再びのロングツーリングで西へ。東京→埼玉県
2週間。
待ちに待った日が訪れた。
予約日にCBを持ち込んだ律は初回点検とパーツ取り付けを済ます。
ツーリング系バイクへと徐々に強化されるCB。
4時間ほどで全ての工程が終了し、CB400SBは全体のシルエットが好戦的なシルエットへと変わった。
点検が終わった際、店員はCB400はかなりいい状態だと主張したが、律はそれに対し特に何も反応しなかった。
それが光による手の施しによるものはよく理解できていた一方、何も言うなと口止めされていたので。
「それは良かったです」と一言だけ口にする。
実は内心不安があった。
光は「順番どおりにトルクをかけた」と主張していたが、トルクの状態を見るために順番が狂う可能性がある。
そうなると今のそれなりに乗り心地が良くなってきているCBのイメージがまた悪化する可能性がある。
それは避けたかったのだが、1000km点検においてはきちんとした確認がなされていた。
一方、フロントフォークやサスペンション全体の状態は特に何も言われなかった。
ただ、ドリームの整備士は何かを察したのか、タイヤの空気圧を二人乗り用の領域まで上げ、跳ね上げを抑制しようと試みているが、それは特に説明していなかったので律は気づいていない。
バイクを受け取った律はそのままロングツーリングへと向かった。
新たなバイクの感触を試すためである。
相変わらず重いリュックを持ち込み、CB400SBにてまずは環状八号線を北上する。
特に目的地はなく、2週間もの間街より出られなかった鬱憤を晴らすがごとく西へと向かうのだ。
平日昼間の環状八号線の外回りはある程度渋滞していたが、全く身動きが取れないわけではなく難なく突破。
しかし関越道方面となると非常に渋滞するため、律は新青梅街道で西側にシフトした。
実は新青梅街道、平日の昼間は案外混まない。
それも一部の区間までであるが、律はそれを知っている。
目指す方角はあくまで西だが、経由地としては秩父方面を考えていた。
しかし新青梅街道は徐々に渋滞していくため、東村山公園を過ぎたあたりで北へ北上する。
この西武遊園地方面へのルートは非常に空いている。
そのまま新青梅街道を突き進み、箱根ヶ崎あたりで東京都道44号に入るのも手ではあるが、車にそれなりに乗る者はあまり推奨しない。
西武遊園地から国道463号、そして国道299号で進む方が良い。
なぜなら国道463号と国道299号線は都心部の間は片側2車線で右折レーンなどもあるからだ。
都道44号は片側一車線で右折レーンなどがない。
つまり、左折したい人間がいるとすさまじい一時的な渋滞が発生する。
これはツーリングやドライブを嗜む者にとってとても問題だ。
こういう所での事故が特に二輪では多いからだ。
右折しようとする車を左側からすり抜けしようとすると対向車で右折を考える者にぶつけられる可能性がある。
車が通れるほど左側を空けることが可能であれば流れるので対向車が強引に入ってくることはないが、都道44号は田舎の道であり、狭山湖付近からすでに道幅が狭く、そのような進みやすい形状となっていない。
律はこっちの方面は何度か来たことがあるのでそれをよく知っていた。
余談だが、主要国道でも交通量が多いくせに未だに都道44号のようになっている区間が存在する。
国道1号にすらそんな箇所がいくつかあるのだ。
車通りが非常に多く、東西南北どちらに向かうにしてもその道しかないといった場合はそこで大幅に足止めを食らうことがある。
今現在、選択と集中により相次いでそういった区間の改善が急ピッチで行われているが片側二車線にせずともせめて左折レーンぐらいはほしいといえる。
理想としては主要国道は全て合流のための即道付き片側二車線にしてほしいと思う。
国道4号線や整備されている国道17号線などの一部区間で見られる形態だ。
こういったところだと合流レーンのようなものが用意されており交差点に該当する部分に信号がなく、半分自動車専用道路のようになっている。
快走路の条件としてはこれが自動車専用道路形式のバイパスと並び最も優秀であり、国もそれに気づいて渋滞する区間の立体交差化と合わせて主要国道路線を強化している最中だ。
さて、入間川を抜けた律は国道299へと入った。
ここまで入ってしまうと片側1車線でも信号の殆どない快走路となる。
この場所はある程度進んだ後に秩父から南側へシフトすることで甲州から甲府へと南に下ることが出来、稀に20号周辺ですさまじい大渋滞が発生していると甲府まではこちらのルートの方が早い場合すらある。
あまりに大回りしているがそれだけ下り路線が混みにくいルートなのだ。
また、国道299号線はそのまま進むと諏訪の方へと向かうことができるのだが、最初から「諏訪」という方面を考えた場合、国道20号と異なり甲府などを回避することが出来、下道で諏訪まで向かう場合は案外こちらの方が速いこともよくある。
都心部からひたすら山側へ行きたいという場合は秩父方面から諏訪へ向かうことも視野にいれるといいだろう。
律はなぜか両親が長野などへよく旅行に行くことから、経験的にそれを理解していたのだが、今回はほとんどナビに頼らずこれまでの知見だけで移動していた。
国道299号線を北西へ進む律は途中、道の駅「あしがくぼ」付近で12時30分を過ぎたため、昼食がてら休憩することにした。
「うわ、平日なのに凄いバイクの量だ!」
特に意識して向かったわけではない休憩地点。
そこはなんと埼玉でも珍しいライダーの拠点の1つとして利用される場所であった。
特に土日ともなると「一体どこにこれだけのライダーが!?」「高速もないところでこのレベルのライダー召喚をッ!」などという状況になり、周囲の道路は蟻の行進のようなマスツー集団が確認できるようになる。
なぜこれほどまでにライダーが多く集まるかというと、「山梨」「群馬」「埼玉」「東京」の4地域のライダーが非常に集まりやすい場所にあるからだ。
何気にこの付近はこの4地域からしたら「快走路」ばかりなのである。
向かうのに都内からならば皇居周辺からでも首都高4号線やC2山手トンネルなどを併用することで3時間ほどでこの場所に来ることが出来る。
そのため休日はオフ会の待ち合わせ場所となり、常時イベント開催状態となる。
平日ですらそれなりにライダーが集まってくるのだ。
信じられないことに、バイクのせいで渋滞が発生しているなんて事すらある。
西湘バイパス下りPAが神奈川や静岡、山梨を含めた者達の拠点であるならば、こちらは埼玉と山梨、群馬などの者達の拠点ということなのだろう。
平日でも埋まる二輪駐車場に律は「土日だと、どうなってしまうのか」と恐れるほどであったが、土日になると道の駅「どうし」と同じレベルに止める場所がまともになくなる。
これは筆者が不思議に思う余談なのだが、割と快走路に恵まれた道の駅「甲斐大和」ではライダーの数をそんなに見ない。
「どうし」や「あしがくぼ」と何が違うというのだろうか。
――律はこの場所がなぜ拠点になっているのかはスマホのナビアプリを見ることで大体想像がついたが、今後のルートをどうするかは周囲のライダーに聞こうにも近づきにくいオーラを漂わせている者ばかりのため、食堂で一人スマホを弄りながら考えることにした。
ここから秩父までは30km程度。
その秩父からどこへ向かうか考えるのだ。
今回は2泊3日程度のロングツーリングを考えている。
目的地としては長野のあたりに行きたかった。
何度か観光に向かったので特に見たいものは無いが、道中、バスなどからは見られない景色が見たいなと思っていたのだ。
そのため、家から父親のデジカメを拝借して持ってきているほどだった。
次回「荒船山を越えた先の先」




