28 野宿
ふよふよとレオの隣を飛んでいると、何だか急に疲れが出てきた。
少しスピードが落ちてきた僕に気付いたレオが落ちてきた僕を振り返る。
「フィル、どうした。疲れたのか?」
レオの手が僕の足の下に伸ばされ、僕は尻餅をつく形でレオの手のひらの上に着地した。
「うん。何だか急に疲れちゃったんだ…」
気が付けば、太陽はいつの間にか西に傾き、空が赤く染まりつつあった。
「そろそろ夜になるな。何処か野宿が出来る所を探そう」
レオは僕を手のひらに乗せたまま、先を急いだ。
しばらく進んだ所で少し開けた場所に出た。
「この辺りでいいかな」
レオは僕を地面に下ろすと、マジックバッグをゴソゴソと漁りだした。
簡易テントを出すと、その場で組み立て始めた。
テントが出来上がると、レオはその中に入って寝袋を広げた。
そして、その隣に畳んだタオルを敷く。
「フィルはこのタオルを布団代わりにしてくれる? 掛け布団もタオルになっちゃうけど、いいかな?」
テントの入り口に立っている僕を振り返ってレオが聞いてくる。
よく見るとタオルは少しずらして畳んであって、そこに僕が寝られるようにしてあった。
「いいよ。ありがとう」
「それじゃ、晩御飯にしようか」
レオはテントから外に出ると、夕食の支度を始めた。
何の手伝いも出来ない自分が恨めしいけれど、こんな小さな身体じゃどうしようもない。
いつの間にか空は真っ暗になり、レオが灯したランプと焚き火の炎だけが辺りを明るく照らしている。
「今日一日歩き回って疲れてない? こんな大変な旅に誘っちゃって申し訳ない」
頭を下げる僕にレオは口を尖らせる。
「また、そうやって謝る。僕が自分で付いて行くって決めたんだから気にする事はないよ」
レオは食べ終えた食器をクリーン魔法で綺麗にすると、またマジックバッグへと片付ける。
そして魔法陣が書かれた紙を焚き火の中に放り込んだ。
紙は青白い光を放って燃え尽きたが、光はそのまま焚き火とテントを囲うように広がった。
「今の魔法陣は何?」
初めて見る光景に目をパチクリさせていると、レオは可笑しそうに笑った。
「隠匿の魔法陣だよ。これで明日の朝までは魔法陣で囲まれた場所は誰にも認識されなくなるんだ。もちろん魔獣なんかも襲ってきたりはしないよ」
交代で焚き火の番をするのかと思っていた僕はちょっと安心した。
「そうなんだ。便利な物があるんだね」
そう言った所で僕は大きなあくびをする。
お腹がくちくなった僕を、今度は眠気が襲ってくる。
「今日はもう寝ようか。焚き火はこのままにしていても大丈夫だからね」
レオはランプを持つとテントの中へと入って行く。
僕もその後を追ってテントの中に入る。
レオが用意してくれたタオルの布団に潜り込んだ。
レオも寝袋の中に入って横になる。
僕が布団に横になっているのを確認すると、レオはランプの灯りを消した。
辺りを暗闇が包むが、テントの入り口の隙間から焚き火の灯りが見える。
「おやすみ、フィル」
「おやすみ、レオ」
僕はこうして怒涛の一日を終えた。




