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36 援軍

 私はレオナールと共にライトエルフの国とダークエルフの国の境界にある広場へとやってきた。


 すべてはこの広場から始まったのだ。


「どうされます? このままダークエルフの国に乗り込みますか?」


 レオナールに問われ、私はゆるりと首を振った。


「いや。こちらから出向かずとも、向こうからやってきてくれる」


 私の言葉が終わると同時に、ダークエルフ側の方から一筋の光がこちらをめがけて飛んできた。


 その光が着地した地点にダークエルフの女王が姿を現す。


 後ろに従者が控えているのはあの時と同じだ。


「フフッ。ようやく姿を現したわね。私にライトエルフの王の証を渡す気になったのかしら?」


 相変わらず豊満な胸を強調するドレスを身に着けているダークエルフの女王は、艶めかしい笑みを私に向けてくる。


「生憎だが、お前にライトエルフの王の証を渡すわけにはいかない。今日こそ決着をつけよう」


「何を言ってるのかしら? あの時、あっさり私にやられたくせに。こんな男、私の手を煩わせるまでもないわ。さあ! やっておしまい!」


 ダークエルフの女王が命令すると、後ろに控えていた従者が、ズイと前に出てきた。


 その姿が人型から大きなトカゲへと変化する。


「サラマンダー!?」


 その口から火が吐き出されたのを見て、私は思わず呟いた。


 火の精霊であるサラマンダーがダークエルフの女王の従者になっているとは…。


 サラマンダーの炎は私とレオナールをダークエルフの女王から遠ざけるように燃え盛る。


 そこへ後方から蹄の音が近付いて来るのが聞こえた。


「陛下! レオナール!」


 するとサラマンダーの炎を消すように大量の水が降りかかる。


「ケルピー!」


 水霊であるケルピーが、私達の窮地を救いに駆けつけてくれたようだ。


「サラマンダーは私にお任せください。陛下とレオナールはダークエルフの女王を!」


 私とレオナールはサラマンダーをケルピーに任せて、ダークエルフの女王の方へ向かった。


 ダークエルフの女王は静かな笑みを浮かべて、私とレオナールを迎える。


「フィルバート様。どうしても私と、戦うとおっしゃるのですか?」


 哀しげな表情を浮かべるダークエルフの女王に、ほんの少しばかり心が痛む。


 だが、女一人に対して男が二人がかりで戦わなければならない事に、力の差を見せつけられているようで腹立たしい。


「あなたがこの『王の証』を手にしたい以上、戦わないわけにはいきません!」


 きっぱりと宣言すると、ダークエルフの女王は憂いた表情を一変させた。


「ならばこの場で死ね!」


 そうしてダークエルフの女王は大きなヒュドラへと変化した。



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