海へ遊びに行こう ③
浜辺にたどり着いてからも、この陸地に上がる方法が全くないので、この島って本当に人が住むのには向かない島なんだなぁって思った。だって、崖だよ! 道らしきものがなく、魔法が使えない人だと紐とかで登る感じかな。落ちたら落下して終わりだね。
「なんだか浜辺にわたしたちしかいないの面白いね。独り占めって感じ」
わたしがそう言って笑えば、パパも笑っていた。
パパも楽しそうでわたしは嬉しい!
ユキアもはしゃいだ様子で浜辺を歩き回っていて、途中で海から魔物に襲い掛かられてびっくりしていた。パパが対応してユキアは怪我もしていなかったけれど。わたしの腕の中でユキアがぶるぶると震えていた。
ユキアは精霊獣とはいえ、まだ子供だから急に来た魔物には対応できないみたい。ユキアも大きくなったらああいう魔物もどうにか出来るようになるのかな。
それにしても不意打ちで攻撃してくる魔物のことをパパはどうやって認識しているのだろう。そう問いかけたらパパは魔力で認識しているんだって教えてくれた。
そういう風に認識できるようになったらどこにいっても命の危機にさらされたりしなさそう。そういう風になりたいなとわたしはパパを見る。
「わたしもパパみたいに色々出来るようになりたいなぁ」
「少しずつ出来るようになっているだろう」
「でもまだ、屋敷の周りを一人でうろうろも出来ないし……」
「あの辺は魔物が強いからな。ベルレナも強くなっているが、まだ難しいだろう」
「……学園に入学する頃ぐらいまでにはうろうろ出来るようになるかな?」
「その位にならベルレナなら出来るようになるだろう」
「ふふ、じゃあそれを目指すから、ちゃんと見ててね、パパ!」
「ああ」
パパが優しい笑みを浮かべてくれていて嬉しい。出会った頃はこんな風にパパが優しい笑みを浮かべてくれるって思ってなかったなと思う。あの時に比べてずっとパパはわたしに優しくなっているなと思う。
「ちょっとわたしが魔法使ってみるね! パパ、もしわたしが失敗したら助けてね」
「ああ」
わたしはこの断崖絶壁の崖を自分の魔法を使って浜辺から陸地に上がってみることにした。
わたしがもし失敗してもパパが魔法で助けてくれるから大丈夫なんだよね。パパがいると本当に色んなことに挑戦するのも楽で嬉しい。
「ベルレナが命ずる。風の神の加護を持って、対象の身体を浮かせよ。《浮遊》」
わたしは自分とパパと、ユキアの身体を浮かせる。
うーん、これだけでもやっぱり結構難しい。というか、誰かを動かすのって本当にドキドキする。パパってやっぱり凄いよね。転移魔法でわたしの身体を簡単に移動させるしね。
わたしはゆっくりと身体を浮かせていく。
何だか自分の魔法で、自分の身体が上昇していくと不思議な感覚になるね。わたしがこんな風に魔法を自由自在に使えるようになるなんて思ってなかったし。うん、ドキドキするけれども楽しい。
上へと舞い上がり、あと少しでたどり着きそうってところで鳥の魔物が横を通って慌てて魔法が解けてしまった。なんとかパパとユキアを浮かせているのは解かないように出来たけれど、油断したわたしは落ちていく……と思ったけれどパパがすぐにわたしを浮かせてくれた。
びっくりした!
「ベルレナ、大丈夫か?」
「うん。油断しちゃった」
「落ち込まなくていい。ああいう油断は誰でもするものだ」
「……うん、今度から油断しないようにする!」
「ああ。次に出来るようになればいい」
「うん。あ、でもまだわたし、続けていい? わたしの魔法で上まで上がりたい」
「ああ」
パパが頷いてくれたので、もう一回魔法をかけてわたしは身体を上昇させた。
そしてようやく、崖の上へとついた。
「ふぅ、疲れたー!」
「ベルレナ、お疲れ様」
わたしは崖の上で、はしたないけれど座り込んでしまう。それにしてもたったこれだけなのに疲れた。
パパみたいにこういう魔法を使って疲れなくなる日はいつ来るんだろうか?
そんなことを思った。
そしてその日はコワダ島でのんびり過ごして、帰宅した。
次はもっと人がいる海に行くんだよね。凄く楽しみ!




