任意保険選び。
正直保険屋選びは人と走りのスタイルによって価格が大きく変わるのでどうしようか迷ってたけど、投稿してみた。
任意保険は絶対に必要だ。
それは他者を守るだけでなく自身を守る事にも繋がるからである。
だがバイクにおける保険屋選びは中々に難しい。
というのも、バイク保険には基本「車両保険」というものが存在しないからだ。
愛車を手に入れるために自動車保険について事前に知識を蓄えていた律であったが、自分自身が車両保険にある意味で救われて現在があることを考えると、仮に自身の失態によって事故を起こすことが今後一生無かったとしても絶対に任意保険は必要であると考える男である。
しかし、ネットなどで保険の比較をしてみてもとにかく思うのは「無駄が多い」ということであった。
車保険についてあると割とお得と言われるのは「弁護士特約」と「対物超過特約」の2つ。
前者は、昨今の保険屋は被害者に対してふざけた額にて丸め込もうとすることが多く、難癖をつけられた際に絶対的効力を発揮するため、自己防衛としては最強の特約の1つであるからなのと、後者は、正直言って「超過費用が出ないことの方が珍しい」という点からである。
(正直なところ弁護士特約を使わなければいけないケースにならないのが一番なのだが、あると無いとでは天と地)
特に前者の場合、昨今では「車積カメラ」などがあれば相手に有無を言わさないことも可能だが、例えば相手側が対向車線に全力で逆走して正面衝突してきた際に「実際には半分ほどしか出ていないから過失割合は7:3だ」などと言って来たりするところ、
弁護士特約をチラつかせながら「こっちは3年だろうが待った上で9.5:0.5以外、聞く耳持たないから」などと言えば相手側は殆どのケースで折れざるを得ないこともあるので、安全運転を心がけるならば「前後車載カメラ」+「弁護士特約」+「安全運転」は今のとこ最強クラスの防御手段と言える。
特に「相手側が任意保険に加入していない」場合などにおける保証手続きなんかも「即弁護士特約発動」が可能な点で「絶対に逃がさない」ことから、変に相手とトラブルになるぐらいならその道のプロからきちんと搾り出してもらう方がいい。
最近では任意保険未加入者というのは減ってきているものの、未だに未加入が多いのが「原付(125cc未満)」で、笑えないことにこれらの大半が任意保険に加入しないせいで二輪の加入率は43%などと、「2人に1人以上は自賠責のみ」という笑えない状況となっている。
125cc未満という場合、最近では「ファミリーバイク特約」といって今契約している四輪自動車保険に付随して補償を受けられるようにするということも可能だが、それすら受けずに契約している者が大量にいるということなのである。(特約適用時の保険料が高すぎるという話もあるにはあるが)
ただし、正直なところバイク保険については「二輪同士の正面衝突でもなければ、相手側に与える損害よりもこちら側が受ける被害の方が絶対的に大きくなる」という点から、「任意保険に加入しないでも相手側からの保険で事足りる」ということも多く、「泣き寝入りするパターンなど決まっている」とも言われる。
特に車両保険が無いということは、ケースとして「相手が自賠責しか加入していない」上で二輪同士の正面衝突となると「示談」しか方法が無く、そうなると当事者同士では時間も勿体ないことになり、非常に不愉快な思いもするので、そういった意味でも「弁護士特約」というものは非常に有効。
(相手に任意保険が無い場合は、弁護士特約などで弁護士を通じて相手の給与差し押さえなど最終手段を簡単に代行してもらえるので、弱者ほど必須)
律も、弁護士特約については、自身が一度死に掛けた際に有効活用したとの報告を受けており、絶対必須条件としていた。
「まずは対物対人無制限は基本として……どこの会社にするか……ていうか微妙すぎない?」
パソコンでダイレクト型保険のページを見て比較していた律は、ダイレクト型保険の微妙な内容に溜息が出そうだった。
メモを書いて比較をしながら、どんぐりの背比べといったようなダイレクト型保険の状況にペンを振り回してストレスを解消させる。
まずダイレクト保険の最大の問題は「走行距離の限定」といった走行スタイルを縛ってくるものが多いということ。
安くしようとするとそうなる。
