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かつて最強と呼ばれた男は前世の知識と共にTSお嬢様を満喫するようで  作者: 赤木林檎
第2章 低学年編

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第54話 視線と発言には気をつけて

お読みいただきありがとうございます。

「ステラ様ー、どうしてあなたがこんな端っこにいるんです?」

「ていうかどうしてそんなプリンが?」

「ところで横の人はだぁれ?」


 ご飯タイムが始まってまだそんな長くは経っていないはずなのに。

 さて、予想外にも早くクラスメイトに見つかってしまい、私は絶賛ピンチを迎えていた。


 彼女らは私のクラスメイトで、とくに私の周りを囲う方々だ。話した順にハッカさんとヘリベスさん、そしてミントさんである。


 私にいつ何時でも着いてくる彼女たちであるが、しかし私の悪評を渡すのはとくにまずい。私にペラペラ話す勢いで他にどんどん移ってしまいかねない。


「ええとですわね……」


 しかし、それにしてもこの状況はいささか分が悪い。


 まず授業を途中で抜け出して、呑気にここでご飯を食べているのがよくない。まるで彼女たちを筆頭としたクラスメイトから逃げたかのようじゃないか、いやそうなんだけど。


 そして大量のプリン、これもまずい、いや美味しいんだけど、あまりにも卑しく映ってしまいかねない。いや否定はしませんけど。


 焦りが焦りを呼んで、余計なことをつい考えてしまう。そんな余裕はどこにもなく、今は必死でありもしない言い訳を考える時間なのに。


「そう、頭が痛くて保健室に行こうとしたものの、少しお外の空気を吸うと頭痛がおさまりまして、でもタイミングは悪くに授業が終わったものですから、仕方なーくご飯を食べに……」

「あれ? ステラちゃん、頭痛かったの? 大丈夫?」

「あー、えー、あー。心配をかけたらダメだと思って黙ってましたの(メメさん少し黙ってくださいませ!)」


 うんダメだ。メメが話すと話がややこしくなる。私はメメをチラッとみて目線を送る。察してくれー。


「……? えへへぇ」


 とまあ、さすがに目線では何も伝わらない。視覚器官である目は口ほども話せないのだ。察しろなんて主観的で傲慢でしかない。


 そんなわけで、これ以上被害が出る前に話をすませて、メメから離れたいところだけれども……


「しかしステラ様、プリン取りすぎですよー。まさか全部食べちゃうつもりですか?」

「もー、ステラ様はそんなはしたないことしませんよ、ねぇステラ様?」


 ダメだ、やっぱりそちらに話題は移るのか。


 みんなの目を盗んで一つをメメの前に置いたけれど、それでも残り三つもあるのだ。どうしたって気づかれないはずもない。しかも予防線まで張られた。私が全部食べるなんてとても言えない。


 私が食べないにもかかわらず、私がこれを持ってきた理由は……あ、そうだ。


「本日はプリンが少なかったものですから、皆さんにと思ってお先にとっておりましたの」


 こうなってしまっては致し方ない。もとより彼女たちがきた時点でプリンプリン計画は中止だったのだから。


「さすがステラ様、先見の明もお持ちですのね」

「やっぱりステラ様はお優しいです」


 彼女たちはそう言ってプリンを取ろうとして……


「ダメだよ! これはステラちゃんが食べるんだから」


 メメさん!?


――――――――


 しばらくの沈黙が続いた。


 ……気まずい。


 メメは手を伸ばして私のプリンを守る姿勢をとっている。


 そんなメメに対して、三人が、お前誰ですのと目線を送っている。つい数秒前の言葉を訂正すると、目は口よりストレートにものを言います、はい。


 一方その頃私は、その間で板挟みになってひどく気まずい状況であった。


「ステラちゃんはそのプリンを楽しみにしてたんだから、みんなが食べちゃダメだよ!」


 沈黙を破って先に動いたのはメメだった。

 先ほど話していた通り、確かに私はこれを楽しみにしていた。それを考えてくれたのは非常にありがたい。ありがたいのだけれど。


「あら、何を言ってるのかしら。ステラ様がそんな卑しくたくさんのプリンを食べるわけないでしょ、そんな子どもじみたこと」

「でも言ってたもん」

「自分が貰ったからって嘘はいけませんよ」

「ステラちゃんは欲張りさんだからいっぱい食べるの!」

「はあ。あなた、ステラ様のこと何も知りませんのね」


 そう、彼女たちの前で見せる私はそんなことはしないのである。賢く行儀の良いお貴族な私はそんなことはしない。

 だから彼女たちにとってメメはホラ吹きに見えるのだ。


「てかあなた誰ですの」

「私はメメだよ。ステラちゃんの友達の」

「へえ。クラスはどこなのかしら?」

「クラス? クラスはA組だよ」


 メメのクラスはA組である。

 私のクラスはE組で、文字に従って廊下一列に部屋が並ぶため、メメのクラスは遠いというのが最近の悩みである。


 しかしどうしてこのタイミングでクラスなんて聞いたんだろう。


「へえ? A組ですか」


 三人はメメのクラスを聞いてクスクスと笑った。どういうわけだろうか、私にはわからないけれど。


「A組のくせにステラ様と友達なのおかしくありませんか?」

「ステラちゃんは昔からの友達だもん!」

「昔から? またそんな変なことを言いますのね。ステラ様と貴方が会う機会なんてないよ」

「そんなの関係ないもん」


 さて、クラスというのがどういうものなのか、そんなことを考えている間に三人とメメとの会話がヒートアップしてくる。

 こうなってはプリンの所在地程度でどうにかなる問題でもなさそうだ。


 しかし私にこれはどうしようもできない。

 助けてくださいませー。


「おう、メメ!」


 こういう時に来てくれるのがヒーローなのだろうか。メメのクラスメイトと思しき人が声をかけてくれた。


――――――――


「なんか端っこからメメの声がしたと思ってさ。飯終わったら校庭でみんなと遊ぼうぜ」


 ヒートアップしてやはり声が大きくなっていたようだ。一言も話してはいないけれど、中心にいたせいで気づかなかった。


「メメさん、こちらはお友達かしら?」

「うん、おんなじクラスのめーくん」

「俺、メラク。よろしくな! こいつがステラってやつ?」

「うん、そうだよー」


 メラクさん、あるいはめーさん。お名前は覚えました。恩にきます。

 助け舟が向こうからやってきたのである。ここに乗るしか道はない。


「メメさん、お友達と遊んできてはいかがかしら?」

「でもそれだとステラちゃんのプリンが--」

「大丈夫よ、実はさっきからまた少し頭が痛くって、ですのでプリンは皆さんに渡すだけですから」

「そっか、じゃあ保健室まで--」


 どうにもこうにもメメは離れようとしてくれない。


 もう、ほんっとに。


「ですからメメさん、クラスメイトと校庭で遊んできてくださいませ!」


 私は何がなんでもメメをこの場から引き剥がしたかったので、私は少し乱暴にメメに言ってしまった。遊びたがりのメメのことだ、これで行きたくもなるだろう。





 そしてこの言葉が、すべてにおいて失敗だったと気づいたのは、しばらくしてからのお話であった。



お読みいただきありがとうございます。


もし面白いと感じてくださいましたら、是非ともブックマーク、そして下にある「☆☆☆☆☆」をクリックして応援していただけると嬉しいです。


余談ですが、そろそろ更新を始めて一年です。頭の中にお嬢様が一年ほど居座っております。

これが結構ストレスコントロールに有効だったりします。嫌なことがあったらお嬢様に相談するとかしています。

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