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番外編:ウィラーの独り言10

 ようやくまともな連絡が来たか……どこかでくたばったかと思ったぜ。


 納車初日からどこかへフラフラ移動するとか正気の沙汰じゃねぇ。

 一昨日から定期的に親に連絡は入れていたみたいだが、2日で450km移動した?


 何やってんだアイツ。


 上級者でも控えるような真似を……


 バイクっつーのは、一番最初が怖い。

 剥けきってないタイヤはなぜか滑るし、ブレーキ類も制動が甘い。


 またエンジンにも大きな負担がかかる。

 この間に無駄なバリやら何やら取り去る目的で走行させるのが慣らし運転だ。


 きっと律の野郎も一気に慣らしをやろうとしてそんな凶行に及んだな。


 サーキットに良く行くヤツなら知ってると思うが、現代のバイクでも納車されていきなりサーキットを本気で走った場合とサーキットで慣らした場合では、最初にオイル交換した際の鉄粉の量がまるで違う。


 これらは様々な部分の形成時の細かいゴミなどではあるが、いきなり全開走行すると量が多いのはそれだけ無駄に消耗したと言える。


 エンジンオイル内に鉄粉が大量の状態は非常によろしくない。


 だから最初は500、1000とか500、1500だとか小まめにオイル交換をすることが提唱される。

 ただ、エンジンにまるで負担をかけねえというのもこれまた違うから難しい。


 名うてのアマチュアレースチームだと公道走れるマシンならあえて山に持ち込んだりしてるんだよな。


 アップダウンでそれぞれのギアにそれなりに高い負荷がかかる状態がいい。


「特に最初の50kmが非常に重要だ」というが、この50kmの間に小まめに慣らすとまるで感触が違う。


 俺も以前知り合いのルーキーからDCT車両の慣らし運転をやらされたことがあるんだが、何も考えずに公道の都市部を50km走ったモンと、俺が俺なりに慣らし運転をやった、最初から山の中を延々とギアチェンジ繰り返しながらアップダウンして50km走り、そのまま山間をずっと回って500km過ぎたマシンでは、個体差もあるが鉄粉は後者の方が明らかに少ない。


 より負荷がかかっているはずなのに、とても少ないんだ。

 普通ならそのまま次は3000km行けそうな雰囲気があるほどにな。


 前者は1000kmでもそれなりに鉄粉が出るが、後者はもう1000kmあたりでは普通と変わらん。


 何が違うか。

 エンジンブレーキ、ギア、それらを複合してムリなく動かすことでアタリがしっかり付くからだ。


 都市部だとエンジンがあまりまわらず、ギアの切り替えも早すぎる。

 その繰り返しでアタリが付くよりもギア同士が必要以上に干渉するのでそういうことになる。


 しかも鉄粉がさらにエンジンやギアを磨耗させ、必要以上に鉄粉が出てエンジン内でシェイクされるような状態になるわけだな。


 ヘタするとシリンダーブロックがそれで傷ついてしまったりする。

 ゴミがピストンとシリンダーブロック内の微妙な隙間に入り込んで下敷きと下敷きの間に砂を入れて転がしたような状態となるからだ。


 傷がつくと公道走行ならば多少は問題ないが、後々のエンジン寿命には大きく関わってくる。


 レース系のマシンではエンジンにブローしかねないぐらい限界まで性能を搾り出したセッティングになってるからシリンダーブロックが傷ついたら終わり。


 そのマシンは慣らしの時点でエンジン交換。

 レース界ではよくある話だな。


 一方で、きちんと慣らしが出来ていればエンジン内は非常に綺麗だ。

 ある程度の時間を何度もギアが切り替わり、エンジンにも回転数を調整させながら負荷をかけてやると逆に鉄粉が出ない。


 必要な部分に必要なだけ負荷がかかるだけになるからな。


 こういうエンジンの寿命は長ぇ。


 俺の知っているバイクショップに、納車から1度いきなりエンジンバラしちまうショップがある。

 ライダーの中では割と知られてるショップだ。


「ツーリング主体」を考慮し、極限にまで純正のセッティングを煮詰めるため、まず最初にほぼ腰下全バラだ。


 エンジンのクリアランスから見て、組み直してから慣らし、慣らし終わったらもう1度バラす。

 一度その完成されたマシンに乗ったことがある。


 純正部品だけの構成でいて別物。


 まるで「設計者が本来が考えるカタログ数値を体言したマシン」といった、そんな感じになる。


「何かしたのか?」と聞いても「いつものように整備しただけだ」という。


 元レーシングチームのメカニックマンが手がけただけにまるで妥協がないそのバイクは、チューンされたように思えてくる。


 手を出したのは精々フォークオイルを変更したぐらいというが、本当に感触が別物という感じだ。


 だからやるなら最初の200kmぐらいは丁寧に一気にやっちまいたいが、1日2日で500km近くまでもっていく必要性ないだろ……


 慣らし中には100~150kmに1回ぐらいはエンジンを冷やしてやったほうがいいんだぞ。

 ずっとまわし続けてもエンジンが熱持つとこれまた熱膨張などによって各部分への負荷は変わるからな。


 カチッとしたいなら最初の50kmと次の150kmぐらいは非常に気を使う。

 そこまで気を使ってやったって、上記のショップみたいに徹底的にやらないなら微々たる差にしかならない。


 そこをどう享受するかは人間性とかに左右されるな。


 律は多分そういうの気になって仕方ねぇタイプだろうな。


 っつかどこ行った?


 450kmって名古屋過ぎてんじゃねえか。

 琵琶湖あたりまで行ったかよ。


 だめだ、ヤツの現在位置が確認できるようにしないと危ねぇ。

 位置情報の共有か何かができるようコッソリやっておかねば。

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