第26−2話 この服を着なさい!
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「そもそも、バカでアホならこんなところにおりませんし、身分による差別だって最近は幾分ましですもの。それに、レーナが言っていたドジって事なんだけどね。多分それは、場合によってはメイド活動においてあなたの長所になりうるわよ」
「そんなわけないじゃないですか! この前だって偉い人の前で頭からこけて恥をかきましたし……」
「巷で聞くこの言葉は知っているかしら。『ドジっ子メイド萌え』」
「?」「!?」
レーナはあまりパッとしていないものの、アルカはその単語を聞いてぴんとした顔をする。勘のいいアルカにはわかってもらえたのかもしれない。
レーナのようなメイドを一部の商人貴族らはドジっ子メイドというらしい。そして、可愛げのある特性として捉えられるのだ。あの頻度のドジはレーナにしかできない代物だし、美形でスタイルも良い彼女はそのような嗜好とも相性がいいに違いない。
私は二人にそのような商人や貴族を探して、ドジすらも長所に変えてしまおうという私の作戦を伝えた。
「そんな……人が??」
「世の中って案外広いのよ。まあ四歳の私がいうことでもありませんが」
「……決めました。私、目指してみます。その『ドジっ子メイド』なる存在を!」
「私は応援していますわ。だから服を脱ぎなさい」
「はい! 脱ぎます!」
「脱ぐな」「もちろんアルカも脱ぐのよ。一人だけに脱がせるつもり?」
「いやですよ、恥ずかしい」
「いいや脱ぎなさい。じゃなきゃ破るわよ」
「ちょ、イヤ待って、脱ぎます、脱ぎますから待って引っ張っちゃダメ、ヒャン」
そうしてステラは大人の女性二人の服を脱がせることになった。これじゃ私が変態じゃん。
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「おおおー、私が……メイドに!!」
「あら、なかなかいいじゃありませんの」
鏡を見たレーナは喜びのあまり思わず叫んでいた。実際、メイドの服を着たレーナは思ったよりもキマってみえた。スタイルの良さも相俟ってか、レーナのメイドの服に対してまったくと言っていいほど違和感がない。
そして、そんなレーナの横で珍しくレーナのごとくアワアワしているのはアルカである。
「裾を引っかけちゃダメですよ、絶対転けますよ。破られたら私の帰りの服がありませんからね、本当にやめてくださいね、マジですからね」
「にしてもアルカは似合いませんわね」
「失礼ですね。似合っていますでしょう」
「まあ多少は? と言っても、いつも同じ服しか見たことがありませんので、なんというか私にとっては違和感しかありませんのよ」
そう伝えると、アルカは拗ねたのかそっぽを向いてしまう。今日のアルカは吹っ切れたのか表情をコロコロと変える。いつもこれくらい可愛げがありましたらいいのに。
「いいましたね。今度ステラ様にも私服を見せてあげます。似合っていると絶対言わせますから」
「ええ、期待しているわ」
そんな日が訪れることは、あなたと私の関係上そうそうないと思うが、面白そうなので少し期待しておこう。
「じゃあレーナ、早速メイドですわ」
「はい! では……『おかえりな』ィイッッタアイ」
お辞儀をしながら話すものだから、早速しっかりと舌を噛み、そのままふらつく。おお、これがドジっ子メイドというものか……うーん、えい。
レーナの後方の安全を確認してから少し押してみる。
「どぎゃあー」
レーナは、まさに喜劇のように転けて見せた。ごめんなさいね、アルカそんな怖い顔しないで……うーん。
「もう少しかわいい声をあげてはどうかしら?」
「そんなこと言われましても……」
そんな喜劇みたいな転け方する人、そうそうおりませんわよ。もっとも、この転け方に需要がある可能性もあると思うのだが、私にはまったくわからないし、多分相当レアものだと思う。やっぱり、かわいい声を出す方が世間一般的にいいのではないだろうか。
「なんというか、アルカみたいに?」
「うう、精進します……」「私みたいに!?」
それから、しばらくメイドポーズを堪能させた。アルカは恥ずかしがりながらも、しっかりとメイドのイロハ、そしてかわいい声を教えていた。うわー恥ずかしそう……
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「いいんじゃないですか。案外見込みありますよ、レーナさん。メイドらしいっちゃらしいです」
「アルカがいうなら間違いないわ。この路線、行けるわよ」
「そんなそんな恐縮ですぅ」
さて、ではではレーナとアルカも仲が良くなってきたので、私の奇策に移るとしよう。
実は、先ほどまでのレーナへの人生アドバイスは奇策の副産物として生まれたものなのである。ついつい駆け出しドジっ子メイドと先輩かわ声メイドを楽しんでしまったが、これはあくまで作戦の一部であって、本題ではない。
もっとも重要だったのは、服を入れ替えさせたこと。これがうまく行った時点で私の作戦は成功していたのだ。
「じゃあ、アルカとレーナはもうしばらくここで楽しんでおいてください。私はしばらく一人でパーティを楽しみますわね」
そういいつつ、了承を得ることなく私はドアを開けて外に出る。二人はまだ立ち尽くしているようだ。
「ほ? どういうことですか? ステラ様」
「……しまったはめられた!」
相変わらず勘の良いアルカが気づいたようだがもう遅い。今、彼女たちの服は入れ替わっており、そのまま会場に入るとパニックを起こしかねない。普段から鍛えている私の方が彼女らより足が速いから、先に部屋から抜け出してしまえばアルカがこちらに追いつくこともできない。そうなると、着替え直すしかなくなる。少なく見積もって10分の時間は稼げることになる。それだけあればバレないように逃げ切るなんて容易い。
かくして、子どもたち、そしてアルカ、いずれもの切り離しに成功し、私はこれから一人楽しくパーティを楽しむことにした。
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