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マジカル★エクスプローラー エロゲの友人キャラに転生したけど、ゲーム知識使って自由に生きる  作者: 入栖
■2章 マジエロ★シンフォニー -美少女遊戯(エロゲ)学園の劣等生-
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60 LLL近衛騎士隊(ファンクラブ)の嫉妬②

(うーん、なんだか空気が悪いな)

 原因は分かりきっているが。ストッパー兼起爆剤になってくれるリュディもいないし仕方ないのかも知れない。


 久しぶりに一人で食堂にきた俺は辺りの雰囲気に少し引きながらも足を踏み入れる。そして日本に居た頃の俺なら、注文を躊躇する値段の昼食を受け取ると、空いている席へ持って行く。


 無論俺に興味の無い人も多いが、やたらと視線を投げてくる者も居る。ものすっごい美少女に何度も振り向かれるのは歓迎だが、男のそれも怨嗟の籠もった視線は勘弁して欲しい。

(対して伊織の評価は高いな)


 ツクヨミトラベラー(ツクヨミ学園で利用できる総合情報端末)に配信されるツクヨミ学園新聞で取り上げられた伊織は、現在評価がうなぎ登りだ。なんでも『顔は普通だが、モニカ会長と一緒に魔人族を追い払った注目株』らしい。顔は普通って余計じゃね?


 まあ、これはとても良い展開だと思う。このまま進めば、生徒会や風紀会に入ることも出来るだろう。生徒会長や聖女から推薦を貰って、どちらかの下部組織に入ってくれれば、すぐにでもどちらかの会員になることもできるだろう。むしろなって貰わないと一部面倒なイベントが放置されるから、無理矢理にでも入れる。


 と俺がキノコポタージュを口に入れていると、数人の男子生徒が俺の近くの席を陣取った。

 そして俺の食べているこの学生食堂で一番高い料理を見て舌打ちすると、自分の食器を机に置いた。メニューは俺と同じだ。


「そういえば聞いたぞ、君、模擬戦で女子に負けたそうじゃないか」

 と、笑いながら彼が言うと、その取り巻き達も笑う。

 俺はその言葉に耳を疑った。


 そもそもであるが、一般的なゲームならともかく、エロゲでは大抵の強キャラは女性である。普通に考えてみれば分かることだ。エロゲをプレイする者の大半が、カワイイ女の子が目的の紳士しんしで有るからこそ、女性キャラが強くなりがちなのだ。洋ゲーのように筋肉質のオッサンと、どこか可愛くない女性しか登場しないエロゲがあるならば、その会社は日本で存続するのは不可能だろう。


 マジエロも例外ではない。男キャラは優遇された職業と一部の者以外は、総じてザコであり、女性ヒロイン達を引き立てるための負け犬である。彼は実力者と戦ったことがないのだろう。

 そもそも俺が最強へ成り上がるための仮想敵のほとんどが女性であり、女性に負けるのは当たり前であるとすら思っている。もちろん誰に負けるとしても心情的には悔しいし、次は必ず勝ってやるとは思う。まあ、


「いつだったか忘れたが、俺がカトリナに負けたのは事実だ。しかし彼女も馬鹿にするような言い方はどうかと思うが?」

「フっ」


 と、片頬をつり上げ笑みを浮かべると、横に座って食事を食べ始める。よく見れば以前会ったことのある人物だ、ええと。


「ええと、ニョッキさんでしたっけ」

「ニェッキだ! 私はパスタではないっ!」


 そうだった、ニョッキってイタリアの団子パスタだな。あれあんな形しているのに、パスタの1種扱いなんだよな。こちらの世界で食べてないけど、美味しいんだよな。トマトソースを絡めた奴も、ホワイトアスパラとキノコソースの奴も美味しかった。


「美味しいよな、ニョッキ。食べたくなってきたなぁ」

「料理から話を戻せ! そもそも私はランフランコ・ニェッキだ!」

 そういえばそうだった。


「いや、すまん」

「貴様、私が誰かを知ってそんな口を開くのか……?」

 と、ニェッキさんが目をつり上げて俺を見る。そういえば貴族なんだったか?

