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かつて最強と呼ばれた男は前世の知識と共にTSお嬢様を満喫するようで  作者: 赤木林檎
第1章 幼児編

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第33話 彼と彼女の意外な一面

お読みいただきありがとうございます。

――――――――


「ううん、おはようございます、アルカ……じゃないんですか、はぁカルトラ様ですか……」

「ごめんね、カルトラで」


 目が覚めたら、見知らぬ天井……ではなくしばらく前に見た天井だし、なんならカルトラが邪魔で天井はあんまり見えなかった。


 ここは看護室である。寝ている間にこちらへ運び込まれたのだろう。


「いやー、まさか疲れて急に寝るなんて、ステラちゃんらしくないね」

「なるほど、あなたでしたか」


 聞くところによると、私とアイラを探している最中にアイラを運ぶアルカに出会い、そこでアルカがカルトラに私を託したらしい。


「ってアイラは!?」


 おそらくこの部屋にいるのだろう。急いで探さないと。

 そう考えて急いでベッドから降りる。しかし、体の調子がまったく戻っていないからか、ベッドから降りた勢いのままその場で転けてしまう。くそ、想像以上に私にも疲れが来ているな。


「そんな焦らなくても。軽い熱中症だよ。命に別状があるわけじゃない。ちょっと頭を冷やせば元通り。それよりも君だって倒れるように寝てしまうほど疲れてるんだからゆっくりしときなよ。はい、ジュース飲む?」

「なるほど……あ、ジュースはいただきます」


 軽い熱中症とカルトラはいうが、そんなわけはなかった。私がどうにかしたからよかったものの、あれは間違いなく重度の症状が出ていた。

 アルカが軽い熱中症だと言った? それならカルトラはそう思うかもしれない。おそらく今は軽い熱中症程度のものだろうし。


 私はもらったジュースを飲みながら今の状況理解に努めた。先ほどの言葉と、あまりにも呑気なカルトラ。


「チュー……。なるほど」

「そんなジュース美味しい?」「いやあんまり」


 そうか。アルカが隠してくれたのだ。

 先ほど命の危険があったとアルカが伝えたならば、現状と比べた際に治した誰かの存在が必要になる。そこから私の魔法につながる恐れがある。だから、アイラは熱中症で倒れ、かつ私は疲れて寝ていただけだと、そういうことにしてくれたのか。さすがアルカ。そう考えればカルトラの呑気さも納得できる。


「ちなみにアイラはどこへ?」

「アードコカナーワカラナイナー」

「わからないわけはないでしょう?」


 聞いても無駄そうなので耳を研ぎ澄ませる。すると近くのカーテンの奥からかすかに啜り泣く声が聞こえた。

 おそらくはアイラの声だろう。一人泣いているじゃないか、かわいそうに。


「案外近いところにいるじゃありませんの、そりゃ」

「あ、だからステラちゃん……」


 私は、彼女に挨拶をして、なんなら慰めるべくカーテンを開けた。


 案の定、そこにはきちんとアイラがいた。

 そして、ノルンもいた。

 状況はというと、アイラはえんえんと泣いている。……ノルンの胸元で。私が来たのにも気づいていないらしい。


「うう、私、お姉さんらしく頑張りましたのにぃ」

「よしよし。アイラねーさん、頑張った。本当にいっぱい頑張った、えらいえらい」


 ノルンはというと、左手でアイラの背中をトントンとしている。泣いてもいいんだよ、と言わんばからに。そして、右手ではアイラの頭をぽんぽんとして慰めている。


 ノルンの存在は完全に予想外で、いや予想はできたけれど、あまりにも不意打ちであったため、唖然としてしまった。もちろん、そうやって口をあんぐりさせているとノルンと目が合うわけで。


 ノルンは私を見て、首を右に左に、そして困惑する。急に私が来るものだから少し焦っているように見える。しかし、アイラを慰める手を止めることはない。アイラが私のことを気づかないために頑張っているのだろう。アイラのお姉さんという面子を潰さないために。


 驚いた私と困惑したノルン、それぞれが考えるのをやめて硬直していると、カルトラが私たちの代わりにカーテンを閉めてくれた。


「ステラちゃん、今は君が行くべきではない、アーユーオーケー?」

「……は! ありがとうございます。なんとなく分かりましたわ。まあ、分かりましたけれど……」


 なんだこれ。ノルンが男だ、男っぽいことをしているぞ。結構いいとこあるじゃん、ノルン様。


 そして、アイラはアイラで可愛いところがあるんだな。お姉さんぶるめんどいやつだと思っていた自分が本当に情けない。


「ステラ様、お目覚めですか」

「アルカ、おはよう。すっかり元気になったわ、ありがとう」

「いえ、運んでいただいたのはカルトラ様です。感謝はカルトラ様にお伝えください」

「しかし、私のことを伝えてくれたのはあなたでしょう?」

「まあ、それはそうですね。感謝のお言葉、ありがたくいただきます」


 実際、アルカには非常に感謝しているのだ。アイラの熱射病に気付いたのもアルカだし、指示だって適切だった。そして、私が彼女の体力を根こそぎ奪ったのでおそらくヘロヘロだろうに、アイラをしっかりと運んでくれた。


「では、もう少ししたら帰りましょうか」

「ええ、そうしましょう」

「いつもと違ってやけに従順ですね」

「今日は散々迷惑をかけましたので」


 私はあんなに迷惑をかけたのに、彼女はそれでも色々とやってくれた。本当に、感謝してもしきれない。


「私も少しは反省しましたわ、だから今日は文句は言わないことにしますわ」

「それはよかったです」


 これからは、もう少しいい子にしていよう。彼女のためにも、そして周りのみんなのためにも。


「車を手配しておきますね」

「車はやだ」

「それは文句では?」「やだ」


 でもそれは勘弁してくださいませ。これからいい子にしますから、ほんと。



お読みいただきありがとうございます。


もし面白いと感じてくださいましたら、是非ともブックマーク、そして下にある「☆☆☆☆☆」のところで評価をつけていただけると嬉しいです。


次はおそらく来週の平日です。何曜日がいいんでしょうか。


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