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28.四天王!?

賢者のアンミの幻覚と、弓使いのシアニの連続攻撃。これのお陰でどうにか時間を稼いだ結果、


「新しい盾をお持ちしました!」


「よし!それじゃあクーロリード、きつくなったタイミングでそれを捨ててこっちを取りに来てくれ!声をかけてくれれば俺たちはそれに合わせる!」


「了解した!!」


どうにか新しい盾という名の大きな金属板を持ってこさせることに成功した。これにより今重戦士のクーロリードが持っている物が破壊されたとしてもまだ持ちこたえることができる。

ただ、まだ安心はできない。この新しい物すら破壊して敵が進んでくる可能性すら考えられるため、


「まだ残っているようなら追加も今のうちに持ってきておいてくれ!まだ同じような敵が残っていないとは限らないからな!!」


「わ、分かりました!すぐにお持ちします!!」


ここまで頑張ってくれた衛兵たちには悪いんだが、まだまだ働いてもらうことにする。金属板はいくつあってもいいからな。

ついでとばかりに斥候のチオシアに罠を仕掛けてもらっているとアンミの幻覚に慣れてきたのか、また寄生された衛兵が先ほどまでと同じようにこちらへと突撃してくる。ゴンゴンと鈍い音と共に金属板との衝突が繰り返され、そのたびに寄生された衛兵の体は一部がつぶれて金属板がひん曲がる。


寄生虫もこれの影響でかなりつぶれてはいるのだが、それでもまだまだ体内には残っているらしく突撃と再生は繰り返されて、


「次の突撃が終わった後に後退する!」


「分かった!皆、それに合わせて俺たちも後退するぞ!!」


ついにクーロリードがその現在持っている金属板を捨てることを決めた。ここまでやって一向に倒れる気配がない寄生された衛兵には頭が痛いな。本当に倒せるのか、ほんの少しだが不安になってくる。

ただそんな俺の不安と向き合っている暇はなく、宣言通りクーロリードは敵の突撃が来た直後にその金属板を投げ捨てて、後方へと飛び退きまた新しい金属板を構える。


まだその次の金属板は届いていないため、しばらくはこの状態で粘らないといけないんだよな。

頑張ってシアニが敵の体を射抜き燃やして行動と回復を阻害しているが、それでもまだ完全に動きをを止めるには至らない。多少傷ついているところは気にしないとばかりにこちらへと突っ込んできて、クーロリードの持つ金属板と激突した。

そしてそのまま跳ね返っていった直後、ガシンッ!と音がして、寄生された衛兵の体が巨大な虎ばさみに挟まれる。


「おっ、やっと罠が作動したな」


「キヒッ!クーロリードの退却路を考えて少しかかりづらい場所に設置したからなぁ。思った以上に作動まで時間がかかっちまった」


この虎ばさみはチオシアが設置したもの。時間稼ぎを重点的に考えた罠を設置してくれたため、こういう形になったわけだ。

虎ばさみはガッチリと衛兵の体をはさんでいて、離そうと思っても離せる物ではない。隙間に手を入れて無理矢理こじ開けようとしてもその手を念入りに弓使いのシアニがい抜いて使えなくするため、これだけでかなり時間が稼げそうな気がしてくる。


ただ、


「…………さすがに撃ちすぎ」


「矢が足りなくなってきたか?」


「矢は問題ないけど、油が」


「なるほど。頭の痛い問題だな」


それを永遠に続けることは残念ながら敵わない。シアニの持つ矢に付けるための油が切れかけてきてしまったとのことだ。途中からは斥候のチオシアが持っていた分もわけてもらっていたようだが、もういい加減限界が近いとのこと。

今の妨害はこれから難しくなってきてしまうということだ。


一緒に戦っている衛兵に頼めばここの油なんかも持ってきてくれるだろうが、実をいうと事前にそれなりの量わけてもらっているため蓄えも少なくなってきてしまうはず。もらえる量もそこまで多くはできないだろう。