某社は年間1万km未満でないと保証しない、または保険料が上がるなど妙な指定がかかっているが、走行距離6000km程度ですら高い。
原因は「レッカーサービス」など無駄すぎるサービス満載の影響があった。
―――――――――余談―――――――――――――
まず1つ、レッカーサービスについてだが、この手のサービスは「HONDA DREAM」「YSP」「カワサキプラザ」「スズキワールド」などで新車購入した場合は、ある意味では完全な「無駄」である。
この4社全て「有料(年額会費)」または「一定期間無料」などで距離無制限の無償レッカーサービスを提供しており、この手のロードサービスは実質的には不要。
殆どの保険屋のレッカーは無制限ではなく、精々100kmかそこらなので話にならないのとは違う。
ただし弱点もないわけではない。
この4社全てのロードサービスは「ズットライド」と呼ばれる盗難保険を主体とした保険サービスが提供するロードサービスを受けられる特約みたいなものが新車で自動的に付与するものだが、
このレッカーは委託代行であり、信じられないことに委託側が「拒否」してくるケースがある。
例えば筆者は群馬の草津の山奥にて追突事故に遭遇したが、このとき地元のレッカーサービスは拒否し、信じられないことに下道だと100kmにも及ぶ高崎の業者が委託代行にあたった。
拒否した理由は、その日、周辺で事故が多発して殆どで払っており対応不可の状況にて、渋川、沼田、前橋の業者は経験が浅く、筆者のバイクが大型で重すぎて運んだことがないから(270kg)という理由。
レッカーサービスを求めて電話したら、若い係員が何度も「申し訳ない、日付が変わらないようどうにかしますので」といって必死そうに何度もやり取りして対応してもらったが、
正直言えば「バイクは明日でいいから自分だけでも沼田あたりに運んでくれないかな」と思ったものである。
夕方に事故って高崎からレッカーが来るということは、草津の地に3時間ほどレッカーを待ち続けることになる。
しかしその程度ならまだいい。
代行する業者が「24時間対応」でない場合、「24時間対応の業者」に委託するため、高崎どころか、埼玉、果ては東京から駆けつけるケースも無きにしもあらずということもあり、そうなるといつ来るかわからない状況に震えることとなる。
この時、実は筆者のバイクを筆者ごと運んだ業者ですら「正直断ろうと思ってたけど、翌日待ちだと24時間即時対応の規定に反するから――と泣き言を言われて渋々来たんだ」と言われた。
特に筆者に不満や不平などは述べておらず、ロードサービス代行の問題点としてこの時の状況は記憶している。
この原因はレッカー業者曰く「ズットライドの代行は、元来車しか運んだことが無い連中にバイク運びを代行させることで費用を浮かせ、業者は業者でバイクも運ぶことで目減りする国内需要へ対応しているんだよね――」と運んでくれた人間から「奇妙な関係」として教えてもらった。
運がよければ「バイク屋」が委託契約を結んでいるのでバイク屋まで運んでもらえるのだが、土日など事故が多発しやすい状況ほど「元来は車専門業者」が来るのでバイク自体にも「クレーム」などが生ずるような事になり、代行する身としては「正直排気量制限か重量制限を設けてほしい」と切実に願っていると言う。
実はズットライドのロードサービスには急行してーとかいったような表現の広告が無いことから、遅くなる可能性は暗に認めているようだ。(そこはJAFと提携することが多いようなダイレクト型保険タイプとは明確に異なる)
今日では法改正によって保険屋においてこういった表現が安易に使えないことからそういうことなのだろう。
ちなみに、車専門業者が代行する場合は、一度ズットライドが契約するバイク屋に運んで、そこから「HONDA DREAM」「YSP」「カワサキプラザ」「スズキワールド」に移動させる方法。
つまり、最初がバイク屋でないと1日でディーラーともいえる購入店舗まで運び込めない。
草津から東京都内まで筆者のバイクも丸2日かかっている。
とはいえ、当時運んでくれた人間は、そのレッカー会社の社長本人だったので、非常に詳しく新鮮な話を聞かせてもらえた。
それはバイクが元来なら「車を運ぶための車両」なら簡単にピックアップできるといっても、「タイヤ2つしかなく不安定」なために起こりうることで、
