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かつて最強と呼ばれた男は前世の知識と共にTSお嬢様を満喫するようで  作者: 赤木林檎
第1章 幼児編

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第29.5話 ユリス様のある1日

お読みいただきありがとうございます。


番外編、ユリス。

 今日は忌まわしきパーティの日だ。

 今日の俺の任務はふんぞりかえる貴族にペコペコすることであるが、まったくもって鬱陶しい。

 と、いうわけで、朝は絶賛サボっていたのだが……


「おーい、そこに誰かいますの?」


 木の上に隠れていたはずの俺を見破る一人の少女がいた。


 あいつは誰だ? どうしてこんなところに? なぜ俺がいるのが分かる?

 考えられる可能性は一つ、刺客。


 しかし、にしては隙だらけだ。それに本当によくできた変装だ。

 分からねえけど、とりあえずはいつものように拘束からの尋問だろう。

 それじゃ、「『背中の正面(スペスピン)』」


――――――――


 まさか、マジで関係ない少女だったとはいささか驚きである。

 そういえば、聞いた話によると、子どもは大人に比べて幽霊とかお化けとか、そういう見えないものが見えてしまうらしい。

 だから俺もバレたのだろうと納得しておく。


 こいつの名前はステラという。なんだっけか、ラ? キャメル家?? らへんのお嬢様だ。

 よっぽど有名な家というわけでもないので家には興味はない。


 まあ、そうはいってもこいつ自身はおもしれぇ女だ。

 面白いことを挙げたら色々だが、まず何がおもしろいって、四歳児とは思えない話をしやがる。話自体も、話し方もだ。

 次におもしろいのが、俺の脅しに一切怯えないこと。俺が何回脅そうとも、まったく揺るぎなかった。それに慣れきっていたか、実際にされることに一切の怯えがなかったか、あるいはその両方か。あるいはアホか。


 そもそも、四歳児を単独で歩かせていることが問題だ。英才教育か何かは知らねえがやめておいた方がいい。たとえこいつ自身が一人で動きたいと言ったとしてもだ。四歳児なんてまだ右も左もわからねえ年頃だぞ。俺だから脅される程度でよかったけれどもな。……今、脅すのも大概だって言ったやつは全員マッハでぶん殴る。マジで俺じゃなかったら誘拐だって、もっと酷いことだってあり得たんだからな。

 でもなぜだろう。誘拐されても、あいつはなんとかなる気がするんだよな。これは俺の勇者としての勘だ。……浅い勇者暦でなに偉そうぶってんだと言ったやつは過去に勇者になったことがあるやつ以外ぶちのめす。


 こいつの面白い話はざっとまとめるとそんなもんだ。まあつまり、サボり相手としては完璧ってことだな。


――――――――


 まあ、そういうわけで、こいつとのんびりサボっていると、結構時間が経ってしまったわけだ。来た時に外にいた門番がのぼせててもいい頃合いだろう。いつも偉そうな貴族のためにごくろーさん。


 仕方ないから、まあそろそろ行くか。ステラにほんの少し勇気をもらって、準備も整ったからな。


「気をつけろよー」


 会場のドアを開けて、勢いよく飛び出すステラを見送る。あいつ、俺と話して言いたことを無かったことにする予定だな?

 まあ、確かに双方それがいいのかもしれない。勇者と呑気にサボっていた四歳児、一つの地元新聞記事くらいならできそうだ。


 なんて、呑気に考えていると……


 あいつが人にぶつかってこけるのが見えた。正確にそれは見えないが、感覚を研ぎ澄ませることで視えた。


 そしてそれ自体はいいのだが、少し全体的に不自然な行動だ。何か忘れているような……

 あ、隠密魔術切るの忘れてたわ。いっけね。


 しかし、あれほどの付近の人間に対しても効果があるのか。あるいは、他の奴らとまったく関係がなく、はじめから影が薄いステラだからこそこの弊害が大きかったのか。


 このままだと、他の連中に踏んだり蹴ったりされてしまうかもしれないけれど……


「っと、それだけじゃなさそうだ」


 あの鍋、ステラの位置。なかなかめんどくさそうになりそうだ。

 助けてやるっきゃない。


余分な余白(デリトスパッソ)、すっとべ』


 間に合ってくれ。俺がいるこの場所で怪我人が出るのはごめんだ。


――――――――


「本当にすみませんすみませんすみません」


 事故になりそうな一連の問題が終わり、俺は空中に散らばった鍋の中身をしっかり入れ直してから雑用に渡す。その直後、後ろの方からメイドがすごい勢いでやってきてペコペコしだした。


「おいメイド。お前さんの主人がこの小娘か?」

「はい、逃してしまい申し訳ありません」


 まだペコペコしている……さっきの雑用もこんな感じだったな。ペコペコするのが流行りか?


「まあ、なんというか大変だな……」

「はい、言い訳をするのはよくないのですが……こればっかりは、私にはどうにもならなくて……」

「まあ、その、なんだ。手でも繋いでやってくれ。力づくで逃げようとはあんまりしないと思うから」


 怒ってやろうかとも思ったが、聞くだけでこのメイドの心労が伝わってくるので軽く注意するにとどめた。おそらくあの娘がなまじ賢いから厄介なのだろう。変に賢いやつはこの世で一番面倒くさいやつだ。それはどこに行っても、老若男女変わらない。


 周りのヒソヒソとした声が聞こえてくる。まあ、こんな派手に登場したらこうなるよな。仕方ねえ、盛大に声上げとくか。


「遅れての登場申し訳ございません、急用が入り少々立て込んでおりました」


 こういうと、大概ひそひそ声が黄色い歓声に変わっていくのだ。

 こうやって、良いように解釈してくれるのが勇者の特権です。どうせみなさん勇者になれませんので覚えておいてもとくに意味はありません。


「もしかして……」「ありがたやありがたや……」

「ああ、また何か勇者様が何か……」


 いやー、ありがたいありがたい。……。

 ……今晩あたりに適当に犯罪組織一個壊しておこう。時系列以外はあってるさ。



お読みいただきありがとうございます。


次は週末あたりに。


もし面白いと感じてくださいましたら、是非ともブックマーク、そして下にある「☆☆☆☆☆」のところで評価をつけていただけると嬉しいです。

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