「困ったな。このままだとじり貧になる」


俺たちにとってかなり不利な状況になってしまった。どうにかしたいところではあるんだが、物資の不足はさすがに簡単に解消できる問題ではないんだよな。

せいぜいできることがあるとするのであれば、この後の時間稼ぎを完全にチオシアの罠に頼るように切り替えることくらい。とはいっても罠だけでどうにかなるような相手でもないし、かなり厳しいだろうというのが本音だ。

場合によっては、敵に押し切られかねない。このまま続けたとしても倒せないままに俺たちは完全に外に押し出されてしまうだろう。それだけならばまだいいが、最悪の場合寄生虫がいろいろなところに散ってしまって一般人にまで寄生していってしまう可能性も考えられるんだよな。そうなると、今目の前にいる相手と同じとまではいかないかもしれないがそれより多少弱いくらいの敵が大量に発生することになる。もうここの人間は全滅すると言ってもいい状況になってしまうだろう。


「何か手はないか」


俺は焦りを感じる。このままでは確実に悲惨なことになってしまうから。俺たちもかなり危険じゃ状態になってしまうのだから。


だが、そんな俺の不安は吹き飛ばされた。

突然寄生された衛兵は完全に処理されてしまったのだ。ただそれが良い事なのかと問われると微妙なところで、


「ん~。面白くないね。ボク、結構これは強いと思ってたんだけどなぁ~」


「っ!?」


この場所にはふさわしくない、どこか幼さすら感じるような声。その声の直後、俺たちが魔物のまだ残っていると考え攻め込むつもりだった建物が爆破され、それと共に寄生された衛兵も消滅。

もちろんその爆発は余波もものすごい物で、爆風によりクーロリードも持っていた金属板を吹き飛ばされてしまうし、俺たちは全員地面に転ぶこととなった。


それでもすぐに立ち上がって先ほどの声のした方向を見てみれば、


「お、お前は、魔族!?」


「おっ!お兄さん正解~。ご褒美に、その命をボクがもらってあげるね」


魔族。その見た目は少年のようであるものの、実態は兵士。それも、1人いるだけで人間百人以上の力を持つほどの兵士だ。

しかも、近亜紀目の前にいる魔族は視た限り単独。つまり、単独で行動しても問題がないと評価されるだけの実力を持っているということであり、通常の魔族よりも強い。百人どころか千人近くと同等の実力すら持っている可能性がある。


全く気付かなかったが、ここで現れたってことは確実にこの魔族が今回の件の裏で手を引いているな。どこまで関わっているのかは分からないが、放置しておくとこの寄生虫やらの情報が魔族側に渡りかねない。国の首都なんかにこれがばら撒かれたら大変なことになるから、絶対にそれだけは避けなければ!!


「俺の命を奪う、か。それができるのはきっと、魔王が倒れてからだろうな。それまで勇者が、俺が倒れることはない!!」


「ふぅん?ずいぶんと自信があるみたいだねぇ。でもその自信、いつまで続くかな?このボク、四天王として魔王様に認められたボクが直々に思い知らせてあげるよ!いや、思い知らす前にその命を知らしちゃうだろうけどねぇ!」


「っ!来るぞ!お前たち、気をつけろ!!」


好戦的な笑みを浮かべる魔族。本人申告だが、どうやら魔王の配下にしてその次に強いとされている四天王の1人らしい。これは間違いなく強敵だな。

正直に言えば、今の段階で戦うような相手ではない。せめて、もう少し実力をつけて勇者としての装備なんかも手に入れてから戦いたかった相手だ。

だが、だからといって逃げるわけにはいかない。ここで俺が戦わなければ、誰がここにいる人間を救えるというんだ!!


そんな危険な魔族はまず小手調べとばかりに宙に浮かんだまま一方的に魔法を放ってくる。

それはまるで雨のように俺たちに降り注ぎ、


「ふん!この盾すら貫けんとは、四天王もたかが知れたものだな!!」

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