第16話 悩む時間はありませぬ
お読みいただきありがとうございます。
先日、ホットサンドメーカーを使いました。あれはすごい!
「ええっと、ううんと……ところでカルトラ様、本当に稽古とかされるんですね」
ミラがたいそう御立腹なため、カルトラに話を無理やり回す。
「まあ、どちらかというと僕、そちらの方がメインだからね。教養とかはあんまりないけど、そっちの腕っぷしだけで執事やらせてもらっているところが大きいんだよね」
「なるほど。そんなことで採用されることもあるんですね」
ミラが反応を示すのは予想外だ。どうやらメイドと執事、似た仕事同士として意外にもミラがカルトラの話題に興味があるようである。
「ええ、そうなんです、はい。最近特に兵士とか勇者とかに力を入れているそうなので。それで、四歳の終わりごろからノルン様は勉強に熱心なわけで、それで特にやることのない僕はノルン様の勉強時間は暇なんですよね。まあ今みたいに。まあ、アルカちゃんみたいに」
「なるほど。だから、あなたは、ここに暇をつぶしに来ているのですね、あなたは。てっきり解雇されたのかと思っていましたよ」「ひどいなあ」
カルトラの話に私は首をかしげた。兵士としての腕をあげることと五歳から活発な勉強をすることになんの関係があるのだろうか。
「もしかしてあの学校への進学を考えておいでですか」
「さすがミラさん。そういうことです。エリート兵士、それを超えた勇者を育成する私立メリダ傭兵育成学校附属小学校、まあつまりメリダ家が作った兵士養成の学校の附属小学校への進学を考えておりまして。知っての通り、数年前くらいにできたばっかりのところなんですけどね」
しかし、カルトラとミラの話を聞いて、やっとすんなりと理解した。メリダ家の作った傭兵のためのエリート名門校の附属校への進学のための勉強というわけか。
それはそうとメリダ家が学校を作っていたということには流石に驚いた。まあどうせグランの功績をうまく利用して作ったのだろうけれど。グランの名前を良い感じに使われたわけであり、俺としては少しムッとくるが、今更私が、というよりステラとして怒るようなことではない。
まあ実際、小学校からきちんと強くなるための教育がなされるのは非常にいいことでもある。勇者という飛び抜けた性質のやつを数人作るより、教育による全体の底上げによって強い兵士をたくさん作る方がいいに決まっているしね。
「ステラちゃんは小学校どうするの?」
グランのことを考えているところで突然ステラのことをカルトラに聞かれて我に帰る。私、すなわちステラはこれからどうしようか。少し悩んで――
「ステラ様は私立ルイス学院附属小学校ですよ?」
「そんな話聞いておりませんわ」
悩む必要はなかった。正確にいうと、悩むような自由はなかった。
――――――――
「お母様から聞いておりませんか?」
「ええ、何も聞いておりませんわね」
食べ終わったプリンは片付けて二杯目のオレンジジュースをいただきつつ、ミラに問う。
私が悩む前にミラからの回答が告げられて流石に驚いたのだが、どうやらミラも驚いているようだ。
「はあ、一応聞いておこうと相談しておりましたのに……」
聞くところによると、今後の人生の重要な選択なのでステラとお母様とでちゃんと相談して決めるように言ったはずが、お母様が独断で決めていたということらしい。
全くもって理不尽な話だ。
「ちなみにそれはどういう学校でして?」
「この地域の中では最も優れている学校です。学力に優れているだけでなく、かつて貴族教育の機関として創立されたこともあり、今時では珍しく由緒正しい文化がきちんと残っている学校です。きちんと人としての振る舞いも正しく学ぶことができるため、今後のことを考えた場合、うってつけの学校かと」
「なるほど……」
なんだかお堅い雰囲気の言葉がずらずらと並べられて、私は思わずしかめっ面をしてしまっていた。
「……もしかして嫌だったりしますか?」
「できればお断りですわね」
お嬢様といえども、小学生くらいは自由奔放にしたいものである。
されど、そんなことで駄々をこねるほど子どもではない。
「まあでも、ミラが勧めてくれているところなのでしょう? 少しは考えてみますわ」
「ありがとうございます」
ここで私が駄々をこねてもミラが困り果てるだけだろうし、ひとまずここは同意しておくしかない。小学校を独断で決める親というのも特段おかしくはないし。一応、文句はこれからつらつらとお母様に述べてやろう。聞いてくれるかどうかは別として。
ミラがほっとしたような顔を浮かべるのをみて私もほっとした。
「あはは、勝手に決められちゃったんだね」
「笑い事ではありませんわよ」
そうはいっても他人事だと思って笑うカルトラには苛立ちを覚えますわね。
「でも良いんじゃない? 良い学校だよ、あそこ。めっちゃ綺麗ですし」
「まあそうでしょうね、説明を聞いているだけでもなんとなく想像できますわ」
呑気なこと言いやがって。完全に他人だけど八つ当たりしてやろうか。
「あ、そうだ。確かもうすぐ学校説明会があるんだけど、ちょうど良いから行ってきたら?」
前言撤回、カルトラは相変わらず良い情報を持ってくるなー。
要領の良さ故だろうか。いや、もはやそんなレベルを超えている気がする。悪用したらこの辺一帯は牛耳れそう。
「そういえばそうですね。ステラ様がよろしければ説明会に行きましょうか」
「まあ、見にいくのは良いですわね。それで、日にちはいつでして?」
私が本当にその学校に行くかどうか、それはともかくとして、私はひとまずそのルイス学院とやらの見学に行くことにした。
お読みいただきありがとうございます。
今まで四話ごとに一区切りでしたが、今回はもう少し長め。




