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かつて最強と呼ばれた男は前世の知識と共にTSお嬢様を満喫するようで  作者: 赤木林檎
第1章 幼児編

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第27−1話 お菓子とお菓子を食べてお菓子休憩

お読みいただきありがとうございます。

 うっまー、なんですのこれ! この濃厚で甘い内側に対してお外はちょっぴりビターなチョコレートのケーキ、甘さとほろ苦さの絶妙なバランスは至高ですわ。こっちのクッキーも最高ね、サクサクの中にはたっぷり使われたバター、バターが多すぎますわ、こんなの反則です。ただ美味しいもので殴るなんてそんなのセコいですわよ、まあ美味しいからかろうじて許しますがね。


 そばにあるマカロンも美味しいですわ。今まで色が綺麗なだけのお菓子と勘違いしていたのですが、そんなことはなく、きちんとサクサク感とクリーム感がマッチしているではありませんの。こんなサクッと食べられるなんて聞いていませんわ。もう、手が止まりませんもの。


 もちろん、素晴らしいのはお菓子だけではありません。飲み物だって美味しいの。なんだこのオレンジジュースは! 200%オレンジと言われても違和感がないのですわ。濃厚がすぎます。こんなもの飲んでしまっては今まで飲んでいたオレンジジュースの水出しみたいなものが飲めなくなってしまいますわ。ツヤツヤと輝くお酒に手を出したいけど流石にダメですわね、他人に見られたら一大事でございます。さすがの私だって外では自重しますとも、ええ。


 拙い言葉でこの美味しさを伝えようとしているそんな私は見ての通り、ついに、ついにパーティなるものを堪能していた。ここには私を止めるメイドはいない。ここには私の抑止力になりうるアイラもいない。ノルン様はいてもいなくてもとくに変わらない。そして、私を知っている有名人が誰一人としていない。そもそも他人と話しながらこんなに満喫できないし、緊張しながら挨拶なんてしようものなら菓子の味がわからなくなる。箱庭娘でよかったと感じるのはこれがはじめてかもしれない。


 本当に、なんの迷いもなくお菓子を堪能できるのは約十年ぶりと言っても過言ではない。嬉しすぎてやはりお菓子を食べる手が止まらない。


 さて、ありがたいことに周りの人間は話しかけようとしない。そもそも私のことなど蚊帳の外で、正装をした男は女を探しているし女は会話に忙しい、そして雑用とみられる人たちはやはり忙しなさそうだ。レーナには少し悪いことをしてしまったと、今更ながら反省しておこう。


 たくさんのお菓子を食べて飲み物でそれを流す。無限に続けられるのではと思っていたのだが、流石にしばらく堪能すると少し疲れてきて、お菓子以外のことに頭が回り出す。糖分をたっぷり摂取したので頭の回転がグルングルンですわ。

 さてさて、今他の皆さんはどのあたりにいるのでしょうか。


 あたりを見渡し、ついでに感知魔術を用いて人の動きを遠くまで見渡す。見たところ、人を探している動きをしている人は123……かなり多い。多すぎる。これじゃアルカがどれかわからない。

 まさか、アルカが他の人に頼んで、私が本格的に捜索されているのだろうか。しかしそれはあり得ない。現に、先ほどから私の横を通り過ぎる雑用係が私のことを素通りして捜索しているのが窺える。


 うーん、調査してみましょうか、少しお菓子休憩をしたいところでしたので。今回のお菓子休憩はお菓子からの休憩って意味ですわ。

 そうはいうものの、別に高速回転する頭脳を用いて解を導くのではない。いつもよりよく働く頭が導いた最適な動きは、捜索魔術の類の一つ、聴覚操作で耳を立てるということであった。


「『デノイズ、後イヤヒヤ、対称範囲は適当で』。行けるかこれ?」


 図書館にいるときに何度か試し、その時はできていたものの、人間の数、雑音の数が桁違いに多い。この人数でこれをまともに行えるかどうか、やってみないことには分からない。


「……迷子……まだきていな……朝方にはみ……ステラ……怒ってや……この屋敷のどこかには……主役の……これじゃパーテ……」


 近くや遠くから、色々と音が聞こえてくる。案外うまく行ったことに驚きつつ、なんとかそれらを処理して重要そうな単語だけ抜き取る。それらを頭の中で組み合わせることによって状況が掴めてきた。

 ステラを怒ってやろうとするどこぞのメイドについてはともかく、念の為、自分の推理が正しいかどうかを近くを通った雑用係に確かめておく。


「ねえ、そこのあなた、少しいいかしら」

「ヒィ! ワッフルはもう少しお待ちください」


 あら、ワッフルもあるのね。それはいささか楽しみである。


「じゃなくて! このパーティの主役の登場はまだなのかしら」

「すみません、ただいまユリス様については、ご都合あってまだお越しになられていなくて……」

「ゆりす様ってどんな人なの?」

「それはもうかっこいい男なのでございます」

「ふーん、そうなのね、ありがとう。行っていいわ」


 ふむ、やはりか。

 このパーティには大目玉の人間がいる。名前はユリスというらしい。どこかで聞いたことある名前だ。

 その主役がまだ来ていない、と配膳係は言っていたが、おそらくはこの屋敷のどこかにいるけれどもイヤになって絶賛逃亡中なのだろう。わかるよ、その気持ち。自分のためのパーティなんてイヤになるもんね、わかる。


 主役がきたところで、おそらく私には関係がないのは明らかだ。とくに気にすることはない。なのだが、私は今機嫌がすごく良く、捜索魔術をもっと使いたく、そしてお節介を焼きたい気分であった。もとより、食べたお菓子分の体力を使っておきたい気分でもあった。


 そういうわけで、せっかくなのでしれっと一人、その捜索に参加することにした。


――――――――

お読みいただきありがとうございます。


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