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第42話 陰キャでボッチな俺の幼馴染が、ゲームのオフ会にいくと言い出したんだけど、本当に大丈夫なのだろうか

「オフ会? 何の?」


「この前買ったゲーム、ドラペのオフ会。フレンド登録してる『なっつん』さんって人がいるんだけど、その人に誘われて。なっつんさん凄い優しいし、いつも仲よくしてくれるし、会ってみたいなって。場所は、若い人もいるからってことで、ファミレス」


 うーんと腕を組むと、俺は難しい顔をする。


「でもそういうのって、大丈夫なのか? なんて言うか、怪しい男とかくるんじゃあないのか?」


「なっつんさんは女の子っぽいけど……。やっぱりやめた方がいい?」


「京矢、ちょっとちょっと」


 識さんが一華に背を向けるようにして顔を寄せる。


 いつもの内緒話かと思った俺は、同じような姿勢で耳をそばだてる。


「これってチャンスじゃん? ていうか物凄い成長っしょ。あの奥手の小笠原さんが、自分からそういう場に飛び込もうって言ってるんだから」


「まあ、確かに?」


「多分分岐点なんだよ。これが成功すれば、必ず次につながる。小さな成功は、小笠原さんの自信になる。だったら、応援するしかないじゃん?」


「うん……そうだな。識さんの言う通りだ」


「決まりだね」と言うと、識さんは俺の背中を軽くはたき、一華へと向き直った。


「小笠原さん自身は、どちらかといえばいきたいんだよね?」


 識さんの質問に、一華はこくりと頷いて答える。


「うん、いきたい。リアルにゲーム友達いないから、大好きなドラペで……話してみたい」


「だったらいくしかないっしょ。私は応援するよ」


「し、識さん……」


「相談はこれで終わりかしら? い、いいい、一華」


 先ほどのショックから立ち直り、席に着いた一之瀬さんが、勇気を出して呼び捨てで聞いた。


「…………」


「相談は、もういいのか?」


 一華が一之瀬さんを無視したので、仕方なく俺が聞き直す。


「ううん、まだ。ここからが本題」


「ほ、本題って、何かしら?」


 負けじと、一之瀬さんが聞く。


「…………」


 もうやめたげて! 皆の前でスカートを下ろされて嫌いになるのは分かるけど、さすがに見ていられない! ほら一之瀬さんひっくひっくってべそかき始めちゃったよ!


「で、本題って何なん?」


「ほ、本題は……」


 ちらちらと、識さんへと視線を送ると、一華は意を決したように口を開いた。


「……っぃてきて、ほしぃのぉ……」


「は? 何だって?」


 耳に手を当てると、俺は一華へと身を乗り出す。


「だから……一人だと不安だから……つ、ついてきて」


「ついてきてって……俺たちそのゲームやったことないだろ? そんなやつらが突然参加するのって、空気読めなさすぎっていうか、ルール違反っていうか」


「私もそう思うなー」


 首を傾げた識さんが、同意の言葉を吐く。


「いきなりこられても、え? 誰これ? って感じになると思うし」


 …………。


 居心地の悪い沈黙が、生徒会室を支配する。


 そんな空気を断ち切ったのが、先ほどから出方をうかがっていた一之瀬さんであった。


「では、こういうのはどうかしら? 私たちはオフ会に参加しないけれど、同じ店へとゆき、近くの席で一華さんを見守る。場合によってはスマホでアドバイスをする。これだったら、一応一人ではないので、一華さんも心強いと思うの」


「確かにそれだったら、参加はしないけど一緒にいくっていう、いいとこ取りだな」と俺。


「いいね、それ。さすがは生徒会長。頭の回転速いじゃん」と識さん。


 当の一華はというと、顔を落としてきょろきょろ視線を漂わせてから、「じゃあそれで。……あ、ありがとう」と言い、同意の意を示した。


「で、そのオフ会っていつなんだ? 週末とかか?」


 俺の質問に、一華は首を横に振って答える。


「じゃあいつなんだ?」


「きょ、今日」


「え?」


「今日この後、七時から」


 ――は?


 皆の顔が驚きと呆れに染まったのは、言うまでもない。

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