第22話「仕事の依頼があるそうです!!」
10月の中旬、普通ならなんの変哲も無い秋の休日の今日
あたしは何故か豪華な料亭に居た
「...ねえひろくん...」
「ん?どうしたそんな驚いた顔して」
あたしの座る席の隣に正座のままお茶をすするひろくんが居た
そしてなぜかひろくんはすっごく落ち着いていた
「どうしたじゃないよ!!ここどこ!?そして何でそんな落ち着いてるの!?」
「まぁまぁそんなに大声出すなよほま。今から説明されるから」
「...説明?」
ひろくんのその言葉に戸惑いながら席に座ると同時に障子がスライドして見覚えのある一人の女性がやってきた
ひろくんが所属しているモデル事務所「STARLINE」の社長の「秋羽 紬」さんだ
「紬さんお久しぶりです...でも何故紬さんがここに?」
「何故も何も今回ここにふたりを誘ったのは紛れもない私だぞ?」
「...ひろくん、そこら辺何にも聞いてないんだけど」
「ああ、言ってないからな」
「言ってないからなじゃないよ!!」
「いや~ごめんごめん、それは私が弘人に言わないようお願いしてたんだ」
「なんでそんなお願いを?」
「そうだな...それを説明するためにそろそろ本題に入ろうか」
そう言うと紬さんは着ていた上着を脱いで座布団に座った
そしてお茶を一口飲んでからあたしにこういった
「鹿野ちゃん、うちの事務所でモデルやらない?」
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「ごめんね~急に言われてもなんだか良くわかんないよね」
「い、いえ、ちょっと驚きましたけど大丈夫です」
「そう、じゃあ細かく説明していくね。え~っとまずモデルをやらない?っていうのは完全にうちに所属するっていう訳じゃなくてある企画をするのに弘人とペアを組める人が欲しかったのよ」
「なるほど...でそのある企画ってなんですか?」
「秋のカップル特集よ」
「...カップル?」
あたしは紬さんの放ったその一言に動きを止めた
『今明らかにカップルって言ったよね』
あたしは気になる事が山ほどあるので紬さんに質問をした
「あの、カップルの特集をするのは分かったのですが何でひろくんのペアをあたしがするんですか?」
「え?だって弘人が知らない人とカップルの特集をするの嫌じゃないの?」
「...どういう事ですか?」
「だってあなたたち『付き合ってる』んじゃないの?」
紬さんの口から放たれた衝撃の一言にひろくんは飲んでいたお茶をつい吹き出しそうになっていた
ひろくんは机に身を乗り出して紬さんの方を向いた
「ちょっと社長!!なにを急に言うんですか!!」
「え?だってあんた達はもうとっくに付き合ってると思ったから」
「付き合ってないです!!」
「そんな鬼のように迫ってきて言わなくても...ちょっと怖いわ」
「はぁ~ほんとこの人はなんて爆弾を...」
ひろくんは少し呆れたような声でそう言ってからため息をついてあたしの方向を見た
「ほま、もし嫌だったら断っても全然いいからな」
「う~ん...ちょっとだけ考える時間を貰っても良いですか?親にも許可を貰わなきゃいけないし」
「そうだね、じゃあ1回持ち帰って考えたらいいよ。じゃあそう言うことでここは奢りだから好きなの頼んでいってね」
その後は紬さんの奢りでご飯を食べた後解散になった
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「な、なあどうしたんだよほま、そんな不機嫌になって」
「...ひろくんには教えてあげない」
料亭を出て社長と別れた後、俺とほまは一緒に帰っていたのだがなぜかほまがずっと不機嫌なのだ
何か悪いことを言ったか俺は頭の中をフル回転させたが何一つとして原因が思いつかなかった
「...なんかわかんないけどごめん」
「理由の分かってない謝罪は受け取りませ~ん」
ほまは腕をバッテンになるように交差させ『ぶー』と言っている
正直可愛い奴だなと思った
「...ひろくんはあたしとカップルに間違えられるのそんなに嫌?」
「え?」
「さっき紬さんが間違えたときに凄い否定してたから」
「いや、そう言う訳じゃないんだがそんな誤解されてたらほまに迷惑かなって思って」
「...ひろくんは何にも分かってない...」
そう言うとほまは俺の近くに来ておなかあたりを叩き始めた
良く聞くと小さい声で『ばかばか』と言っている
「...ほま、ごめん」
「...わかったらいいよ」
そう言うとほまは俺の近くから離れていった
「ひろくん、あたしモデルの仕事してみるよ。っていっても親が許してくれないとだめだけどね」
「ん、じゃあ楽しみに待ってる」
そしてその2日後、ほまから親の許可を取れたと言う連絡があった
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今日は紬さんからオファーが来たひろくんとのカップル特集の撮影だ
見渡す限りカメラなどのごつごつした機材やプロの人たちがたくさん居る
『大丈夫かな...』
「お~いほま、なにそんな緊張してるんだ?」
「そりゃあ慣れてないんだから緊張するでしょ...」
「緊張してるとこ悪いけどもう始まるから行くぞ」
「うん」
先に撮影セットの方に行ったひろくんの後ろを追いかけるようにあたしは椅子から立って歩き始めた
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「はぁ~いじゃあまずは近づいて見つめ合うショットから行きましょう」
「わかりました」
カメラマンさんの指示に従ってひろくんは少し見下げてあたしの顔を見つめてきた
『ほんっとうに綺麗な顔だな...』
あたしはひろくんの顔を見ながら頭の中でそう思った
ちっちゃな顔に綺麗な赤い目よ高い鼻があって一種の芸術品のようにも思える顔つきだ
「...ほま、そんなに見つめられると照れる...」
「え、あ、ごめん!」
あたしがずっとひろくんを見つめていたのでひろくんは顔を赤くして顔を隠しながら逸らした
そんなひろくんを見てあたしのいたずら心が抑えられなくなってにやついた
「ひろくんもしかして照れてる~?あたしに見つめられたからかな~??」
「...ほま、あんまり調子に乗るなよ?」
「!!」
ひろくんはあたしのあごを上げてあたしの顔の近くに自分の顔を近づけてきた
至近距離まで近づいてきたひろくんのあたしは思わず顔を背けてしまった
すると後ろからひろくんの笑い声が聞こえてきたのであたしは頬を膨らませた
ぱわぁ~