 でも一応学園規則で、学園内での貴族の特権とかは無かったはずだが。まあ彼の親に告げ口して、毬乃さんに被害が出るのもなんだし、大人しくしていよう。


「まあまあ、落ち着いて落ち着いて。それと食事が冷めるぞ?」

 フン、と俺から視線をそらすと、彼らは食事を始める。

「お前の顔を見ていると食事がまずくなるな」


 隣に座っておきながら、なんて言いぐさだろう。近くに座らなければ良いのにと思ったが……よく見てみれば席埋まってるな。なぜか俺の周りだけが空いていたのか。


 なんだかショックが大きい。電車で自分の左右の座席が空いているのに、他の席には人が座っているような、あの寂しさを感じる。俺太ってないんだけど……もしかして体臭がきついのか? 記憶と一緒に加齢臭を引き継いでないよな?


「……」

 ニェッキの取り巻き達は、ニヤニヤ顔で俺を見つめている者も居れば、目元に皺を寄せウザったそうに見る者もいる。まるでイジメられっこになった気分だ。いや、いじめられてるのか。彼らに何かした覚えはないのだが。


「午前授業はたまにしか来ない、午後授業は来ない。貴様は何がしたいんだ?」

 食事を進めていると、ニェッキはそんな事を俺に言う。

「まあ、強くなりたいな」


 冗談もほどほどにしろ、とばかりにニェッキと取り巻き達は睨んでくる。ニェッキの隣に居た彼は、

「目障りなんだ! お前がいるだけで近くに居るあの方の評価が下がる」

 と近くの人が振り返るぐらいの声で俺に言った。


 彼が言った言葉がニェッキ達全員の総意なのだろう。誰も彼の言葉をたしなめようとせず、苛立った様子でこっちを見ていたり、格下を相手にしているかのようにふんと鼻先であしらうと食事を進める者も居た。

 どんどん空気が悪くなっていくのを感じた俺は


「そうか、そりゃあすまなかったな」

 と言っておいて、さっさと食堂から出ることにした。個人的にはもっと精神的にきつい現場で仕事をした事もあるし、慣れていると言えば慣れているし、根本的に言えば気にしていない。


 だけど普通に食事している人々を、わざわざ不快な気分にさせる必要も無い。喧嘩はしている奴らに注目されがちだが、案外周りにも被害出てたりするんだよな。今回のは喧嘩でもなく言いがかりみたいなものだが。


 俺は周囲の人に謝ってから食器を片付けると、俺はそのまま食堂を出る。そして本当なら食堂で飲む予定だったコーヒーを自販機で買うと、近くのベンチに腰掛けフタを開けた。

 今日やるべき事を頭の中でまとめると、飲み終わった缶を捨てる。そして初心者ダンジョン二回目に挑むリュディに合流した。



「皆はもう集まったか?」

「雪音さんがまだみたいね」


 ツクヨミトラベラーを操作するリュディは、メッセージを確認するとそう言う。

「そうか……まあ先輩ならすぐ来るだろう」


 時間にキッチリしている先輩なら、遅れることはないだろうし、もし遅れる場合は必ず連絡を入れることは間違いない。

 俺はツクヨミトラベラーを操作しているリュディを見てふと思う。


「そういえばなんだが、帰りにドラッグストアに寄っても良いか?」

「構わないけれど、どうしたの?」

「いや、銀が配合されてそうな制汗スプレーをちょっと買おうと思ってな」

 加齢臭を抑えられるかは分からないが。


 と、リュディは首をかしげながら俺に触れるぐらい近寄る。避ける暇はなかった。忌避感もなくそれはもう自然に、俺の胸まで顔を動かした。

 彼女は片手で自身の前髪を掻き上げると、エルフの特徴とも言える少しとがった耳にかける。その些細な行動がまた艶かしく、思わずじっと見つめてしまう。

 白くみずみずしく、きめ細かな肌。美しい曲線を描いたうなじは情欲をかき立て、彼女から香る女性的な香りに思考がおぼつかない。


 衝動を必死で抑えていると、彼女は目を伏せスンスンと臭いをかぐ。

 普段から見ているからだんだん麻痺してきたが、リュディはとても美人である。多数の人間が彼女と仲の良い俺に嫉妬するのは仕方の無い事なのだろう。


「特に臭わないわよ?」

 リュディは顔を離しながらそう言ってくれた。

「そっか」


 さて、記憶と一緒に加齢臭の引き継ぎはなかったらしい。正直、とてつもなく安堵した。

 けれど制汗剤は買って帰ろう。彼女が気を遣ってそう言ったかもしれないから、一応、ね。


 瀧音君はまだ自分の実家のすごさを理解していません。



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