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余談:ハンディを背負ったライダーを見放さなかったホンダだからこそDCTを出した。

 今回の話を書いて一言言いたい事がある。

 ハンディを背負ったライダーについてである。


 実は、ハンディを背負った人でも1から免許を取得することができる。

 一応、一般的には「すでに取得していてハンディを負った」人の方が非常に楽ということになっているが、


 それは平成15年だったかに法改正され、事故などによって免許取得後にハンディを背負った場合は、「公安委員会指定の場所で相談を受け、問題が無ければ備考に記載された車両に乗れる」ということになっている。


 一例を出せば「左腕の指が上手く動かない」というだけならクラッチレス車限定+ハンドルバーを握る際に補助具装着みたいな条件にしてもらうだけでそのまま乗れる。


 しかし実は「現時点で免許が無い」という者達も、やり方次第では免許を取ることが出来る。


 例えば先ほどと同様、「左腕がまともに動かない」なんて人も実はMTの免許を取れる。

 そのためだけにホンダが作ったCB750の教習車が存在する。


 そもそもホンダはこういう人間に対して紳士的だった。

 正しくは「本田宗一郎」という偉大なる創業者とはそういう男だった。


 題名を見ると「CB750エアラか?」と思った人。


 違う。


 かつてCB750には純正仕様にて「右側クラッチ」という代物が存在した。

 メーカー側が「左腕が使えない」という人のために右側にクラッチを移設したのである。


 右腕が動かないという人のために左側アクセル+左側クラッチとかいう「ある意味ものすごくテクニカルな操作を要求される」CB750も存在した。


 これらのCB750は「フットブレーキにて両輪同時にブレーキがかかる」というコンビネーションブレーキを装備。


 これら一連の仕様はCB400にも一時期存在し、そればかりかCB400については一時期このコンビネーションブレーキが「純正仕様」として搭載されたことがある。


 不評すぎてすぐに取り外されたが、CB400のNC42の前期だったか中期のモデルの一部にコンビネーションブレーキが搭載された最大の理由は「そういう仕様がハンディを背負った人のために必要だったのを逆手に取って安全性を向上させようとした」ものだったりする。


 コンビネーションブレーキが「右のハンドブレーキ」は独立させつつも「フットブレーキを踏んだ際に前後でブレーキがかかる」というホンダ独自仕様そのものがこういった人のための存在である。


 これで1つの答えが出ていることが理解できる人もいるだろう。


「どうしてDCTのバイクは基本、左側に後輪ブレーキ用のブレーキレバーが無いのか」


 その答えがコレだったりする。


 その上でやろうと思えば左側にブレーキレバーを装着して前後のコンビネーションブレーキとする事が可能なのがNC750シリーズ。


 アフリカツインについては最初からレバーがついているのでややこしくなるのでこの話では除外するとして、新たな教習車として選ばれたNC750シリーズもまた、こういったことが簡単に行えるようになっている。


 他のメーカーではこれが簡単に出来ないが、一応言うとカワサキが割とその手の無理が出来る設計だったりする。

 そのため、ハンディを背負った人の希望はホンダとカワサキだったりするのだ。


 ちなみに、では、左腕だけでなく右足も満足に動かないという人はどうにもならないではないのか?

 と思う人がいるかもしれない。


 それも想像力が足りてない。


 その場合にはちゃんと方法がある。


 方法の1つとしては、CB400、CB750、記憶が間違っていなければNC750については「まるでロータリー式のごとく左足のかかと側にフットブレーキを追加」することが出来る。


 純正仕様ではないがそのようなことが考慮された構造設計なのだ。


 もしくは右側にシフトレバーとブレーキレバーを搭載する。

「は?」と思うかもしれないが、構造的には下記のようにする。

 ハンディを背負ったのが右腕の場合は下記の構図と魔逆になるだけだが、ダブルレバーという存在だ。


 ↓


 г ←クラッチレバー

 ― ←アクセルグリップ

 ∟ ←ブレーキレバー


 停車する際は、クラッチとブレーキを同時に握り締めればいい。

 かなり握力が必要になるかもしれないがこれによって「バイクに乗る」ことが出来る上、ハンディを背負った人のための教習車も実在する。


 また、公安委員会に相談すると「教習車持ち込み」という形で教習を受けることも出来なくは無い。


 そんなこんなでホンダは、大昔から「クラッチレス」にやたら拘りがある。

 スーパーカブ含めてだ。


 その最大の理由の1つとして、そば屋の配達だけではなく「復員した戦闘員に対する考え方」というのが本田宗一郎にあったためである。


 本田宗一郎が二輪を売ろうと思った当時、まだ戦後数年。

 周囲には働きたくともハンディを背負った者達が大量にいた。


 実は彼らでも運転できるようにということもカブは念頭に入れられ、その後彼が存命中に送り出した教習車や彼が死後世に出た教習車もまた、そういう仕様であり、


 そして現在までその思想は続いているわけである。


 ハンディを背負った人の中にはDCTを「唯一無二の機構」と称して褒め称える者もいるが、

 その最大の理由としては「スクーターはバランスがとりにくく危険」という部分がある。


 ニーグリップという方法はなんだかんだでもっともバランスをとりやすいもの。

 そこにおいて、ただでさえバランスをとりにくい状態の人達にとっては命綱のようなものなのだ。


 スクーターはバランスが取りにくく厳しいというが、彼らにとってコケたらどうなるかわからないのだ。

 だからこそ、とにかく安全に運転できるバイクを求めるのだ。


 人によっては「今の時代にそこまでして二輪に拘る必要性があるのか?」と思うかもしれないが、バイクを求める理由なんて他人が決めることじゃない。


 乗りたい人が乗る。

 そんな時、いくつもの手段を用意してくれていたホンダと、余裕ある設計のカワサキ。

 この二社は助けになってくれるだろう。


 ちなみにブレーキやアクセルの移設、シフトレバーの移設についてはNinja400が割とそこまで高くない難易度で出来ると聞いている。


 Ninja400を教習車にする予定がカワサキにはあったのだろうか?

 というか、完全にNinja250のボアアップ版になった新型のNinja400はどうなのだろう?

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