表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/220

第59話 超イケメンの親友が、俺の幼馴染のことを好きと言ってきたのだが、俺は一体どうすればいいのだろうか

 本日の体育はサッカーであった。

 同じチームになった俺と純は、校庭脇にある石段に腰を下ろして、先行の練習試合が終わるのを待っていた。


 純が口を開いたのは、爽やかな初夏の風が頬をかすめて、俺に眠気を運んできた、ちょうどそんな時であった。


「なあ京矢、ちょっと相談があるんだけど、いいか?」


「相談? お、おう。何?」


 純の様子がいつにも増して真剣だったので、俺は思わず身構えてしまう。


「実は俺、今気になる子がいるんだよ」


「気になる子? それって好きな人ができたってことか?」


 純が首肯する。


「マジか!? で、相手は一体誰なんだ? まさか同じクラスの伊万里さんか? よく話してるところ見るし」


「いや、違う」


「あ、じゃあ上田しおんだろ。あのハーフで赤毛の。あの子どちらかといえばひかえめだし、確か前、そういう子が好みだって言ってたよな」


「いや、それも違う」


「じゃあ誰だよ? 俺の知らない子か?」


「いや、京矢がよく知っている子だ」


 俺がよく知っている子? まさか――


「識さんか?」


「小笠原さんだ」


 …………。


 一瞬、頭の中が真っ白になった……気がした。


「一華?」


「そう、小笠原一華さんだ」


「冗談だろ? 純だったらもっと可愛い子ゲットできるぜ?」


「本気で言ってんのか?」


 真顔で俺を見る。


「小笠原さんより可愛い子なんて、そういないぞ」


「で、でもあれだ。あいつぼっちだし、コミュ症だし、ゲームばっかだし、付き合っても面白くないっていうか」


「京矢」


 名前を呼び、俺を遮る。


「話を逸らさないでくれ。俺は小笠原さんのことが気になっているんだ。どう思う?」


「どうって……」


 …………。


「いいんじゃないか? 恋愛は、自由だし」


「ありがとう。そう言ってくれると思っていたよ」


「お、おう」


 顔を落として、地面に落ちていた小石をもてあそぶ。


「相談は、以上か?」


「いや、ここからが本題なんだが……」


 純は俺から目を逸らすと、一度こほんと咳をした。

 そして試合の行われている校庭の方へと視線を移すと、意を決したように言った。


「京矢に、俺と小笠原さんの仲を取り持ってほしいんだ」


「取り持つ? 要は協力してくれってことか?」


「ああ」


 頷くと、純は続ける。


「入学して、同じクラスになってから、ちょくちょく話しかけてはいるんだが、なかなか心を開いてくれなくてな。正直、ほとんど会話もしてくれない」


「そうか? 最近は挨拶ぐらいは返してくれるようになったんじゃあないか?」


「それぐらいだ。俺はもっと深い仲になりたいんだ」


 挨拶を返してくれるようになったってのでも、結構驚異的な進歩だと思うけどな――とは言わないでおこう。

 言っても仕方ないし、なにより純が求める言葉とは違うから。


 では純は俺に何を求めているのか?


 おそらくそれは、こういうこと……。


「つまり、一華とお近づきになれる場を、セッティングしてくれってことか?」


「そうしてくれると、ありがたい」


「一緒に遊びにいくとか、そんな感じか?」


「そんな感じだ。お願いできるか?」


 う、うーん……。


 俺は返事を保留にした。

 すぐに答えを出すべきではないと、そう思ったから。

 とりあえずは皆に、つまりは生徒会のメンバーに相談した方がいいと、そう思ったから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