パパとロナさんとお買い物 ③
「……」
「……」
なんというか、パパとロナさんも凄く喋るタイプとかではなくて、わたしが話しかけないと結構無言である。
二人とも凄くお喋りって感じじゃないもんね!
でもわたしが沢山話しかけると答えてくれるから、二人とも凄く優しいんだ。
「ねぇねぇ、パパ、ロナさんにこれ、似合うと思わない?」
「どれでもいいだろう」
「パパ! どれでもいいなんて駄目だよ。あのね、こうやってきくっていうのはパパの好みとか、パパがどれを似合っているって思っているか聞きたくて聞いてるんだよ? 確かにロナさんは美人だから、どんな服だって似合うだろうけれど」
「まぁ、そうだな」
パパも客観的に見て、ロナさんが美人だとは思っているようだ。
なんか特に気にもせずに告げられたパパの言葉に、ロナさんが固まっている。
そんなロナさんの様子を見て、わたしは嬉しくなって笑ってしまう。だってロナさん可愛いんだもん。こうやって間近で恋愛事見るの初めてだし、とても楽しい。にこにこしちゃうよね。
パパとロナさんと手を繋いだまま、またぶらぶらする。でもロナさんって結構自分からパパに話しかけたりしないんだよね。もっと話しかけたらいいのに。でもパパはあんまりしゃべる方じゃないから、どうなんだろう? 迷惑って思うかな? パパがロナさんを好きになってくれたら楽しいだろうなと思うけれど、本当にそういうことが起こるかっていうのは本人の気持ち次第だよね。
わたしはパパとロナさんと一緒にご飯を食べたり、買い物をしたり楽しく過ごして、一つ思いついた。
「ねぇねぇ、パパ、ロナさん。わたし、ちょっと一人でぶらぶらしてきていい?」
折角だからパパとロナさんを二人っきりにしてみようかとそんな遊び心が働いた。
パパはわたしの言葉に眉を顰める。
「パパ、駄目?」
「駄目ではないが、此処は初めての街だろう。一人で大丈夫か?」
「もう、パパ! わたしはね、もう十歳なんだよ? なにかあったらパパのことを呼ぶし、ユキアだってここにいるもん」
首からかけている使い魔のネックレスを指さす。
パパとロナさんを二人っきりにしてみようかなって思ったのもそうだけど、わたしももう十歳だもの。知らない街だろうとも、一人で少しぐらい探索も出来るよ! ってパパに示したいっていうのもある。
わたし、考えてみたら初めての街で一人でぶらぶらするの初めてかもしれない。そう考えると楽しみだよね。わたしはパパのことが大好きだから、パパの傍にいるつもりだけど、それでも大人になったら一人で行動することも多くなるものだよね。
ベルラ・クイシュインだった頃のわたしは公爵令嬢で、常識も何も知らなかった。でも今のわたしはパパの娘として色々経験しているんだもん。まぁ、まだまだ常識知らずかもしれないけれど、街の中を一人で歩くぐらいは大丈夫なはず。
思い付きで言った言葉だけど、一人でぶらぶらするのも楽しそうとわたしは期待したようにパパを見る。パパはわたしが言葉を覆さないことをわかっているようで、何だかんだ心配そうにしながら頷いた。
「……ベルレナ、知らない人にはついていくなよ」
「もちろんだよ。わたし、可愛いもんね」
「ああ。あとは道に迷った時は迷わず周りを頼れ」
「うん!! 分かってるよ。わたし、ちゃんと地図持っているもん」
「あとは――」
「パパ!! わたしはもう十歳なんだよ! 心配性なんだから。嬉しいけれど、もっとわたしを信頼してね。わたしはパパの娘だよ。本当に危険だったらすぐにパパを呼ぶからね? だからわたしが困ったなーってなったらすぐ来てね?」
「ああ」
パパは本当にわたしのことを可愛がってくれていて、心配だからこそそうやって小言のようなことを言っているんだなとわたしはちょっと笑ってしまう。だってね、パパって普段はというか、わたしが関わらないと凄く冷静な感じなんだよ?
わたしはわたしと出会う前のパパのことは、最初にパパと会った時の様子から想像したり、ニコラドさんたちから聞いた話しか知らないけれど、それでも想像出来るもんね。
ロナさんも屋敷に来るようになってパパのこういう様子見たことあるはずなのにちょっとぽかんとしているもの。
「じゃあ、ロナさん。パパのこと、よろしくね。パパが折角街にきているのにぼーっとしていたりするのもったいないから、連れまわしてね!」
「え、ちょ」
「ロナさん、パパと近づくチャンスだよ!!」
ぼそっとわたしはロナさんの耳元でそう告げる。それにしてもパパと二人っきりと混乱した様子のロナさん可愛いなぁ。
わたしは一人で街を探索して、一人でもぶらぶらできるんだよって見せないと。あと、パパとロナさんに似合うものも自分で選びたいし。ちゃんとね、お金も持ってるの。ふふ、パパとロナさんにプレゼントするんだ。
どんなもの買おうかなーって楽しい気持ちでいっぱいになる。
思わず周りに人が沢山いるのに一人で歩きながら鼻歌を歌ってしまって、はっとした。周りから微笑ましい目で見られて、凄い恥ずかしかった!




