第14話 間違った歴史 誤った言葉遣い
お読みいただきありがとうございます。
年を重ねました。
あ、ストーリーの話です。
「ただいまー」
存在しない夢を見た。一人の青年が家に帰ってくる、そんな夢。
「おかえり、兄さん。何ヶ月ぶりだっけ?また今回は長旅だったね」
服や体は綺麗に整えられている。当然、帰り際にギルドで整えてきたのだろう。しかし、見るからに顔や動きに疲れが見える。当然だろう、人外との戦いをしてきたのだから。
「ああ、ちょっと今までとは次元が違うやつだったからな」
「その話、もっと聞かせてよ」
この弟は、兄を慕っているようだ。兄の帰りをとても喜んでいる。
「後でゆっくり聞かせてやる。とりあえず――
――――――
「で、今までの話聞いていましたか」
「むにゃむにゃー、ハッッ! ごきげんよう、もちろん寝ていましたわよ」
「開き直らないでください」
すやすやと寝ていたのにミラに起こされた。全くもって気に入らない。もっとも、ミラに一対一で勉強を教えてもらっている時に寝ている方に問題があるのだと言われたら否定のしようもないのだが。
「はあ、どういう話か覚えていますか」
「覚えていますわよ、この国のエーユー、グランの話でしょ」
「グラン様ですよ。全く、メリダ家との仲のためにも絶対にこの方については詳しく知っておいてください。いいですか、……」
今は、この国の英雄グランの話をしている。すなわち前世の俺。だから当時っぽい姿形の夢を見たわけだけど、もう少し夢を見させておくれよ。
ステラになって四歳と少したった。
四歳になってからはお嬢様らしく英才指導が一気に増えている。それに対していつもは真面目なステラであるが、流石に今日に関しては勘弁してほしい。自分のいいところばかりを長々話されるのは少々むず痒く、聞けたものではない。それに、自分のことなので当然知っている事ばかりである。
そういうわけで本日のミラの話は右から左へと流している最中である。
「……もしこの戦争にグラン様がいなかった場合、私たちの国の戦死者は5000000にも登ったと…………」
はあ、この話、何回訂正しなきゃならないんだ。何回も言ったけどグランがいなくても確実にそこまでの被害者は出てないんだってば。ことある場所でそういわれて、その度に修正して回っていたし、情報屋どもにも修正しろって言ってたのに結局何にも直らなかったのかよ。
よくよく聞いていると、他にも所々間違っていることがたくさんあって煩わしい。何が幼児時代から魔法が使えただ。そんなこと知られてたら一周回って国に暗殺されちゃうよ!
私、将来は文化学者にでもなって歴史の修正に勤しんでやろうか。主にグランの。
「……だから聞いていますか」
「聞いていますわ。グランが危険なドラゴンを倒した話でしょ?」
「いや、その話はまだしていませんけど」
おっとしまったフライング。当然ミラは左から右に受け流すはずもないので、ひとまず適当に誤魔化すことにしよう。
「……という話を本で読んだ気がしますわ」
「そうですか。本をよく読むことはいい事です。でも本に影響されて悪いことをしたり悪い言葉を使うようになったりしたらダメですよ。あと話はちゃんと聞くこと」
「もちろんですわ」
まあ知ってはいたけれど、普段本を熱心に読んでいる(フリをしている)ので、簡単に誤魔化せた。
実を言うと、このへんは自身のことである以上に『子どもでも読める偉人シリーズ』を通して本当に読んでいる。図書館で会う同い年の女の子がこのシリーズにハマっていておすすめするから仕方なく、本当にしかたなーく読んでいる。恥ずかしいのでアルカやミラには隠して借りて読むことにしている。ベッドの下に隠しているのだから多分バレていない。
三歳の半ばから行き始め、半年近く隔週ごとくらいの頻度で通っている図書館ではあるのだが車酔いにはまだまだ慣れていない。もちろん多少はマシになったのだが、行くたび不機嫌な顔つきをしているので、メメにはどうやらステラはいつも不機嫌という印象で覚えられているらしい。なかなかの不条理である。
「そう、体調がすぐれない時であっても、どんな時にも礼儀正しく、お嬢様らしく。お行儀の悪い人間になってはいけないのです」
ああ、そういえば。
不条理であったり、不満であったりすることがもう一つある。いつも大体この時間。私が勉強でイライラしているタイミングでやってくるあいつだ。
コンコンコン、部屋のノックが叩かれた。そうそう、いつものタイミング。ミラも半ば諦めつつ部屋への入室を許可した。
「へい、ステラちゃん! 調子はどうだい!?」
そう、この時間になるとなぜか暇を持て余していそうなメリダ家の執事、カルトラがやってくるのである。
「……特にあんな人になってはいけませんよ」
「ええ、もちろんですわ」
お読みいただきありがとうございます。
さくさく年を越えましょうぜ




