春の訪れと、二度目の誕生日 ②
「俺が知っている限り、あいつは恋愛はしていない」
「えー? パパ、長生きだよね?」
ニコラドさんに言われた言葉にわたしは不思議に思いながらそんな言葉をかける。
だってパパが恋愛をしてきたことがないなんて……パパって、長生きしているのに。200歳とかだって前に言ってたよ?
それにパパってモテモテのはず。わたしがパパと同年代だったらパパのことかっこいいなって思うもん。
「一夜限りとかはあるかもしれないが……恋愛というのは俺は知らん」
「パパもてるよね?」
「あの見た目だし、当然もてるぞ。でもあいつ、そういうの特に興味ないだろ。魔法馬鹿というか……魔法を極めることしか考えていないし」
ニコラドさんの言葉に、あぁ、確かにと思った。
パパは魔法の研究が好きだ。何だろう研究体質というか、知らないことを追求したがっているというか……そもそもわたしを娘として受け入れたのだってホムンクルスのことを知りたいっていう野望からだろうし。
パパって、そういうことにばかり関心を持っていて、他のことに関心は特にないもんね。
「あー……確かに。ねぇ、わたし、パパが誤解されているの嫌だって思うの。パパってとても素敵な人でしょ。わたしの大事なパパで、優しい人で、かっこよくて……。でもパパって結構自分勝手だし、誤解されていても気にしないし……。わたし、パパに恋人が出来ないかなって思ってるの!」
パパはとても素敵で、かっこよくて、わたしにとっての自慢の存在。
そのパパが恋をして、恋人が出来たら素敵だなってそんな風に思うから。
「いいのか? 俺もそれは楽しそうだと思うが、それでディオノレがベルレナを放っておくようにかならないか?」
「わたしのパパはそんな人じゃないよ。パパは恋人が出来てもわたしのことを大切にしてくれる。わたし、パパに大切にされているもん!」
「ははっ、そうだな。言ってみただけだ。ディオノレはベルレナを大切にしているからそういうこともないだろう」
どうやらわたしはニコラドさんにからかわれたらしい。本当に調子がいいなぁ…って思った。
わたし、パパに自分が愛されているって知っている。パパはわたしを大切にしてくれていてパパはわたしを愛してくれている。だからこそ、わたしはパパに恋人が出来ても問題がないって思っている。
ニコラドさんはわたしの頭を軽く撫でて、笑っている。
「しかし、ディオノレに恋人か……。今はベルレナもいるし、そういうのにあいつ関心ないし、恋人作らないと思うけどな……」
「んー、でもパパに恋人出来たら楽しいと思うの」
「まぁ、確かに楽しそうだが」
ニコラドさんは面白そうな顔をして笑っている。
しばらくニコラドさんとパパの恋愛話をする。ニコラドさんとパパに恋人を作ろうという同盟を結んだ。
パパのことを好きな人は沢山いるけれど、パパが好きになれるような素敵な人がいればと思う。
ニコラドさんから良い人がいたら教えてもらうことにした。
ニコラドさんと会話を終えた後、パパの元に戻ると「何を話していたんだ?」と聞かれる。
「秘密だよ。ねー。ニコラドさん」
「ああ。秘密だ」
ニコラドさんとそう言って笑いあっていたら、パパはちょっと面白くなさそうな顔をしていた。
だってパパは恋愛なんてしたくないって思っているだろうし。わたしたちがこういう話しているのもちょっと何とも言えない気持ちになるのじゃないかなって思うから。
でもわたし、パパが本当に嫌がるのならばやらないよ。でもパパが少しぐらい、この人と恋人になってもいいかなって思える人に出会えたら――背中を押したいなと思う。
わたしはパパの娘として、パパが楽しく過ごせていると嬉しいから。
それにしてもパパに似あう人ってどんな人なんだろう。パパが幸せになってくれればうれしいなって思う。
わたしはパパから今の幸せな日々を与えられている。パパがいてくれたから今がいる。っだからこそ、パパがもっと幸せになってくれたらなと思っているのだ。
そういえばパパは誕生日を気にしていないみたいだけど、ニコラドさんに確認したらどうやら春らしいので、わたしと同じ日にお祝いをすることにした。
それにしてもパパって大雑把すぎない? 長い間生きているからって自分の誕生日のことを気にしていないだなんてっ! ってびっくりしたけれども。
パパはわたしの誕生日のためにケーキの用意をしてくれるらしいけれど、わたしもニコラドさん経由でパパへのプレゼントも用意しているの。
パパが喜んでくれると嬉しいなぁ。
パパにプレゼントあげたらどんな反応をするかなってそういうのもワクワクする。




