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24.やってるフリ

やることがなくなってしまった俺。とりあえず周囲にそれを悟らせないために声をかけたり動き回ってみたりとしているが、あまり意味はないな。無駄にもほどがある。

ただここで無駄をメリットに変えなければいけないことも確か。いくら何でも、今の状況はじり貧だからな。勝てないとは言わないが、正直時間がかかり過ぎる。ということで、せっかく時間があるんだから観察に力を入れさせてもらって、


「ああ。そうだ。ついでにここで資料を読んで魔物の対応の指示を出せばいいのか」


完璧な役割を発見してしまった。俺にできることがないなら、他が動きやすくなるようにすればいい。

丁度もらった研究資料の写しを持ってきているし、それを読んで目の前の魔物の種類を特定し、弱点を見つけ出すことこそが今俺にできるベストな動きだ!


書類の束から特定の種類の魔物を探し出すということは難しいんだが、逆に書類で見た魔物の特徴に当てはまるものを発見してその内容を伝えるという風に考え方を変えるとそこまで難しくはない。

例えば少し凶悪そうな特徴を持っている魔物がいればそれに当てはまる魔物がいないかを確認してみて、


「シアニ!あの青色のデカブツの顎を狙ってみてくれ!口の下に弱点上がるらしい!」

「……了解しました」


「アクア!あの小さくて数の多い赤い奴を回復させてくれ。一定以上まで生命力を高めると爆発するらしい!」

「やってみます」


「クーロリード!たまに床を蹴って地面を揺らしてみてくれ!突進型の何体かは足場が不安定だと著しく能力が低下するらしい!」

「分かった。すぐに対応する」


こうやって指示を出していけば、ものすごく役に立っている感が出ないか?もちろんこれ以外にも賢者のアンミに効果の出やすい幻覚の種類を教えたり斥候のチオシアに一部の突破しやすい魔物へ効果的なタイプの攻撃を教えたり。

こうしているとだんだん結果も現れ始めて、俺のこの行動が雰囲気だけのものではなくなっていく。少しずつだが、意味のある物へと変わっていくんだ。


特に目に見えて変化を感じやすいのは、聖女のアクアと重戦士のクーロリードの行動。

アクアが特定の魔物に回復魔法をかけるとそれが爆発を引き起こして周囲にも大きな損害を与えてくれる。更にクーロリードが踏み込んで地面を揺らすと近くにいる魔物の速度が急激に低下するだけでなく、何血赤は転んでしまったりもするんだ。そして転べば、ただその個体が床に倒れるだけではなく周囲の魔物も巻き込むようにして倒れてしまう。これがかなりの数の魔物の行動を邪魔して、より前線に近づく魔物の数を減らしてくれる。余計に距離を取って処理することが簡単になるわけだ。


このまま寄生虫のデータから弱点を見つけ出して簡単に対処できるようになればいいんだが…………目に見えた弱点はなさそうなんだよな。体が外に出ていてそのままの状態の場合ならまだしも寄生した状態では宿主の魔物の能力次第でほとんど弱点なんてなくなってしまう。強い魔物のもあまり寄生虫を拒むとも思えないし、非常に面倒くさい相手と言うわけだな。


なんて考えていたところ、


「少しやりたいことがあるから、今対処している連中がある程度かたづいたら少し好きにさせてもらっても構わなんかのぅ?」


「ん?もちろん構わないぞ」


賢者のアンミに何か考えがある様子。

とは言っても何に対する考えなのかは分かんらいためどこまで任せればいいのかは分からないが、とりあえずしばらくは魔法で倒せない敵でも出てこない限り放っておくことにしようと思う。あんまりしじとかださないようにきをつけないとな。


幸いなことにアンミが主に担当していた魔物はそこまで追加もなく、数が減るペースの方が圧倒的に早い。おかげでアンミがやりたいことに集中できる時間が増えた。

結果として、


「ん?何か動きが変わったな」


「うむ。どうやら成功したようじゃの。寄生虫に幻覚が効果を出せるようじゃ」


「寄生虫に?…………確かに考えたことがなかったが、直接そこに幻覚を見せられるなら悪くないか」


寄生虫の宿主に今までは幻覚を見せるようにしていたが、必ずしもそうする必要はない。寄生虫自身に幻覚を見せることができるようになればもっと楽になるのではないかと関あげたわけだ。正確に言うと、見せるではなく感じさせるという方が近いのかもしれないが。


とにかく、寄生虫の方にいろいろと誤認させることができたのなら魔物に手を出さずとも寄生虫を処理できる可能性がある。それこそ、宿主の体に深刻な損傷ができてしまいもう命が持たないという風に誤認させれば、


「成功じゃな。無理矢理体外へと出ようとするが失敗してしまったようじゃ」


「おぉ!これはかなり楽になるな!」


外に出ようとする寄生虫。そうするとまず、これまで見てきたものと同じように爆発を引き起こしてその勢いに乗って体外へと飛び出し他の個体へと寄生しようとする。

しかし、それが上手くいっていたのは宿主が息絶えていたり弱っていたりしたから。ある程度万全な状態であれば無理に体を爆発なんかさせれそうになっても無理矢理抑え込むこともできたりするわけで、完全な爆発は成功せず中途半端に宿主の体から出てしまい、逆に爆発を抑え込んだ宿主の筋肉によって寄生虫が潰されてしまうという事態が起きた。


さすがにこれは運のいいケースだったが、他にも同じようにアンミが魔法を使えば寄生虫は宿主の状態を誤認して外へと出ようと暴れ出す。数体は宿主の筋肉に潰され、数体は中途半端にしか飛べず地面に落ち、それをアンミに焼き尽くされた。他にも様々な反応を見せるが、そのどれもが今まで通りの動きではない不完全な物ばかり。

そしてそれは当然、俺たちにとってみれば格好の隙となるわけだ。

主に狙うのは賢者のアンミだが、たまに弓使いのシアニも矢で寄生虫を貫いたりしている。


「この様子だと、寄生虫の殲滅も意外と早く終わりそうだな」


「さすがにすべてを処理しきれるとは思えんが、確かに数は減るし幾分か楽になるかのぅ」


間違いなくこちらへ勢いが一気に傾いた。このチャンスを逃すわけにはいかない。

と言うことで、ここで俺は人を使うことにする。手が空いているのは俺だから1番は俺が指揮をするという選択を取ることなんだろうが、


「衛兵の皆。シアニの指示に従って物を投げるようにしてくれ!シアニ、悪いが指示を頼む!」


「「「「かしこまりました!!!」」」」

「…………分かりました」


衛兵たちはやる気満々と言った様子だが、人嫌いなシアニは分かりやすく不満そう。ただ、必要なことだから許してほしいな。

俺よりもシアニの方が目は良いし、寄生虫も見逃さない。シアニが弓を使ったりしてある程度場所を教えればそこに衛兵たちが火のついたものを投げたりして寄生虫を確実につぶすことができるようになるわけだ。

これは確実に寄生虫の全滅までの時間をより早めてくれるだろう。


「…………ここ」


「了解しました!エルフ様の矢が言った方向を狙い、撃て!!」

「「「「ハッ!」」」」


ただ、いくら人嫌いでも人を顎で使える今の状況はそこまで嫌なものではないと思うんだけどな。人に従うのは嫌でも、人を自由にできるのは良いだろ?


だから、そんなに不満そうな表情しないでくれないだろうか。

シアニ、エルフも嫌いだからエルフという種族で呼ばれることが嫌だというのは分かるんだがなぁ。

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