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かつて最強と呼ばれた男は前世の知識と共にTSお嬢様を満喫するようで  作者: 赤木林檎
第2章 低学年編

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第57−2話 大きな一口食べてやる

お読みいただきありがとうございます。


昨日のつづき。

――――――――


 すこし間を開け、アルカは優しく話し始めた。


「ステラ様は、とっても真面目な方です。ですがあなたは、とてもまっすぐに進む癖がある」

「まっすぐ進むのはいいことでしょう?」

「はい。一つのことのために入念な準備をして、鍛錬をして、行動して、対策して。お嬢様になろうと、今もそうやって努力をなされている。それ自体はとても素晴らしいことです。ステラ様のそのストイックさには感服せざるをえません」

「じゃあいったい何が問題なのかしら」


 何事も、地固めから始めて、練習を重ね、実践でそれを発揮して、その時の問題を次に活かす。魔法であれ戦闘であれ必要だった基本中の基本で、それを他の今に生かすのは何一つ問題ないはずだ。


「申し上げるとおり、問題はありません」


 そう、問題はない。だから、これからもこれをひたすらに続けていけば……


「……ただ私は勝手ながら心配をしているのです」

「心配?」

「ええ、ステラ様はそうやってまっすぐに進んでいく。そしてステラ様は、進む道に避けれない石があったとき、きっとその石を避けない。つまずきの意思に対して、まっすぐに立ち向かい、転んで傷つく道を選んでしまう。私はそれを心配しているのです。なまじ強いが故に、こけて傷ついても何事もないかのように進もうとしてしまうのではないかと、私はそう心配しているのです」

「失礼ね、私だって怪我くらい気付けるわよ」

「そんなこと言ったって、今のステラ様は深く悩んで、しかしそれでも突き進もうとしている。これ以上深く悩むステラ様を見るのは私としては放っておけません」

「……バレてたのね」

「ステラ様って基本的に隠すのが下手ですからね。鑑みるに、お嬢様になろうとしてうまくいってないってところでしょう?」

「ぐぬぬ……」


 正しく図星であり、私は言葉を返せなくなった。どうやら私の苦悩について、メイドのアルカには悩みの種も含めてバレていたらしい。


 もしかすると、私が思っていた以上に私はつまずいていて怪我をしているのかもしれないな。


「だから私はステラ様に寄り道をさせたかった。ただ寄り道をすると言うよりはむしろ、あなたの真っすぐすぎる生き方において寄り道をさせたかったんです。何せ、寄り道した先にはこんな美味しいものがあるのですから」


 そう言ってアルカもタルトを食べて少し微笑んだ。


「あなたが笑うのは珍しいですわね」

「私だってメイドじゃなければ少しは笑いますからね。変ですか?」

「いいえ、まったく」


 その顔は、私の知るメイドのアルカにはふさわしくなく、そして、アルカという女性に非常にふさわしい顔だと思った。


 そうか、彼女も今は寄り道をしているのだ。それならば、今のアルカがメイドらしくないのも当然だ。だって今の彼女は、少し寄り道をして楽しんでいるのだから。


「ステラ様、早く食べないと美味しさが半減しますよ」


 そう言われて、私はもう一口タルトを食べた。出来立てから少し時間が経ったものの、まだまだ美味しい。


 そうね、確かに悪くないわね。


「ねえアルカ。パイを私にもう一切れ……いや二切れくれないかしら?」

「ええ、もちろん。でもそんな食べて大丈夫なのですか?」

「そんな日もありますわよ」

「そんな日ならば仕方ないですね」


 たまには躾を破ってお嬢様らしからぬことをしてもいいかもしれない。


 少し食べ過ぎて太る日があったっていいかもしれない。



 そう、時には寄り道する日があってもいいかもしれませんわね。





 私は大口を開けてパイにかぶりついた。



お読みいただきありがとうございます。


もし面白いと感じてくださいましたら、是非ともブックマーク、そして下にある「☆☆☆☆☆」をクリックして応援していただけると嬉しいです。


まあ寄り道しながら生きていきましょう。


今日の晩に力が湧けば明日もこの続きを投稿します。湧けば。

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