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かつて最強と呼ばれた男は前世の知識と共にTSお嬢様を満喫するようで  作者: 赤木林檎
第1章 幼児編

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第29−2話 逃避行は突然に終わり

お読みいただきありがとうございます。


――――――――


「じゃ、そろそろ会場にいくか。要人の顔も思い出したし、心の準備もできた」

「そうですわね。私のお腹も落ち着いてきましたので、行きましょうか」


 空き部屋で遊び倒し、心の準備をしっかりする。もちろん、変に気負う必要はない。


「じゃあ、いくぞ」「ええ」


 ユリスのタイミングに合わせ、私も会場に戻ることにした。

 しかし私はまだメイドから隠れる予定だ。お家帰りが日の入りに間に合うように見つかればどうにかなるはずなので、そのあたりで顔を出すことにする。もうどう足掻いてもしっかり怒られますからね、はい。


 廊下で見つかると色々とややこしそうなので、会場の部屋までは手を繋いで隠密魔法でいく。場所が場所なので、すれ違ったらまあ仕方ないかと思ったが、すれ違うことなく会場までスルスルとやってきた。


「案外するっと来られましたね」

「変だな、まあそんなもんか」

「じゃあこの辺りでお別れしましょうか」

「そだな。また逃げようぜ」


 大きなドアを開けて中に入る。たくさんの人がやっぱり行き来しているから、一気に中に入ってしまえば、もう隠れることは容易だ。


 しかし、この行動は少しまずかった。


「うぎゃ」


 私は、この時に忘れていたのだ。隠密魔法は、持続性があることに。そして、ユリスは、隠密魔法のプロフェッショナルで、今の私はかなり影が薄くなっていることに。


 そのため、そこにいた大人が私に気づかず、思わずぶつかってしまう。私も私で、さっきからユリスに任せっきりで油断していたので、気づけずにぶつかってこけてしまう。

 そして、もう一つ、重要なことを忘れていた。


 そういえばこの会場にはもう一人、ややこしいことに関してプロフェッショナルがいるのだ。


「せっせこせっ」

「あ、レーナさ……レーナ様、ここ見なさって!」


 彼女が今持っているのは、大きな鍋だ。あら、いつの間にお菓子がご飯になっているわね、お菓子休憩は終了ですか……じゃなくて、その鍋、湯気でてますわよね。なんかクツクツ言ってますわよ。

 そのまま私の方に突っ込まれるのは少しまずい。


 なのだが、私のことが見えていない。

 こけている私は、避けることもできない。これは本当にまずい。ワインの比じゃなくまずい!!


「ってステラ様!? あわ、あわわ、アババババ」


 本当に直前になって気づかれる。しかし、変に意識したせいか彼女はしっかりと足をこじらせて、鍋をひっくり返そうとしている。うーん、私の方向ですわね……


 って待って待って、本当に待って! 流石にその熱々のはどうにもなりませんわよ!!本当に本当に!!!

 あの量はどうにもならないって! あの暑さは大怪我必須ですって!


 あーー。もう、だめだ。

 諦めて目を瞑る。





 あれ? あれれ?


 恐る恐る目を開けて、目の前の景色に驚愕した。


 まるで世界が、止まっていた。


「ったくよ、そんな急に飛び出してんじゃねえよ。あぶねえだろ」


 私は、何が起こったのかよくわからず、ただそれを見つめる。

 鍋とその中身は空中に止まったまま、空中に止まっていたのだ。


「子どもらしいこともすんだな、お前。結構可愛いとこあるじゃん」


 ユリスにポンポンと頭を撫でられた。そうか、ユリスが止めてくれたのか。いつの間に横に来たんだ。魔法か身体能力かでここまですっ飛んできてくれたのか。


「あ……ありがとうございます……」

「立てるか?」

「ええ、どうも……」


 ユリスに手を握ってもらい立つ。


 ……キュン


 思わずキュン、とした。


 私は感じたこともない感情にそわそわする。頬が紅に染まるのを感じる。意識すると、さらに紅くなってしまいそうだ。


 落ち着け自分、冷静に。冷静になれ。落ち着け。

 さあ落ち着け、変な気持ちになっているぞ。


 派手にやったものだから、周りがざわついているのがなんとなくわかる。でも、私はそれどころではない。可愛い? ほんと?

 心臓の音が止まらない。死を感じた恐怖のせいだ、きっとそうだ。いや、そうじゃないかもしれない。そんな感じではない。


「あああ! す、すてらちゃん、はっけん!」

「わお、派手にやってんねえ、ステラちゃん」


 流石に目立ってしまい、私はまずノルンとカルトラに見つかってしまう。そんなことより、私は今どんな顔をしている? そう思って自分の頬を抑える。やばい、変な顔をしている。にやついているのか、泣きそうになっているのか、自分にもわからない。


「ステラ様、えらくご機嫌な顔をしていますね?」

「あ……アルカ、久しぶりね……」


 アルカには見られたくなかったが、この距離にアルカがくるまで気づけなかった。相当テンパっているな、私。


「はぁ……えらく、えらくいい顔をしていますが、どうかなさったんですか?」

「そう見えます?」「ええ」


 なるほど、なるほど。

 私は私を俯瞰してみる。そうでもしないと、冷静にもなれない。


「アルカ、私、ちょっと分かりましたわ。キュンってやつ」


 女が男に惚れる時の表現としてキュンとするというものがある。今までよくわからなかったけど、近しい経験をして分かった。


 なっちゃうわ。ついつい、なっちゃうものだわ。


 胸が絞まるような気持ちだわ。頭を撫でられた時に感じた思いだわ。なるほどだわ。はわわわわ……


「なーにマセたこと言っているんですか、子どもにあれはまだ分かりませんよ」

「いやいや、私の顔を見たでしょう? ポッとしてたでしょ」

「変な顔になっていましたね」

「でしょう? 私、分かりましたのよ」

「はいはい、そうですか」


 私はこの日、女の子の気持ちがはじめて、そして本当にすこしだけれど分かったような気がした。


――――――――

お読みいただきありがとうございます。


ステラが男らしい言動をする、ということは多々やってきましたが、こっちははじめてですね。TSの真骨頂と言いますかなんと言いますか。


もし面白いと感じてくださいましたら、是非ともブックマーク、そして下にある「☆☆☆☆☆」のところで評価をつけていただけると嬉しいです。


第29話はもう少しだけあります。

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