騒動の予感? ②
「あの女は、俺やディオノレよりもずっと前から魔導師で、この世界に存在している。正直言って俺では勝てない」
「そうなの? パパは?」
「ディオノレはどうだろうか……悪くて相打ちぐらいか? 負けはしないだろうけれど」
「え、駄目だよ、相打ちは! パパ、その人が来ても危険なことはしちゃだめだからね」
ニコラドさんの言葉に私は不安になって、パパのことを見る。ニコラドさんやパパよりもずっと昔から魔導師という立場にいるだなんて凄い人だとは思うけれど、パパと仲が悪いのならばちょっと怖いなと思う。
だけどパパはニコラドさんの態度とは違って、いつも通りである。
「ベルレナ、ニコラドが言っていることは気にするな。あの魔女も別に俺たちの事をどうにかしようと思っているわけではないだろう。何故だか、ちょっかいはかけては来るが……それも命を失うほど危険なものではない」
わたしはパパの言葉にほっとする。
でもそれを聞いて不思議な気持ちになった。その魔女さんは、何を考えてパパに関わろうとしてくるのだろう?
パパのことだから相手が魔導師だとか、自分より昔から生きている魔導師だろうが、全く態度が変わらないと思う。寧ろわたしと出会う前だともっとパパは周りに対して冷たかったはずである。
多分、とても冷たい態度をしていたと思う。
そんな冷たい態度のパパに、何らかのかかわりを自分から持とうとしているのならばその人はパパに何か感じているのだろうか?
それにしてもパパとニコラドさんの態度の差が結構激しいなと思った。そのあたりはパパとニコラドさんの性格の差が出ているのかもしれない。パパとニコラドさんは性格が違っても仲良しだなと思って嬉しくなって笑ってしまう。
「ディオノレは本当にちょっかいを出してくる相手にも無関心だよな。俺だったらああいうのにかかわって来られたらちょっと鬱陶しいって思ってしまうからな」
「敵対するのならばどうにかするだけだ」
「その辺、はっきりしているよな。でも今のディオノレなら、ベルレナに何かあったらすぐに何かした奴に関しては容赦しなさそうだな」
「当たり前だろう」
パパとニコラドさんの会話を聞いて、何だかわたしは嬉しくなった。
パパは基本的に周りに対して無関心な人だ。人とあまり関わりたくないと思っていて、自分の興味があること以外には自分から関わろうとしない。……うん、というかそういうパパだから友人もあんまりいないし、恋人なんて出来ないのかもしれない。そういうパパがわたしのためなら面倒なことでも関わろうとするんだなと思うとパパが大好きだなと思った。
嬉しくなって、椅子に座っているパパの傍に近寄ってひっつく。パパが「どうした?」って言いながら頭を撫でてくれる。
その様子を見ながら、ニコラドさんが楽しそうに笑っている。
「本当にそうしているとただの親子にしか見えないな。何度見てもパパしているディオノレには爆笑しそうになるけど」
からかうようにニコラドさんが笑えば、パパが一つ魔法を使ったのか、ニコラドさんが「いきなり何すんだよ」と言いながら避けていた。
やっぱりパパとニコラドさんは仲良しだなと思った。
『黒闇の魔女』さんが、どういう人なのかはあってみないと分からない。
どういう意図があって、パパに関わってきているのかもわからない。それでもわたしはパパが一緒に居てくれて、パパがわたしのことを守ってくれるって知っているから。
それにパパとニコラドさんの評価だけを聞いて、その人のことをどうこう言うことは出来ないもんね。
仲よくなれなかったら仕方がないけれども、仲良くなれたら嬉しいなとそんな風に思う。
「ねぇ、パパ、『黒闇の魔女』さんとも仲良くなれるかな」
「ベルレナなら誰とでも仲良くなれるだろう」
「ふふ、パパ、簡単にそんなことを言うよね」
「ベルレナは良い子だからな。そういうベルレナが仲よくしたいと望むのならば、仲良くできないことなんてきっとないはずだ」
パパがそんな嬉しいことをわたしに言ってくれて、パパはわたしのことが大好きだなと嬉しい気持ちになった。
パパがそんな風に言ってくれるだけでわたしは沢山の勇気をもらって、わたしは誰とでも仲良くできるように沢山話しかけようと思った。あ、でももちろん、わたしが仲よくしたいって思ってもわたしと仲よくしたくないって人もいるかもしれないからそのあたりはちゃんと考えないとね。嫌がる人に話しかけ続けても迷惑だもんね。
「まぁ、ベルレナは人当たりが良いからな。こういう可愛い女の子に仲良くしたいって言われて嫌がる奴はそうはいないだろう」
「ふふ、ニコラドさん、ありがとう!」
可愛いっていわれるととっても嬉しい。パパが与えてくれたパパそっくりのこの身体をわたしはとても気に入っているから褒められるととっても嬉しいの!
色んな人と仲良くなれるように頑張るぞー!




