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パパとロナさんと、ニコラドさん ④


 ニコラドさんは、ロナさんがパパのことを好きだと言うのに複雑そうな表情はしていたけれどもそれでもあまりこちらに無理してこなくなった。

 やっぱりニコラドさんって、人と関わりながら生きている魔導師だからというのもあって、結構忙しいみたい。ニコラドさんって、口にはそこまで出さないけれどやっぱりパパのことを大切に思っているんだなって思った。



「今日はあいつはいないのね」

「んー、ロナさん。ニコラドさんね、ロナさんの気持ちを知ったんだよ」

「え」

「それでね、まぁ、邪魔はしないっては言ってもらえたから」



 安心させるようにそう言って笑ったのだけど……、ロナさんはニコラドさんに自分の気持ちを知られたことがショックみたい。ロナさんもニコラドさんのことは嫌いなわけじゃないみたいだけど、なんか複雑な感情があるのかな。



「ロナさんって、ニコラドさんのこと、嫌なの?」

「嫌というか……ディオノレとずっと仲良くしているからうらやましいもの」

「そっかー。じゃあ、うらやましくなくなるぐらい、パパと仲良くなろうね!」



 ロナさんは屋敷に遊びに来るようにはなっているけれど、まだまだパパと話せていないもの。もっと世間話が出来るぐらい仲良くなれたらいいのだけど。



 でも仲良くなるって、ただお喋りが出来る関係とは違うかもしれない。

 そこに会話がなくても仲良くはなれるのかもしれないし、結局本人たちがどう思っているか次第なんだよね。



 ロナさんはパパのことが好きで、パパと関わりたいって思っているから問題はないと思うのだけど……。でもパパがロナさんのことをそういう目で見ているかといえば違うし、仲良しだと思っているかと思うと違うと思う。



 ――娘であるわたしが望んだからパパはロナさんが屋敷に来るのを許可しただけだ。その距離が縮まるのは、きっともっと時間がかかるだろう。



 少しずつでもパパとロナさんの関係が近づくようになればいいなぁ。もし恋愛関係にならなかったとしても、友人関係にでもなれたらきっと楽しいと思うもの。

 そういうわけで近づけたいなーっと思っているけれどやっぱりすぐには無理だなぁと思った。



「……男女関係は下手に関わると拗れるぞ」



 たまたまその日やってきていたニコラドさんにそんなことを言われる。


「ニコラドさんに言われなくても分かってるよー」

「ディオノレも『黒闇の魔女』も魔導師だしな、そんなに急いでくっつけなくてもいいだろう」

「そうだけど……、でもそうなるとわたし、その幸せな光景見れないかもしれない」

「ベルレナも魔導師になればいいだろ」

「ニコラドさん、簡単に言い過ぎじゃない? わたしはまだ先のことが分からないよ! それになろうとしても、なれるのかって分からないし……」



 ニコラドさんは簡単に言い過ぎな気がする。魔導師になるにしてもパパはよく考えた方がいいって言っていたし、わたしが目指したところで、パパたちのように魔導師になれるのかって難しいと思う。



「先のことが分からないからこそ、可能性があるってことだ。特にベルレナはディオノレの娘として生きているんだ。他の子供よりもずっと、成長の可能性が大きいと思う。それだけ他にない経験が出来るんだから。それに俺はベルレナなら、目指せば魔導師にだってなれると思うぞ」

「……なんか、ニコラドさん、先生みたい?」

「あのなぁ、前も学園長が弟子だとか、俺が学園関係でいろいろやっているっていったろう? 俺は一応教育者だからな」

「教育者……。あんまりぴんとこないなぁ。ニコラドさんは何を教えているの?」




 学園長が弟子だとか、学園関係で人と関わっているとかは聞いていたけれど教育者というのはぴんとこない。



「直接は今は教えてないけどな。俺が魔導師だって知っている奴に教えると少し面倒だからなぁ」

「面倒なの?」

「そうだぞ。魔導師とかかわりがあるということは、それだけこちらを利用して来ようとする連中が山ほどいるんだ。ディオノレやあの女が人と関わらないのも、そういうのを煩わしいと思っているからだからな」



 ニコラドさんはそんなことを言う。

 それにしてもニコラドさんがこういう風に真面目に語るのって初めてかもしれない。こういう新しいニコラドさんの一面って何だか面白い。




「ニコラドさんは、面倒だって分かっているけれど……、人と関わるの?」

「そうだな。俺が人と関わりながら生きていくことを望んだから。嫌なことだってあるけれども、それでも俺が選んだことだから」

「そっかぁ。ふふ、ニコラドさん、こうやって真面目に話すとかっこいいね!」

「いや、普段からかっこいいって言ってくれよ」



 わたしの言葉にニコラドさんは、不満そうにそう言った。



「嘘だよ。いつもかっこいいとは思っているよ! でも、パパが世界で一番かっこいいけれど!」

「嬉しいけれど、ディオノレにはやっぱり負けるかぁ」




 そんな会話を交わして、わたしとニコラドさんは笑いあうのだった。



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