第39−3話 もう一度ちゃんとみろ
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『どこに目ついてんの、君』
俺は音の速度を超えた速度で動いているため、その声が聞こえることはおよそあり得ないのだが、しかし紛れもなくそれは神様の声で、勘違いというにはあまりにも明瞭だ。
おそらく念か何かだ。一部の高位生物が持ち合わせているとされるそれに近いものだろう。
「急に何を?」
急な割り込みに驚きつつも、俺は神様に応答することにした。
いや、応答を余儀なくされた。
『一体さっきから君は何を見ているんだって話だよ』
「どっからどう見たって、俺はドラゴンを見ていますが?」
『嘘つくな。君はドラゴンを何も見ていない』
どうしてか、もう少しで届くはずだった剣はまだドラゴンに届かない。それもそのはずで、俺はまったく動いていないのだ。
「くそ、ドラゴンめ。変なことしやがって」
『それをしたのは神様である私。勝手にしろと放っておけば、本当に勝手にするもんだから困ったもんだね。君があまりにも節穴なもんだから、神様パワーでちょっと特権を行使しただけだ』
「やめてください。もう少しで切れるところなのに」
神の世界であるここでは、神様がルールなわけで、なんでもやりたい放題なのだが、それにしたってこんな仕打ちはないだろう。ドラゴンが切れるその前に、ドラゴンの前に静止させるなんて、殺すも同然だ。
『もう一度、いうよ。君はこの現状から何を見ているの?』
何って、ドラゴンにきまって……
いやまて。なぜだ。
なぜドラゴンは攻撃してこない。
この至近距離にいる静止した俺に対して。
これまでも何度か攻撃する余裕があったはず。私には多くのスキがあったはずなのだ。
はじめに持った違和感を思い出す。ドラゴンはなぜ街を破壊して、街の住民に攻撃を……
「神様」『なんだい?』
「このドラゴンが今日人間に及ぼした被害は何人?」
『私が見る限り……すなわち合計で、君の友達を含めて三人。うち二人はドラゴンの飛翔時の衝撃による転倒。いずれも軽症だよ』
やはりだ。行動に対して被害人数が少なすぎる。
たまたまなのか? この人が蔓延る街で、偶然にも人的被害が片手で済んだのか?
それはあり得ない。
しかし、ドラゴンが街を破壊したのは事実だ。
グランの像を破壊し、ステラに向かって飛んできた。グランの力を嗅ぎつけて飛んできた。
ならばグランだけがターゲットか? いや、それならば今の状況に説明がつかない。
まさか……
俺は、神様からの拘束が解けると同時に再び超加速……するようなことはせず、ゆっくりと動き始めた。
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