第48−2話 幕間の間 二人はお受験休憩中
お読みいただきありがとうございます。
今回の話は前回に続き、読んでいなくてもなんら問題ない番外編です。
でも読んで! 読んでほしいから読んで!
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「できたー」
「おお、どれもあってますわ。やりましたねメメさん!」
「図書館内では静かに」
「「ハーィ」」
集中した甲斐あって、メメも問題を解き終わったようだ。
少し時間はかかったけれど、全部あっているのだから大したものだろう。始めた頃からは大きな進捗である。
「よくできました、メメ様。花丸です」
「わーい!」
「私も花丸くださいな」
「はいはいまるまるまる」
「子どもを適当にあやす親か!」
「ほとんどその通りですが?」「ですわね」
一問終わったので、少しあった緊張感は和らいで、私たちは二人仲良く、うーんと伸びををする。そしてメメはそのまま机にダランと倒れ込んだ。
「つかれたー」
メメの魂からの声が周りに響き渡る。図書館内では静かにー。
メメは先ほどの解答用紙で折り紙を始めてしまった。メメのやる気はすっかり無くなってしまったようだ。
それを見たアルカは、少し考えてから、持っていた教本をパタリと閉じた。
「そうですねお茶休憩をしましょうか。お二人が好きな緑茶です」
「「わーい」」
そんなわけで、早速休憩タイムである。
本番はもっと長時間でいくつも問題があるそうだから、一問ごとに休憩している暇などないのだが、まだメメの集中力はそこまで持たない。まだこれから、といったところだ。
私たちは図書館の外に出て、外の椅子に座った。そしてアルカからもらったお茶を飲みつつお菓子を食べた。
「メメ様は問題の途中で変なところを見てしまう癖がありますね」
しかし、ただ単に休憩をしているというわけではない。
この時間にすることは二つ。一つは、アルカの有難いアドバイスを聞くこと。
「だって、模様がね、紙のね、それがきになって」
「メメさん、丁寧言葉ですわ」
そして二つ目。今、私が小声でメメに伝えたこと。
「そうだった! ええっと、紙のね、紙の模様が気になりました」
「よくできましたね」
そう、この時間は丁寧な言葉を使う特訓時間なのである。
どうやら受験には面接などがあるそうで、やはり良識的な子どもが高評価だから、こういう癖をつけておいた方がいい。
貴族育ちでないとこういう癖はどうしても身につかないのに、こういうところで点数を付けられるのである。こんなんだから特待生の制度があっても結局は貴族が多くなるという問題を抱えるのだ。
まったく、貴族は庶民をなんらわかっちゃいない。貴族主義はもうすぐ廃れますってのに。
「メメ様はいろんなことが気になってしまうんですね」
「うん……はい。だめですか?」
「いいえ、とってもいいことです。いろんなことが気になって、いっぱい発見できるのはメメ様の素晴らしいところです」
「えへへ」
そういって、アルカはメメの頭を優しくなでる。
あれ、私あんまり頭撫でられたことことないよな、ちょっと嫉妬しちゃう。
「いろんなことが気になるのなら同時に思考すればいいですわよ。つまりは並列演算ね。そうすれば問題を解きつつ紙の模様の解析ができますわ」
「ステラ様は別種の人間ですので少し黙ってください」「みー」
そういえば私はあまりヨシヨシされた経験がない。
私に対してのアルカはというと、つっこむか指摘するか怒るかばかりだからだ。
普段の言動が原因だとはわかってはいるが、私だってたまには甘やかされたいものである。いや別に、撫でられても嬉しくもなんともけどね。
「メメ様、ステラ様のおっしゃったことはいったん忘れてください。今後とも不必要な知識です」
「あ、うん。わかりました」「ぐぬぬ」
そんなことないぞ。たとえば戦闘の時には味方の動きと敵の動きをすべて並列的に考える必要があるし、合成魔法を使う時には二つの魔法を同時に意識する必要があるし……うん、その通りです、今後も不必要でした、はい。
私の思考をよそに、アルカはメメにアドバイスを続けていた。
「テストの時にも、いろんなことが気になると思います。でも、その時だけはちょっと我慢です。問題が解き終わるまでは問題だけを見てください。そうすればもっと良いです」
「はい! わかりました!」
「まあ、あれね。私からもまともなアドバイスを一つ。いろんなことを気にするのは問題の後でいいんです。問題を適当にぱっぱと解いてしまえば、あとでいっぱい余計なことを考えられるんです、メメさんわかる?」
「あら、ステラ様にしてはまともな意見ですね。尤も、それが理想論であるという点と誤解を生みかねる点を除けばですが」
「でしょうでしょう?」
私もアルカに習ってアドバイスを伝授してみた。しかもそこそこまともな。
アルカは私の意見に感服したようだ。褒めてもいいよ。よしよししてもいいよ。
「ではメメさん。今ステラ様が言ったことは忘れてください」
「えぇなんでえ」
私は思わず気の抜けた声をあげてしまった。
まともなことを言っても訂正されるのは流石に不条理である。
「メメ様が大切にすること。それは、集中して問題に取り組むこと。早く解こうと意識するのは、これからゆっくり練習すればいいのですから」
「確かに……」
たしかに正確さを極めてから速さを狙うのは常套手段であり、その逆よりも成功しやすいと聞いたことがある。
随分前に師匠からも聞いたのだが、未熟者が下手にスピードを重視しても変な癖がつくだけらしい。
さすがは育てのエキスパートである。悔しいがやはり敵わないものです。
「ステラ様、メメ様。分かりましたか?」
「「はい!」」
「よしよし、二人ともいい返事ですね」
そう言って、ついに頭を撫で……てはくれなかった。完全にその流れだったのに。
ちょうどお茶のコップを持ったせいで両手が塞がってしまったからだ。ちくしょう、いやこれは悔しくもなんともないけどね。
「では戻って続きをしましょうか」
「「はーい」」
仕方がない。次の問題をいい感じに終わらせて、今度こそ頭を撫でてもらおう。
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悲しきかな、本日私が頭を撫でてもらえることはなかった。
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