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秋、山に行く ③

「ユキア、今日は秘密基地を作るよ」



 今日も山に出たわたしがユキアにそんなことを言ったのは、本で秘密基地についての記述を見たからだ。



 誰にも知られない場所ってそういう響きだけでもなんだかかっこいいよね。本で読んだものは子供だけの秘密基地のお話だったの。大人たちの知らない秘密の場所で子供たちだけの世界が広がっているってなんだかおもしろいよね。わたしは山の上でパパと過ごしているから、近所に同年代の子供はいないけれど、ユキアがいるからわたしとユキアの秘密基地って感じに出来るのかもってワクワクしてる。



「ユキアはどこに秘密基地を作りたい?」

《んーとね、寝やすい場所!》

「それは大事だよね。お昼寝とかできそうな場所がいいよね」



 お昼寝するのも楽しいので、ユキアと一緒にのんびりお昼寝出来る場所が作れたらきっと楽しい。それに好きなものとか持ち込んでのんびりするのもいいかもしれない。となると魔物が襲ってこない場所であんまり環境の変化が起こらないところに作らなきゃだよね。



 折角秘密基地を作ったのに水害とかが起こってダメになったとかだったらわたし悲しいもん。




 そういうわけで山を歩きながらわたしとユキアは秘密基地を作るにふさわしいところを探そうとぶらぶらしている。





 やっぱり景色が良い場所がいいかな。



 昼寝をした後に、ふと外を見たら綺麗な景色が広がっているとかそういうのも楽しいと思うの。

 秘密基地って名前だけど、完成したらパパを招待するのもいいかもしれない。完全に完成するまではパパに秘密にしておいて、これ、わたしが作ったのってパパに自慢するとか。

 そういうことを考えるだけでわたしは楽しい気持ちでいっぱいになっていた。






「ユキア、ここはどう思う?」

《あの魔物がこのあたりうろうろしているから大変かも》

「あー、確かに! 建物みたいなのを作ってもそれを壊される可能性あるよね」



 ユキアと一緒に何処に秘密基地を作ろうかと話し合う。



 でも候補にした場所も問題があったりして、中々秘密基地を作る場所は確定しなかった。この山には沢山の生物が生活して、その魔物たちの生活の邪魔にならないように――、彼らに秘密基地が壊されたりしないようにしておかなきゃいけない。



 魔物が近づきにくくするものも調合出来るようになってはいるけれど……、そもそも元々魔物たちが生活していた場にいきなりわたしたちが秘密基地を作ってその生活を邪魔するのはしたくないしね!

 肉食の魔物だと襲ってくることも多いから、せめて秘密基地を作る場所の近くにいるのは草食の魔物にしたいな。

 そう考えると魔物の観察をするのって、役に立っているって思うの。




 ユキアと一緒に秘密基地の場所を決めるために、山の中をぶらぶらした。夢中になって遅くまでぶらぶらしすぎて、心配したパパが迎えにきた。




「ベルレナ、あまり遅くまでは出歩くな」

「ごめんね、パパ! 気づいたら時間が経ってたの」

「夜に出かけたいなら俺と一緒にだ。夜は昼と違った危険がまたあるからな」

「うん」




 迎えに来たパパはわたしに向かってそう言って笑いかけてくれた。



 夜は夜行性の魔物とかが動き出しちゃうからまた違った意味で危険だったりするもんね。わたしも昼間はユキアと一緒に出歩いているけれど、夜の屋敷のある山って知らないもん。




「時間を忘れるぐらい何をしていたんだ?」

「えっとねー、今は秘密!!」




 屋敷に戻ってからパパに問いかけられて、そういったらショックを受けた顔をされる。

 パパはやっぱりわたしのことが大好きで、だから隠し事されると思わなかったみたい。




「ふふ、パパ。そんな顔しないで。準備できたらパパにちゃんというから。今はね、わたしとユキアだけの秘密なの」



 わたしがそう言ったら、パパは頷いた。



 早めに秘密基地を作ってパパを招待しないとね。パパが凄いって言ってくれるような秘密基地作れるかな? パパをあっと言わせるようなものが作りたいよね。



 でも凝ったものにすると時間かかりそうだよね。

 と、そんなことを考えているけれどまずはどこに秘密基地を作るか決めないと!





 パパも子供の頃に秘密基地作ったりしたのかな? ……なんだかパパは子供の頃でも大人びていたイメージ。ちょっと気になるけど、そのことを聞くのは秘密基地が完成してからかな。今聞いたら、わたしが秘密基地を作ろうとしているのがバレバレだもんね。


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