそんな風に言われたことなかったのに」
「わたしにとってロナさんはとっても素敵な人だもん。それにその子もロナさんのことをちゃんと知らなかったからじゃないかな。ロナさんを知ったらロナさんがどれだけ優しい人かってわかるはずだもん」
そう言い切ったら、隣を歩くロナさんは恥ずかしそうに、ごまかすように「行くわよ」といった。
街にはそれなりに人が多くて、ロナさんと手をつなぐ。
逸れたら大変だもんね。
にこにこと手をつなぎながら歩いていたら街の人に声をかけられる。大体、ロナさんのことを母親か姉かで間違えられる。いつかロナさんのことをママって呼べたら楽しいのにな。
もちろん、パパの気持ちが一番重要なんだけれど。
ニコラドさんもパパが恋愛するの知らないって言っていたし、パパってどういう人が好きなんだろ?
そんなことを考えながらロナさんと一緒に街を歩く。
「ねぇねぇ、ロナさんは子供の頃、秘密基地とか作ったりした?」
「私は作ったことないわね。でもベルレナの話を聞いていると、秘密基地を作るの楽しそうだわ」
「そっかぁ。じゃあ、一緒に秘密基地に置く家具選ぼう」
ロナさんは少しだけ寂しそうに笑っていて、もしかしたら小さかった頃のロナさんは秘密基地を作ったりする余裕はなかったのかもしれないと思った。
わたしが一緒に選ぼうって言ったらロナさんは嬉しそうに笑ってくれた。
わたしの作っている秘密基地は、小さなものだからおけるものは限られているけれど何を置こうかな? パパをびっくりさせるようにしたいけれど……。
そんなことを考えながらわたしはロナさんと家具屋さんに向かった。でも家具屋さんで販売されているものは木の上に建てた秘密基地には置きにくそうなものが多かった。小さな机とかは買ったけどね。
あまり大きな家具は置きにくいもんね。
そういうことをロナさんに告げたら、「じゃあ旅の道具が売ってある場所に行きましょうか」と言われた。
旅人とか、冒険者とかが使うような道具だと持ち運びできるものだから小ぶりなものが多いんだって。
「私も昔旅していたことがあるから、少しはベルレナの家具選びに役立てると思うわ」
「そうなんだ。ロナさんは結構色んな場所に行ったの?」
「そうね。若い頃に色んな場所をさ迷い歩いていたわ」
魔導師であるロナさんの言う若い頃というのは、どのくらい前の話なのだろうか? 今のロナさんは転移魔法が使えるけれど、その頃のロナさんは転移の魔法も使えなかったのかな? と思う。
自分の足で歩いて、色んな場所に行くのも楽しそうだよね。




