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かつて最強と呼ばれた男は前世の知識と共にTSお嬢様を満喫するようで  作者: 赤木林檎
第1.5章 幼児編 幕間

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第47−1話 名前は忘れた

お読みいただきありがとうございます。


大体二十六話あたりの振り返りな話。追加情報もあるよ。

――――――――


 隠密魔法をかけて、話す準備は整い。


 二人でピザを食べながら、色々と話を進めていった。ユリスは追加でハンバーグも食べつつ。


「へえ、また街を救っちゃったんですね」

「まあ、そうなりますね。お礼に北の国のお食事腐るほどもらったんですけど、いります?」

「いいですねえ。後でひと……ふたつください」

「この人がめついな」


 北の国に呼ばれて、突如現れた大きな魔物、通称クラーケンをぶった斬ってきたり、街に蔓延る悪魔を切ってきたり。犯罪者グループの根っこを掴んだ話をしたりもした。


 ユリスは楽しく話しているうちに、芋づる式に記憶が思い出されていく。

 勇者業以外のことも、少しづつ思い出され……


 そういえば、少し前にもこうやって話していた記憶がある。それはいつだったか……


 肝心のところで思い出せず、モヤモヤした気持ちで街をみる。そこを歩く人間を眺めつつ……


「あ!」

「どうしました?」


 ユリスは子どもを見てようやく思い出した。子どもを見てひらめくのは、ネールのようで少しもどかしい気持ちになるものの、そんなことはお気になさらず。


 そう、以前にある子どもがいたのだ。それは今みたいに、ネールみたいに、やけに話しやすかった子どもであった。


 子どもだから話しやすかったと言うべきか、むしろ子どもなのに話しやすかったと言うべきか。

 ともかく、一般人とは違う話やすさ、と言う点で、ネールに近いものを感じた、そんな幼女。


「そういえば、先輩に合いそうなおもしろい話がありますよ」

「どんな子どもの話かしら?」

「そうなんですけど、なんか話す気失せるな……」


 ユリスは思い出しつつ話していった。


 そういえば、この幼女の特異な点はそれだけではなかった。自分の隠れる木にピンポイントでちょっかいをかけ、脅しに決して屈しず、そして妙に大人びていた。


 しばらく前の話なので、名前はすっかり忘れてしまったが、そこそこ有名な家だったような、そうじゃないような。


「いやはや、しかし思い出すだけで少し腹立ちますね。本当に生意気な女の子でした」

「ふふ、ですが笑えますねえ。そんな子どもに諭されて、何だかんだパーティへ出席するようになったとか」

「まったくです。聞かれたら新聞にでも載ってしまいますよ」

「そこに座っている人が新聞記者だったりして」

「おお、こわいこわい」


 そうは言うものの隠密魔法をしっかりとかけているので、当然この話は他の誰にも聞かれてはいない。


 だからこれは、一種の勇者ジョークだ。ほんの少し意地が悪い、ただの洒落。


「ところで、お名前は思い出せないんですよねえ」

「ええ、しばらく前の出来事ですので」

「それは残念」


 本当に残念だったのだろう。そう言って、ネールは露骨に肩を落とした。


 そうは言っても合う機会などないだろうに。そう思ったユリスはネールを訝しみつつ見る。しかし聞くところによるとそうでもないらしい。


「私、仕事の関係で定期的に小学校へ出張に行くかもしれないのですよお。だから、知っておければと思いましたのに」


 どうやら、公的に会う機会があったようだ。

 ユリスはむしろ名前を出さなかったことに対してホッとした。もし仮に特定でもしたものならネールがどんなだる絡みをするか分かったものではない。それが幼女であればまず間違いなく抱っこするだろうし、もしかすれば身体中を触るとかもありそうだ。いやはや怖い怖い。


「いずれにせよ小学生に手を出しちゃダメですよ」

「ええ、もちろん出しませんよお。……多分?」「おい待て」


 ユリスはふと考えた。こんな輩を仕事で小学生に会わせようなんて無茶だ。国に行って、その出張を取り消すように頼むべきだろう。


 でも、彼女は一定の倫理観はあるとユリスは知っていた。なので、頼むのはやめておくことにした。第一にめんどくさい。


「あなたの言うその女の子に是非一度会ってみたいものですねえ」

「そのうち会えるかと。多分あそこまで大人びた幼女、そうそういませんよ」

「あなたがそこまで持ち上げる人間ですから、きっと特別優秀な子どもなのでしょう。いずれ運命が交差する日がありそうですねえ」

「いや、俺はあんな生意気なやつしばらくは会いたくありませんね。きっとあっちもうんざりしているでしょうし」

「さあどうでしょう。あなた、思っているより魅力的ですもの」

「ヤダヤダほんと」


 ユリスは舌をペッと出しながら露骨に嫌がるそぶりを見せた。


「あなた、学園の頃から根っこは変わってませんよね。見栄えこそしっかりしましたが」


 あくまで勇者として名乗りを上げるユリスの子どもらしいところを知る人間はそう多くない。学園の頃のユリスを知る人間か、今のユリスと共に任務をこなす人間だけだろう。

 そんなユリスの顔を知る人間の一人として、ネールは少し優越感に浸りつつ。


「あ、そうだ。それで思い出しました。この女の子、ちょっと妙なことを言ったんですよ」

「妙なことですかあ。気になりますねえ」


 ネールはおっとりと尋ねた。

 すでに十分変わった言動を聞いているため、もうその少女に対してはちょっとしたことでは驚くまい。


「ちょっと違和感があって覚えてたんすよ。彼女、俺にこう言ったんです」


 ただ、続くユリスの言葉を聞いて、ネールはさっそく驚くことになった。


「『サボり魔ユリス』」

「……確かに違和を感じますねえ」「ねえよそんな言葉」


――――――――

お読みいただきありがとうございます。


続きます。


もし面白いと感じてくださいましたら、是非ともブックマーク、そして下にある「☆☆☆☆☆」のところで評価をつけていただけると嬉しいです。

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