第44話 俺の幼馴染に恋するゲス野郎を、完全に、絶対的に、徹底的に萎えさせる、圧倒的な方法
二日後の金曜日。
放課後のたまり場になった生徒会室にて、またもや一華が相談をもちかけてきた。
「何だよ? またオフ会か? さすがの一華ももうこりただろ?」
「……………」
深刻そうな顔でうつむくと、一華は弱々しい声で言った。
「きょうや~……どうしよう?」
「え? ほんとにどうした? 一体何があった?」
尋常ではない様子に、識さんと一之瀬さんも顔を上げる。
「実は、この前のオフ会のメンバーから、頻繁に連絡がきてて」
「この前のオフ会のメンバー? まさか隣に座っていた、あのチャラそうなやつか?」
頷くと、一華は手に持っていたスマホを差し出して、俺たちに男とのやり取りを見せた。
一方的に連続投稿されるメッセージ。
よく見れば明らかにデートへの誘いなんかもあったりする。
これは完全にあれだ。
一華のことを狙う、すけこまし行為だ。
想定していた最悪の事態が、目前に迫っていた。
「いや、もうこれは無視っしょ。小笠原さんには残念だと思うけど、ゲームのアカウント? みたいのも、変えた方がいいよ」
識さんの発言に、すかさず一之瀬さんが警鐘を鳴らす。
「いえ、それはよくないわ」
「何が?」
「だって相手は一華さんの容姿、学校まで分かっているじゃない。不用意に相手を刺激すると、一線を越えて実際に会いにくるってことも考えられるわ」
確かに。
場合によっては刃傷事件とか……。
昨今、ニュースなどでたまに耳にする事例であるが故に、あながち極論とも言えないはずだ。
「きょ、京矢……。私、怖い」
「一華……」
とはいえ、自己責任とまでは言えない。
相談を受けて、背中を押した俺たちにも原因があるのだから。
だったら、なんとかしてあげるしかないでしょ。
「一華、一つ確認するけど、いいか?」
「う、うん」
「オフ会の日、もしかして一華は一言も言葉を発していないんじゃあないか? 少なくとも俺が席に着いてからは、一華が話したって記憶はないけど」
「多分……話してないと思う。私、すごく緊張していたから」
オッケー。
それだけで十分に条件を満たしている。
顔を上げると、俺は笑みを浮かべて言った。
悪魔のような、気味の悪い笑みを浮かべて。
「一華、全て俺に任せろ。今回の件、まるっと解決しちゃう、とっておきの方法があるんだ」
「とっておきの方法って、何なん?」
俺の表情に、若干引き気味の識さんが聞く。
「それはな……」
窓際へとゆき、カーテンをしゃっと開ける。
そして肩越しに皆を見ると、俺は意味深長な表現でこう答えた。
「男を完全に、絶対的に、徹底的に萎えさせる、圧倒的な方法だよ」




