第38−1話 無理言うな、バカ言うぞ
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「メメさん、アルカにしがみついていなさい。アルカ、あとはよろしく」
私は、ドラゴンの方へ歩き出した。当然アルカに止められると考えて、先にアルカとの間に土壁を作っておいてから。
「ステラ様、何をしようとしているんですか」
「問題ないわ。ドラゴンさんと少し『お話』してくるだけですわ」
「お話って、そんな無茶な」
もちろん、止めようとするアルカが全面的に正しい。
怒ったからといって私が特段強くなるかというとそんなことはない。怒りがパワーになるなんて、そんなのはおとぎ話の世界だけだ。……おとぎ話も流石にそんな野蛮な話は作らないですわね。
ともかく、ステラの力だけではどうにもならないのは自明の理なのだ。
だから、私の力が拡張されるフィールドを使うのだ。
「ねえ神様。あなたは時々、私をあなたの宝石の中に招きますわよね。あれ、どうやっていますの?」
『それは逆。君が勝手に神様の世界に干渉しているだけだ。私から招くことはできない。まあ、独り言を話すとするならば、君が入ってこようとした時に私がたまたまセキュリティをちょっと甘くしているというのは偶然の出来事だね。うん、すごい偶然だ』
「ふーん。ではもうひとつ。入るのって私以外でも入れますの?」
『できないよ。私、一応神様、つまりあの部屋は神様の部屋だ。普通に考えて入れるわけないよね。神に等しい神聖な存在か、神への叛逆を本気で考える真なるバカでもない限り』
「逆にいえばそいつらならできますのね?」
『まあ、そいつらなら、私のやる気次第ではできなくはないけども』
神様の部屋。私の宝石の中にあるという、神様のいる仮想的な空間だ。そこならばおそらく……
『っていやいや無理無理、できるけどできないって。確かにドラゴンは神獣で神様との適合率が高いから入りやすいし、君はしょっちゅう入ってくるとはいえ、君が考えている作戦は無謀だよ?』
「あら、鋭いのね」
『このタイミングで聞かれたら流石に分かるよ!』
どうやら、作戦について説明しようとする前に神様は察してくれたらしい。
私はよく、神様の部屋で魔法を練習していた。
なぜなら、あの部屋はおそらく神様の魔力によって作られた架空の部屋だからだ。魔力は潤沢にあるし、ある程度現実離れしたことだってできる。
すなわち、あそこを使えば、私の力を拡張することができるはずだ。
だから、ドラゴンを神様の世界に連れ込む。あの部屋は存在そのものが架空であるとはいえ、あの部屋で強めに叩けば私を恐れて多少は大人しくなると信じたい。
神様がいうには別に理論上無理というわけではないらしい。つまり可能だと言うことだ。
『よし、バカな君のために懇切丁寧に教えてあげるね。どうして無謀かっていうと、私の部屋に入る方法が私への干渉、まあ今回の場合は宝石に触れないといけないからだよ!』
「双方がこの宝石に触れればいいのでしょう? 実体があるのですから別にできないことはありませんわよ」
『よく考えろバカ。ドラゴンがこのペンダントに触れた瞬間じゃないとドラゴンは私の部屋に入れない。かつ、その瞬間に君がこの宝石を持っていないといけない。普通に考えて今にも暴れそうなドラゴンにゼロ距離で近づくなんて無茶だろ』
「なるほど。頑張ればできるじゃありませんの」
『バカいえよ。話聞いてた? マジで死ぬよ?』
「いいからさっさとやれってんですわ。お前がまともに説明してくれなかったのも込みで、私はいま心底イラついてんですわよ。あとバカバカ言うな」
そう、私はイラついていた。
重要な日に限ってやってくる厄災、むやみやたらに暴れ出すドラゴン、絶対的な力があるのにろくに役立たない神様、そして暴れるドラゴンに何もできない不甲斐なさ。バカと言われたのも追加で。
本当に今日は色々と、心の底から腹立たしい。
「じゃあ準備よろしく」
『だから無――』
「よ、ろ、し、く、って言ってんですのよ? 聞いてますか?」
『……はぁ、勝手にしな。死んでも文句言うなよ。ま、思うところはあるし、最善は尽くしてあげるよ』
神様との作戦会議を切り上げて、私の行動を整理する。
私は、今からでも襲いかかってきそうな危険なドラゴンに触れる距離まで近づいて、私が宝石に触れた状態でドラゴンに宝石を接触させれば良い、というわけだ。
なんてことはない。要はまっすぐ進むだけだ。考えなしのノロマでも命が数個あれば足りる。
もちろん、何度生き返ろうと命は一つなのですが。
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