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18.鍛錬?

起きるとパーティーメンバーの姿がなかった。正直びっくりだな。あいつら、基本的に人が嫌いだから自分でどこかに行こうとかいう発想にはまずならないし。

ちょっと泣けてくる。あいつらも成長したんだな。だって、あいつらだけでお出かけしようって考えたわけだろ?もう成長しすぎてて涙が止まらねぇよ。お母さんをそんなに喜ばせたってなにも出ないからな?(お母さん勇者)


「そういうことなら、俺もちょっと頑張るか。あいつらの成長を邪魔しちゃいけないし、俺のやれることは全部やろう」


当初予定していた仲間たちとの聞き込みや挨拶回りなども俺1人で行なうことにする。こんなものであいつらの時間を無駄にするわけにはいかないからな。今の時間は、仲間とのきずなを深め、今までしてこなかったような交流をするために使って欲しい。そしてできれば、他のパーティーメンバー以外との交流にも使ってもらえるとなおうれしいな。


しかし、そうなると俺も普段以上に警戒が必要か。

周囲に護衛のような役割もしてくれるパーティーメンバーがいるのといないのとでは、安心感がかなり変わってくる。この間のように魔族の内通者なんかから攻撃をされるとき、回復役のアクアがいないと傷なんかは治せないからな。

まず攻撃を食らわないように常に警戒しておく必要があるだろう。


「ただ、それもある意味悪くないか。ずっと守られてばかりでは、俺の能力も落ちてしまう。俺ももっと危機察知能力を高めたり、対応速度を上げたりしていく必要があるだろう」


仲間がいない状態で行動するのも、悪い事ばかりじゃない。仲間との連携なんかは育たないが、それでも俺個人の能力を向上させることには役立つはず。普段は周囲の仲間に任せてしまっているためやってない部分も多いが、今日は思い切り自分の把握能力を高めていくとしよう!

こうやって自分の能力を高めて、魔王やその配下たちに届くほど強くなるんだ!!


「…………あっ、勇者様ぁ!」

「キャァァ!!!握手してください!!」


「おお。握手か?いいぞ…ついでに、話しも聞かせてもらって良いか?この辺りでもし危険な魔物とかがいるなら俺たちで討伐しようと思っているだが」


「わぁ!良いんですか!?さすがは勇者様!ありがたいです!!」


外に出ると早速人が集まってくるから、その人たちの手に持っている物や身に着けている物に凶器などが紛れてないかを瞬時に判定していく。もちろん、あまりじろじろ見ると変に思われるから自然な動きの中でな。人が多く集まってくるし大変だが、鍛錬にはちょうどいい。

ついでとかばかりに情報収集もできるからうま味だな。


さらにそこからお偉いさんとも話をさせてもらって、ここの表向きの情報はすべて集め終わった。もちろん、裏側があるのかは知らないが。

ちなみに、集めた情報によると最近悩んでいることは少し強めの魔物がチラホラ確認されていることらしい。特にスライムやバジリスクほど強いわけではないみたいだから難しいことはないだろう。明日辺りに間引けばだいたいは解決しそうだな。


「……しかし、観察してみると意外と怪しい動きを売るやつも多いな。これは全員内通者と言うことなのかどうかは判断が難しい」


情報収集自体は上手くいったんだが、今日やっていた警戒の結果は思っていたよりも悪かった。警戒が上手くいかなかったというわけではなく、警戒した結果予想以上に良くないものが見つかってしまったんだ。

特に多かったのが、俺に群がる者達に紛れて接近してくる何がしたいのかよく分からない奴ら。

特に何をしてくるわけでもないんだが、明らかに他のやつらとは動きが違うんだ。顔も大して喜んでいたりもしないし、俺に何かを求めるわけでもない。だが、接近だけはしてくるんだ。一瞬スリかとも思ったんだが特になくなっている物もないし、何がしたいのかはサッパリだな。

後で仲間たちに相談してどういう可能性があるのか考えてみてもいいのかもしれない。


なんて思いながら宿へと戻ると、すでにみんな帰ってきているようだった。

さすがに仲良くお店などでおしゃべりと言うのも最初から長時間は難しいかなんて思いながらも部屋の扉を開けてよく見てみれば、


「…………お前ら、何やってたんだ?」


「少し鍛錬を」

「ああ。お互い確かめ合っただけだ」

「最近たるんでおったからのぅ」


「そ、そうなのか」


俺の目に映る仲間たちは、皆ボロボロ。それはもう本当にボロボロで、キズなども多かった。聖女のアクアだけは回復したのか肌などはきれいなんだが、服はかなりひどいことになっているな。その状態で外を歩いたのかと問い詰めたくなるくらいにはボロボロだ。

さすがにこの間の魔物を相手にしたときほどではないが、十分ひどいぞ。


どう考えても、鍛錬ではないと思うのは俺だけだろうか。

明らかに鍛錬してきた後の雰囲気じゃないんだよな。傷とかもアクアに治してもらえばいいというのにそのままだし。不自然な点が多すぎる。しかも、よく視るとシアニとか腕が折れてそうなんだよな。誤魔化しているようだが、明らかに左腕が折れている。その腕で空いたからどうするつもりなんだ?放っておいていい物じゃないよな?

…………もしかして、外に出て強敵と戦ったりしたのか?それでアクアも他人を回復させるような余裕がなくなってしまったとか?リソースをすべて使いきったなら骨折すら治さないことにも納得ではあるし。

ただ本当に、何と戦ったんだ?

あまりにも気になりすぎる。

ただ、気になるからってあまりずけずけ踏み込むのもこいつらの場合リスクがあるように思うし、必要なことだけするとしよう。


「アクア。リソースは残ってるか?ないなら外に狩りしに行くが」


「いえ。御心配には及びません。必要な分はしっかりと残しています」


「そうか。なら、そいつらの事を治しておいてやってくれ。さすがにその血が出た状態で宿のベッドを使うのは良くないだろう」


「…………かしこまりました」


宿の物を汚し過ぎるのも良くないし、アクアに一先ず全員のけがを治してもらう。特にシアニの骨折とか数人の大量の出血とかはキズをふさいで早くどうにかしてもらいたいところだ。


ただ、気になるのはシアニがリソースを残していたにも関わらず今までケガを治していなかったところ。わざわざこんな傷を直さないようにしておく理由なんてないからな。何かがあることは間違いない。

よく考えてみれば今の返事にもどこか間があったし、アクアもやりたいわけではないのかもしれない。治すとマズかったりするのか?

もしくは、他に治したくない理由があるのか。

何にしろ治すように言った俺の判断は早計だったかのようにも思えるんだが、


「はい。治りましたよ」

「…………感謝しておく」


もう治療を開始してしまっているんだよな。それに、受ける側も拒否するようなそぶりは見せていない。どこか表情をゆがませているようにも見えるが、これは単純に傷の痛みや回復による肉体の再生で違和感を感じることによるものだよな?治療自体に問題があるからやめてほしいという表情ではなさそうだ。

…………となると、こいつらはどうして若干空気を悪くしているんだ?それに、どうして傷を治していなかったんだ?

謎だ。あまりにも謎が多すぎる。


てっきり仲良しこよしで良い時間を過ごしていたかと思ってたのに、なんでこいつらは俺により精神的ストレスを与えてくるんだよぉぉぉぉ!!!!!どう対応するのが正解なのかさっぱり分からねぇじゃねぇかあぁぁぁ!!!

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