第55−1話 聡明なる私の愚かなる言葉
お読みいただきありがとうございます。
「ステラ様の動きはとってもしおらしいですわね」
「みんなに迷惑をかけてしまって申し訳ありませんわ。昔からあまりお外で運動することがありませんでしたので」
「お嬢様ですもの、仕方ありませんわ」
三時間目の体育の時間が終わり、私は皆に囲まれつつ廊下を歩く。
運動ができないなんて真っ赤な嘘で、汚れるとお嬢様らしからぬと思っているだけなのだが、そこはお嬢様らしく嘘をつきまして。
私の周りにいるのは、クラスメイトの何人か。そう、E組のクラスメイトの何人か。
そして、私が率いるように見えるそんな私の軍団は、たくさんの人間に見られていた。
今まで通り、注目を浴びているわけだ。
ヒソヒソ、コソコソ。
しかし、あの日を境に、少しだけその目の種類は変わった。
それは、分からないものに興味を惹かれる、そんな子どもの目ではなく。
それは、優れた人間を見る、そんな感銘の目でもなく。
「あれがステラってやつ?」「金持ち気取りやがって」「さすがお嬢様は違うなっ」「ちっ」
私は体育の時間は嫌いだ。
校庭に出るためには、否応にも他のクラスの横を通らなければならない。
その度に他のクラスからこの声を聞かなければならない。
そして他のクラスからたくさんの目を浴びなければならない。傲慢な貴族に向けられた、そんな嫌味な目を。
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「ですからメメさん、クラスメイトと校庭で遊んできてくださいませ!」
食堂で私は少し大きな声でそういった。
少し揉めていた私の周りは通常に比べて静かだった。私の声が響き渡る程度には、静かであってしまった。
私の言葉を聞いた途端、周りで話していた先輩たちが、話すのをやめてこちらを向いた。
「……?」
さて、少し強くあたったメメは仕方ないとして、メメ以外まで静まり返るのはどうしてだろうか。ほんの少し強めに言っただけで、別に喧嘩をしたほどでもないのに。
「ステラ様ってそういう方だったのね」
「うわぁ、今年の一年生もやばいなあ」
ヒソヒソと声が聞こえた。私のことについて、概ね否定的な言葉が聞こえてきた。
そんなに悪いことを言っただろうか? 私は私の言葉を思い出す。
クラスメイトと――校庭で――遊ぶ。別におかしなことはないはず。
……いや待て。
さっき彼女たち、なんでメメにクラスを聞いたんだ? クラスを聞いて態度を変えたんだ?
疑問と疑問、点と点が繋がっていくのを感じる。説明会の時に聞いた説明と結びつけるなどして。
そして聡明なる私は、愚かなる私の言葉に薄々気づきつつあった。
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