特にその筆者を助けてくれた業者すら明確に断っているのは「フルカウルメガスポーツ」だったりする。
固定する方法が見出せない車両が多いのに車重が重く、また「輸送中に輸送によってさらに壊れた」というようなクレームも多く受けたからだという。
筆者が運ぶ際、夜なのにも関わらず一度デジカメ撮影していたほどなので、よほど神経質になっているか、代行時の規定か何かと思われるが、「レッカー無制限」=「絶対安心」ということはない。
他の保険屋の場合、専門業者を持っているケースもあることを考えれば「安い」「無制限」だから最強ということは無い。
ちなみに速さだけで言えば圧倒的なのはJAF。
本州なら全国どこでも1時間程度と速さに関しては圧倒的だが、「15km以上は有償」というサービス品質に対する価格を要求される。
保険屋が相次いでロードサービスを付帯し、バイクメーカーすら新車にそういう特約を付帯させる中、それでもJAFの会員が二輪でも減らないのは、安心感が違うからなのだろう。
余談の余談だが、筆者は知り合いが事故った際にレンタカーでバイクを運んだことがある。
これも時代の波なのでここに書き記しておくが、ズットライドやJAF、そして保険契約などにおいてレッカーサービスを受けていない状態の場合、最後の手段として今最強のバイク移動方法はレンタカー。
それも「カーシェアリング」が最強。
カーシェアリング。
簡単に言えば駐車場に放置してあるレンタカー。
今や若者が多く加入し、「もう車とか買わなくていいよね」なんてにわかに囁かれ始め、トヨタですら「もう駄目かもわからんね」とばかりにカーシェアリングに出資する時代。
一方で、カーシェアリングではコンパクトカーと5ナンバーサイズの車両が大変人気で、軽自動車が凄まじい不人気さを誇ることから、トヨタ社長とスズキ会長が言ってた「本当は若者は軽なんぞ欲していない」という話は割と間違ってないことがビッグデータでわかっている。
トヨタがカーシェアに出資した最大の理由は「一定量の新車をカーシェア用として業者販売」できるだけでなく、トヨタ的には開発力が微塵も無く最大の弱点である「軽自動車」が不人気という点に彼らが着目したためだ。
主要販売している一般自動車を売りたいトヨタにとって、カーシェアに舵を切った最大の理由は一番売りたい、その上で技術力をいつまでも保持しておきたい一般乗用車を最も求めるのがカーシェア業界だったから。
そんな業界の中で、一部のカーシェア会社では「NV350」「NV200」といった「バイク余裕で運べます」な車を通常料金にてレンタルできる。(おいてある地域は限定される)
特にNV350は、現時点で「運べない車両」というのが思いつかないハイエースのライバル。
この最強のトランポを、例えばTimes Plusなら6時間+6時間契約すれば距離無制限で9000円前後で借りられる。
ガソリン代すらかからない。
私は、これをバイクのイベント会場で初めて目撃して衝撃を受けたのだが、今後、財布に余裕がないライダーは「トランポは借りるもの」ということで、ラダーレールとタイダウン一式背負って遠くのカーシェア駐車場に赴くカーシェアトランポの道に歩むという方法があることがわかった。
例えばNV350に積み込みこんで、9000円で12時間かけて行って戻ってくるならどこまで可能かというと、普通に高速使わずとも草津までなら余裕だ。(往復6時間~7時間程度)
同じ距離をレッカー移動すると5万円以上。
いかに「人件費というものがこの世において最も負担になるのか」を思い知らされるが、バイクを運ぶことはカーシェアの規定上「車の規定車載重量を超過しない限り許可」されており、よほど破損して社内を汚さない限りクレーム案件ともならないので、最終手段としては「カーシェアで自分で持って帰ってくる」という方法もあるかもしれない。
ちなみに、ここ最近話題のホンダN-VANは「本田の車種ならGLとVFR1200以外全部運べる」と豪語している車だが、カーシェアではこいつの導入も視野に入れてるそうなので「高速使っても軽自動車料金で安価で持って帰ってこられるかもしれない!」といった可能性も今後は十分にある。
しかもバイク積載した状態で2人乗り可能!
保険屋系ロードサービスでよく「24時間レンタカー無料」なんて書いてあるが、そのレンタカーをN-VANにしてみたらどうなんだろう?
