第1話 そして男が死んで女が目を覚ます
ご興味を持っていただきありがとうございます。
お嬢様らしく、そして最強らしく、TS転生した主人公がお嬢様を目指してはちゃめちゃに生きる、そんなお話です。
とはいいますが、今回は初回なので完全に男ですし、死んだ直後 (というか殺された直後) でおとなしめです。
第一話なので少し文字が多めです。普段は一話2000文字程度を目安に書いております。
それではどうぞ。
輝く世界に俺はいた。
夜も深く、真っ暗なはずの世界は、神秘的な力のせいか、明るく輝いてみえた。
ふと上空を見た。
そこには、先ほどまで立っていた地面が映っていた。
ならばと思い足元を見た。
そこには何もなく、輝く星々と真っ暗な夜空が広がっていた。
俺はどうしてここにいるのか。どうやってここに立っているのか。それはわからない。ただ一つ、確かなことがあった。
ここは俺の現世ではない、ということだ。
「お目覚めだね? 勇者くん」
正面から声が聞こえて顔を上げた。
「あなたは……あぁ、なるほど」
そこには一人の女性が立っていた。正確にはそれは女ではなく、そもそも一人という表現もまた誤っているのだが。
「俺は死んだんですね」
そう、さかのぼること数刻前。
俺、『グラン』は神様に剣を向けて、死んでしまった。
「そゆこと」
そして目の前に存在するのが、先ほど俺が剣を向けた相手、つまり、『神様』だ。
「それで、何ですか? 神の審判であれば、地獄行きの切符を下されば――」
「そう生き急ぐなよ。せっかくの機会だからゆっくり話そうじゃないか……といってもここは少し寂しいな……よっと」
パンッ。
神様が勢いよく手を叩くと、途端に足元に草原が広がり、さらに机と二つの椅子、そして一式のティーセットが現れた。
「立ち話もなんだ、転換ついでにお茶でもしようじゃないか」
――――――――
推定深夜三時のティータイム。会場は天国か地獄にて。
俺は、神様の生成した紅茶と菓子を頂きつつ、神様と人生を振り返った。
「なかなか濃い人生だったね」
「はい、色々ありました」
かつて俺、『グラン』はメリダ家に生まれた。
家柄上魔法の才能は乏しく、これといって優れた体格を持ち合わせず、そして不器用で。
自分の才能の無さにすら気づけず、バカみたいに練習して、その甲斐もあって勇者養成学校に入り、そこから任務や傭兵をした。用心棒をやったりもした。色々なものを失いながら進み続け、気がつけば世界有数の勇者になっていた。
それからも修行を続け、任務をこなすうちに、俺はある二つ名で呼ばれるようになった。
そう、『最強』だ。
「といっても『最強』はただのあだ名で、俺より強い奴なんてたくさんいたんですけどね」
「『最強』に相応しいのは君だと、神様は思ってるよ。ま、『最強』だったからこそ、神様を殺すなんて無茶な任務が来ちゃったんだけどね!」
そして、ついに俺は『最強』にふさわしい任務の一つとして、神を殺すという最後の任務に赴いた。
まぁ……結果はこのありさま、見事なまでの返り討ちだ。
「ま、気にするなよ。人間誰しも、人生で一度や二度は神様を恨みたくなる時はあるもんだ。でも、そうだね……本気で神様に一泡吹かせるつもりなら、魔剣ナギを使えばよかったのに」
「ナギ? あんな出来損ないの骨頂品に何ができるんですか?」
「甘いね人間、あれは神殺し専用だよ。神性のあるもの以外はろくに切れないことを代償に、神性のあるものはガチでよく切れる」
「そんなピーキー性能わかるわけあるか!」
あまりの切れ味の悪さに『鈍器』として評判だったナギにそんな力があったとは……人生長く生きてみるもんだな、別に長くなかったし何なら普通に死んでるけど。
「おっと、つい意味もなく弱点を話してしまった」
「いいですよ。どうせ後の祭りですし」
「いや、そうもいかない。今後、遠い未来で君が神討伐に来たらどうするつもりさ」
「? 未来も何も、俺には明日すらありませんよ?」
「あー、そうだね。じゃあ本題に入ろうか」
そういってから、神様は席にしっかり腰掛けなおし、こちらをまっすぐ見つめてきた。
何がオッケーなのか、さっぱりわからないが、どうやら話があるらしい。俺は神様の言葉に耳を傾けた。
「君の今後の話がしたい」
「いやだから、今後も何も――」
再び支離滅裂な神様の言葉。俺の人生はここで終わっているのに。そう思い、反射的に否定しようと――
「今の知識を持ったまま転生する気はない?」
「は?」
――――――――
神様の話はこうだ。
本来、神様は人間世界に不干渉だ。だから本来は転生なんてまず不可能である。
だが今回のケースは、人間が神に干渉してきてしまった。それ故に『干渉への応答』という名目で、本来できない干渉、すなわち記憶を保持したままの転生が可能である。
「それで神様にとってのメリットはあるんですか?」
「あるよ、めちゃくちゃ」
「教えていただけますか?」
「ずばり……これほど面白い娯楽はない! ってことだ」
「えっと……要するに、俺を使って遊ぼうとしている?」
「人聞きが悪いなぁ。あ、神聞きか?」
「知らんわ」
どっちでも良いんだよそんなこと。
「やっぱり話を聞くだけ無駄でした。それでは」
「待ってくれよー。そもそも君にだってメリットのある話だからいいじゃないか!」
「? 俺にメリットなんてありますか?」
「ふむ……そうだなぁ」
そういってから。神様は考えるそぶりをみせた。そしてお菓子をぼりぼりと食べ、少し経ってから口を開いた。
