第46−1話 予期せぬ事態
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しばらくは三人称です。
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「それで、今更ですけどなんか用すか?」
「本当に今更ね。すっかり食べ終わったじゃありませんか」
ランチタイムにやってきて、そのランチを平らげて、そして今に至る。
すっかり満足したネールは、本来の目的も忘れてすっかりミルクティに耽っていた。
「それもそうですね。じゃあ……店員! ピザもう二枚ください。あとこのステーキ」
「いやそこまで食べろとは言ってませんよお」
「単純にお腹空いたので」
勇者はたらふく食べる。別にユリスに限った話ではない。
理由は単純で、普段から多大なるエネルギー量を使って生きているからだ。
勇者という生物は、普段から些細なことも逃さないように全身の感覚を強化し、目で魔力を追い、人間の行動を予想し、万が一のためにもいつでも戦闘体制に入れるように生活している。
もしネールがユリスに本気でナイフを突き立てようとするならば、ナイフが動き出したその瞬間にナイフはその原型をとどめていないだろう。それほどまでに、彼らは抜きん出た力を持っている。
その代償が莫大な食費だというだけだ。
「で、なんかあったんすか」
「いえ、とくに。ドラゴンが街に出たということ以外は街は平和ですし、いつも通り私の研究成果はだいたいゼロです」
「確かにいつもと変わらない日じょ……いやドラゴン!? やつらが街に出たことを以外でまとめちゃだめじゃないですか!?」
「あら、ご存じなかったですかあ」
「最近まで遠征に行ってましたし。街にドラゴンともなれば、相当な被害でしょう?」
「いや、それが死傷者が出ていないんですよねえ。負傷者もほとんどいない」
その日、ネールはいつも通り研究活動をしていた。気分が乗らなくって、ビーカーでコーヒーでも作っていた時に、ドラゴンらしき姿が見えたものだから大慌てで街や病院を走り回ったのだ。最近はめっきり使わなくなった、雷魔術を使った高速移動を使ってまで、いち早く。
ただ、病院にはドラゴンに関する怪我人はほとんどいなかった。びっくりして腰を抜かしたおじいちゃんはいたらしいけれど、たったそれだけ。
「ドラゴンの行動としては、あまりにも不自然なんです。ただまあ、ひとまず怪我人がいないのなら、それは平和な日常といって差し支えないのではありませんか?」
「確かに一理ありますね」
「まあ、グラン像はボッコボコに壊れたらしいんですけどねえ」
「それは大問題では?」
莫大な費用をかけて作られたその像は、見事なまでに粉々になった。
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