――――――余談終わり―――――――――
レッカーサービスについては新車購入によってドリームオーナーズクラブに加入することで距離無制限のレッカーサービスがつくのと、
光より「万が一の時は俺が近くまで向かってやる」とも言われており、また前述する「現代ライダーのカーシェアによる二輪輸送方法」というものを光より事前に教えてもらっており、
光からは「近いうちにバイクの積載方法というものを教えてやる」と連絡を受けていた。
「トランポと呼ばれるバイク移動用車両の存在が一人でも使えるようになるとバイクの使い方は無限大に広がる」
ネット上でもそういわれていたことから、律は納車前の段階に大急ぎでトランポ車両を抱えるカーシェア業者に登録していたのだが、ラダーレールやタイダウンなどについては後々購入することとしていた。
「んーレッカー無しの保険屋とかないかな……正直いらんよねえ~」
ペンを振り回しながらレッカーという存在に対して思うことは、事故でレッカーが必要になるという状況とは「果たして生きているのか」ということ。
思い起こすのは過去の自分の事故の悲惨な光景。
もし、あの状況でバイクだったら間違いなく肉塊であったことは断言出来るので、背筋が凍りつく思いもしながら、光にその件について相談を投げかけると「いつからお前はバイクが故障しない乗り物だと錯覚していた?」と事故に関わらず愛車が不動になる可能性を考慮しろと猛省させられたのだった。
しかし一方で光は「ドリームで新車を買うんだからレッカーなんてイラネ」と言っておきており、前述する「自分で運ぶ」という最終手段もある状態においては「レッカー無し」のバイク保険が最も有用と結論付ける。
そうなると、大半のダイレクト型保険は「無駄に高い」お粗末な代物と成り下がった。
ダイレクト型で有用なのは「車両保険」がある会社のみとなるが、光は「車両保険なんて使うと無駄に月々の保険料が上がるだけだから、俺がどうにかする」と言ってきており、車両保険は他のライダーよろしく付けない事に決めた。
(ならもっと安く、そして無駄を省いた保険があるはずだ……)
そう考えた律はパソコン画面を見ながら様々なバイク保険を探し、ついに自身の走りのスタイルに合った、理想の保険会社を見つけることができた。
それは「全労災」の「マイカー共済」+「交通災害共済」という一切の無駄を省いた分、必要な部分で安くかつ重要なツボを抑えた方法。
殆どの会社は初回契約の6等級で3万円以上する中、全労災とアクサだけが3万円を下回ってきた。
しかしアクサは距離制限アリで、全労災は無し。
自身が2度目の事故に遭遇して死ぬことは考えたくはないが、その分の葬式費用的なものが十分出る契約でありながら、自損事故保証(人身及び自身)に対しそれなりの保険金が出る契約。
しかし通常なら「≪人身障害保証≫や≪搭乗者傷害特約≫を付けないとか正気か?と思われるかもしれない。
前者も後者も自身が死亡またはケガなどによって入院になった際に支払われる各種補償であり、割と重要である。
マイカー共済の場合、実質的人身障害補償という形で1500万円が「自損事故保障特約」として付帯する上、あえて上記2つを契約して保険料を跳ね上げるよりも、「交通災害共済」という、全労災本来の力を用いた保険が別途存在するため、合わせてそちらと契約した方がお得。
交通災害共済。
調べるとわかるが、「自動車(二輪含む)」「自転車」「電車」「船舶」「航空機」「駅改札内」「エスカレーター」「リフト」などで事故に遭遇した場合、その入院費等を支払うというもの。
掛け捨てで年掛金をかけると、道路上などで遭遇したものなら「火災」「爆発」「がけ崩れ」等、「あれ、もしかして昨今ニーズが高まっているジャンルの保険じゃないの?」といったような部分を補填してくれる保険。
バイク保険の場合、金額だけを考え、ロードサービスを捨て、距離無制限を採る。
この場合においては「マイカー共済」+「交通災害共済」が最もベターな判断となるが、例えばアクサやチューリッヒで最低限の契約を結ぶぐらいなら、こちらの方が補償内容は充実する。
しかも、「自転車走行中」や「地震や台風などの際、駅などに避難していて二次的災害によって負傷した」などといった場合にも「交通災害共済」によって補償が出るため、元来の自動車保険では「一切カバー」できなかった今日割と重要となりそうな分野をサポートする。
例えば先日の大雨災害で「バイクは無事だったけど土砂崩れの土砂が頭に当たって負傷した」という場合、コレは事故に関係なくそれを証明できれば保険が使えるというわけだ。
実際にそのケースがあって交通災害共済に助けられたという人物が先日の大雨災害にていることから、割と注目すべき保険である。
従来から「安く」という名目で上記2つの契約をとってくるライダーは少なからずいたのだが、ここ最近の災害は「バイク保険では補償できない」ため、マイカー共済の交通災害共済のような特約が今後各種自動車保険で設定される可能性は高い一方、
今のところ最も安価なプランにてその補償を獲得できる。