「そうだね、いったん話を変えよう」
「ほら、やっぱりないじゃないですか」
俺は神様の話を聞くのをやめるべく席を立とうとして――
「君は何になりたい?」
「何に……」
もう耳を貸す気はなかったのだが、そう聞かれて思わず反射的に考えてしまった。
何かに生まれ変われるとしたら、俺は何になりたいだろうか。
もし別の何かに生まれることができるのならば。
俺はどうしたいのか。何がしたかったのか。
考えを巡らせるため、紅茶を一口飲んで。
その瞬間に、ふと頭によぎった。
「『お嬢様』」
自分でもよくわからない。しかし、多分これは俺の本心だと、何となく腑に落ちた。
「いいのかい? 君の知識をもって生まれ変われば、すぐにでも強くなれる。それこそ最強になれるのに」
「それは別に……そもそも俺、最強には興味はありませんし」
最強。
それは、多くの魔物を殺し、ドラゴンを撃退し、時には人間すら殺し、切れるものは何でも切って、気がついたら皆に呼ばれるようになった俗称だ。もう欲しいとは思えない。
「それじゃあ逆に、どうしてお嬢様に転生がしたいんだい?」
「そうですね……多分、守る人じゃなくて、守られる人になりたいんだと思います。前世とは逆の人生を歩みたいんです」
「ふーん、そっか」
神様はすんなりと納得してくれた。というより、そこまで理由にはこだわっていないのだろう。
「……よし、これにて手続きは完了だね!」
「いや別にする気は……というかハメましたね?」
「神聞きが悪い。神様は君の思いを聞いただけだ」
「じゃあ降ります」
「この流れで断るのはなくない!?」
「やっぱ詐欺じゃないですか!」
「あーもう、なら詐欺でいいよ!」
「良くありませんよ!?」
「ってか頼むよー。君だけが頼りなんだ、一生に一度のお願いだよー!」
「神様の一生は流石に荷が重いんですが」
「いや違うよ。君の一生ね」
「それは使い得すぎませんか!?」
どうやら、一生のお願いの終末バーゲンセールが開催中らしい。んなわけあるか。
「でも、これはまたとないチャンスだろう? それも一生に一度のね」
「……それはたしかに」
ただ客観的に考えたときに、これは悪い話ではない、というのは確かだった。
「どう? する? しない? するよね? やってくれるよね!?」
「……………………まぁ、いいですよ。転生しても」
結局、俺はなし崩し的に了解することになった。
「ありがとう、そういってくれると思ったよ! それじゃ、準備準備っと」
神様はそういってから席を立ち、早速この周り一帯を覆うほどの超巨大魔術を展開した。
「せっかくだ、何でもサービスしてあげるよ。何か要望はあるかい?」
「要望ですか。そうですね……」
要望と言われると、そうだなぁ。
少し考えてから、一つ思いついたことを提案してみた。
「では、転生先をラメル家にしてくださいませんか?」
「ラメル家? あぁ、君のかつての家、メリダ家に隣接するところか」
ラメル家は、かつての俺の家であるメリダ家と隣接する貴族の家だ。
俺が家から離れて生まれ変わるまでの間で、家や近隣の構造がガラっと変わることはないだろうから、きっと色々とやりやすいはずだ。
「じゃあそうするよ。次の子どもとなると……お、都合がいい。ではちゃっかりこさえましてっと」
どうやら準備は進んでいるらしい。とくに俺がすることもないのでもう少しティータイムをすることにして――
「腹ごしらえは済んだかい?」
「……ってもう?」
「もちろん」
「ちょっとま――」
パチンッ
俺が言い切るより早く、神様が指を鳴らし、途端に体が宙に浮きはじめた。
「急すぎませんか!」
「善は急げっていうからね!」
どうやら、早速転生の時間らしい。せめてもの思いで飲みかけの紅茶を一気に飲み干した。来世でも美味しい紅茶が飲みたいところ。
「君には期待しているよ」
「はぁ……あなたの娯楽のために転生するわけじゃないですからねー!」
どんどん離れていく神様に向かってそう叫ぶ。俺の体は、いや魂は、どんどんと地面へと近づいていく。
そして、ついに神様が見えなくなろうとした時に神様は言い放った。
「今度の人生、満喫しなよ!!」
その言葉に返事しようとしたその瞬間、閃光があたりを照らし、俺は思わず目を閉じた。
――――――――
体が落ちていく――
意識も記憶もだんだんと落ちていき――
――――――――
意識が途絶える最中――――
上も下も手も足も、何もかも入れ替わる感触――――
そして――――
――――――――
再び目を開けると、たくさんの人がいて、その中の一人の女が赤子を抱えているのだった。
第一話 お読みいただきありがとうございます。少しでも気になった方は、ぜひブックマークしていただけると幸いです。
今後、主人公には、かつて最強だったと呼ぶにふさわしい行動をさせるので、その点についてはご安心して読んでいただければと思います。
楽しく会話させながら話を進めていけたらなー、と思っております。
今はおとなしい主人公ですが、今後暴れお嬢様になっていきます。理性は保たせます。
投稿間隔が少し不安定ですが、しばらくは筆を止めず書く予定ですのでご安心ください。
もし面白いと感じてくださいましたら、是非ともブックマーク、そして下にある「☆☆☆☆☆」をクリックして応援していただけると嬉しいです。感想も是非。いいねもくれると嬉しいです。
それでは次話もどうぞ。




