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番外編:ウィラーの独り言3

 こちら黒猫。


 音羽宅に潜入を完了した。


 ……手違いとはいえ律とは違う家に預けられたときはどうなるかと思ったが、なんだかよくわからねぇうちにようやくこっちにこれたぜ。


 ったくよーーーあのバカ女。

 何が私は全知全能だよ。


 気づいたらわけわからない家に預けられて一時はどうなることかと思ったが、突然の転勤で家族全員引越しになり、引越しがペット不可になってくれて助かった。


 おかげでようやくこちらの仕事が可能になった。


 だけどよ……もう教習始めちまってるじゃねぇかああああああ!


 クソが!

 律にいきなり大型目指させようと思ってたのに大失敗じゃねぇか。


 大体なんでアイツ合宿じゃないんだよ。

 そっちの方が安上がりだし速いだろうが。


 何か調子悪いのか? どこが不調だというのだ。


 はぁ……


 ともかくだ。

 普通は免許を取るなら今は「大型まで一気に取る」方がいい。

 特に若いの、お前らだよお前ら。


 律が一体何のバイクを買う予定か知らんが、今の時代中型とか250cc以外に選択肢がまるでない。

 400ccはラインナップから殆ど消えている。


 免許制度改革まで及ぶんじゃねえかって言われてるほどだ。


 国外に目を渡すと、アジアでは300cc、欧州では600cc~750ccがミドル級。

 400ccは本当にごく一部の地域だけだ。


 日本は250ccが障害となってグローバルモデルは300cc程度の中途半端な排気量をボアダウンして販売しているが、本来300ccという設計なだけに中途半端だったりする。


 KTM390Dukeなどのように「290ccをボアアップさせた」なんて面白いモンもあるんだが、それも元は300cc帯のものだ。


 逆にKTMの場合は250ccが290ccボアダウンだから不評だったりするんだが……それはどうでもいいか。


 何が言いたいか、それはロングツーリングで250ccはやっぱ厳しいことが多々あって辛くなるってこと。


 今まで何度ロンツー重視の人間が大型に手を出していったかわかったもんじゃねえ。

 バカでかい超大型1300ccに乗れというわけではないが、かつて400cc帯が担ったミドル級バイクが結局は日本の道路事情に最も合致してどこまでへも行ける。


 まあ最低400cc以上、750cc以下ってところが無難なんだよな。


 そりゃ車検もないしそれなりに楽しい250ccだが、やっぱ金はかかるわけよ。

 それもそれなりに。


 維持費見ればわかるが車検入れても大幅に大型が高いってこたーない。


 特にMT-07、NC750、SV650、Z650及びNinja650なんかはコスパのいいバイクだ。

 こいつら車検が無い以外は殆ど250ccとコストは変わらん。


 いや違う……昨今の250ccが高すぎる。

 本来250ccとは「ニーハン」なんて言われて馬鹿にされるバイクだった。

 一部2ストは化け物じみた性能があったが、ピーキーな性能だった。


 それが経済的不況によって今や軽自動車と同じようなポジションへ。

 売れ行きのいい代物は250ccばかりになったが、軽自動車と同じくバカみたいに値上がりするようになった。


 高級路線シフトってやつだが、そりゃその方が企業は儲かるからそうする。

 だが、そうすればするほど若者から逃げられるジレンマ。


 車検がないからといっても、パーツ類の価格も上昇していてヘタすると「NC750やMT-07の方が総経費は安いんじゃないの」と思えなくないようなバイクがいくつもある。


 そしてさらに今の時代は150cc~190ccぐらいのスクーターや小型バイクまでもが注目され、ブームとなりつつある。


 理由は、国土交通省が大量に整備しだしたバイパス事業。

 全国各所ではバイパスが整備されまくってる。


 既存のバイパスの無料化というのも近年加速しつつある傾向だ。


 特にかつての大通りの国道が老朽化や渋滞緩和を目的に新たに整備されている。


 有名どころが埼玉や群馬を走る国道17号線。

 あれなんかもう「高速?」と思えんばかりの快走路だ。


 しかしこれらバイパスでは「原付通行禁止」という状況。

 原付二種もここに含まれる。


 そこで注目されたのが「125ccより上の排気量だが、バイクサイズは125cc級」という存在。


 特にそのラインナップがやべえのがホンダ。

 日本では販売されてねえが、CB150F、CB150R、CBR150R、CB160ホーネット、CB190R、CB190X…etc…他にもスクーターなどテンコ盛りよ。


 こいつらはアジアのフィリピンやタイで求められたバイク。

 ようはあっちでいうミドル級。


 元々は見向きもされず、ベトナムなどでよく目にした存在。


 いわば「途上国の大衆車」


 だが、こういった代物が日本でも受けるようになっちまったんだよなあ。


 つい最近、ヤマハはとあることで謝罪した。


 トリシティ155の生産台数を見誤ったっつーことについて。

 3000台以上売れたトリシティ155は、ヤマハは2500台程度と販売を見込んでいた。


 実際は3500台以上の需要があった。

 そのことで品薄となり、クレームが殺到したんだ。


 まさかあの三輪がここまで評価されているとはヤマハも迂闊だったようだが、今求められてんのは「楽」「小型で仕舞う場所に困らない」「パワーは欲しい」と言う状況。


 250ccは車格デカすぎってことで不評。


 トリシティに加え、PCX150やN-MAXみたいなタイプにスポットライトが当たるようになった。

 個人的にPCXはデカいと思うんだが、巷のライダーはあれが「This is 最高に丁度いいホンダ」らしい。


 トリシティはこの3つの中ではすごく楽なバイクで、リターンライダーや高年齢ライダーに求められた。

 やっぱコケにくいって重要なんだよな。


 田舎行くと80過ぎた爺ちゃんが普通に乗ってるんだけどよ、「これぞ平成のオート3輪よ!」なーんて冗談半分で言ってる代物。


 この流れ見てる限り、ホンダが未だにジャイロ150なんかを出さないのが意味不明なんだが、そろそろ考えた方がいいと思うぜ。


 アレにも間違いなく需要がある。


 積載能力からいってもジャイロは完璧だろ。


 ジャイロ150出せば、初年度4000台売れると俺は勝手に見込んでる。

 それに気づかずにPCXで勝負するとか、何考えてんだか。


 ……まさか律もトリシティを買うとか言い出さねぇよな……バイクの面白さはやっぱニーグリップがあってこそなんだが……CB125Rを買うとか言い出したらどうすっかなあ……一端のライダーってことはやっぱ大型までは獲得が必要っぽいしな……


 あーもう嫌になるぜ!

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