この契約はあくまで律が「新車購入契約を結んだ上でロードサービス不要」「まだ若いので最低限の補償プランでいい」などといった理由により優れていると判断しただけであり、
律は今後、このプランをベースに等級が上がっていくのに合わせ「人身障害補償」や「搭乗者傷害特約」も検討していく一方、上記プランに弁護士特約だけ付けた状態で約3万円ちょいの契約で加入することにしたのだった。
保険料においてはどこで妥協するかといったものが重要となるが、現時点では今後の状態を見て必要なものを取得する方向性に切り替えつつ、
他の保険屋と平行して状況を見ても、変に無駄なサービスがつかない分安いことから、「これで必要にして十分」と考え、明くる日、契約のために新宿へ向かう律の姿があるのだった――
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翌日、新宿に向かった律は全労災の店舗に向かい、自動車保険の説明を受けて契約を完了した。
律が驚いたのは「人身傷害補償」や「搭乗者障害特約」よりも「交通災害共済」をオススメされたこと。
「保険料的にも絶対安くオススメなんです」と予想とは別の反応をされる。
これぞ自動車保険のカラクリの1つなのだった。
交通災害共済というのは「1口○○円」という形で保障がつき、10口単位で購入することでその年において「災害保険」をかけるというもの。
完全な掛け捨てで運用される。
昨今再び注目されはじめたジャンルの保険であるが、「自身が運転する車両でケガをしても保障」というのが大きい。
例えば、通常の自動車保険なら災害によって発生した事故でケガを負った場合、即時入院費が出るケースは少ない。
しかし、交通災害共済は最初からそれを目的とした保険であり、即時支払いに近いものとなっている。
ここに盲点のようなものがある。
通常、自動車事故の場合、任意保険さえ加入していればその殆どが「自賠責」+「任意保険」でまかなうことが出来る。
つまり、例えば「鉄道」だとか「航空機」だとかも保険は加入しており、事故が起こればその手の企業が補償するというわけだ。
また、相手側が「全額出しますから」と言って、掛け捨てにも関わらず利用しない利用者も非常に多く、実は「貰っておけばむしろ得したのに」と言われるケースすらあるわけだ。
ようは意外にも使われないことから減ったと言っても少なくない自動車事故だけで資産運用しなければならない「自動車保険」と「交通関係を対象にした災害保険」というのは資金の運用基盤が完全に別枠で異なるので、変に特約を付けるより、同じ補償が受けられるのにも関わらず交通災害共済の方が年間保険料は安くなるというカラクリが生じる。
しかも、この「交通災害共済」というのは「市町村交通災害共済制度」という、税金も投入され全国の市区町村が展開している地域住民向けの「共済制度」も委託され、それも母体としたものであるので、その土台は非常に強固なのである。
ただしこの「市町村交通災害共済制度」、2000年頃から「無駄な税金を投入している」などと言われ、(全労災や生活協同組合の交通災害共済と比較すると支払い金額より補償内容が大幅に優れていた)
民間事業委託ながら「利用実績も保険適用実績も低すぎる」ということから東京都など大規模に人口を抱える地域を中心に廃止されてしまった。
まあ当時は「自動車走行中などに地震や大規模災害? そんな災害本当にあるんですか?」とか言われちゃうレベルで「100年に1度程度の災害がそう何度も起こらないのに、そこに税金まで投入して補償せずともいいでしょ」などと後に巨大ブーメランを食らうことになったのだが、
廃止した地域ほどそういう災害とは無縁なことから、今のところその見直しには至っていないという実情もある。(今回、大雨災害を受けた地域の殆どは廃止していない)
しかし各所で廃止されても未だに全国規模で展開されることから、全労災はその手の引き受け的な協同組合組織であるため、独自に保険を作って運用しているというわけである。
他にも生活協同組合などが同様の委託を受けているためか交通災害共済保険を展開するが、「市町村交通災害共済制度」+「全労災などの交通災害共済」+「最低限の補償を満たしたバイク保険」という形はヘタに年会費をバカ高くして補償を充実させるよりも保険料を低く出来ることから、「賢い者の選択」として一部でコッソリ語られている。
残念なことに律の地域は「とっくの昔にそんなもの廃止している」ということで、一瞬気の迷いから移住すら検討したくなったほどだが、その分口数を増やして対応することとした。
それでいても来年の保険料は2万ちょっとという金額となることから、他者の保険が来年も3万円オーバーな事を考えれば「同じ補償で1万円も安く年会費を落とせる」ということでオススメどおりの選択を銀行口座からの自動振込みにて契約したのだった――
「うーん……もっと早くに知っておけば仕事時に契約して親に負担をかけずに済んだのに……」
その後、交通災害共済の金額がそこまでではない事から、運送業をやるといった際に契約しておけばと後悔し、独り言を呟きつつも、律は新宿の全労災の店舗を後にしたのだった――。




