17 ステータスを確認してみる
「それよりも、戦いのほうはとりあえず怪我もしてないみたいだし、及第点じゃねぇか」
「はい! マサヤさんの言う通りに落ち着いて戦ったら勝てました! 戦っているうちにどんどん体が動きやすくなるような気がして不思議な感じでした! さすがマサヤさんの装備ですね」
「へぇ……そうか、そいつはすげぇな」
生返事をしながら俺はリアナの言葉について考える。戦いの最中に動きがよくなる……ね。確かに俺の装備はチート武具だが使い慣れてきたら効果が上昇するなんてことはないだろう。となれば……【鑑定】。
『名前:ナシャリアナ(奉名=真田雅哉)
種族:白狼族
年齢:17歳
レベル:13
スキル:脚力強化3/長駆2/嗅術3/剣術2』
やっぱりな。草原の狼を二十頭程度倒しただけでレベルが五つも上がってやがるし、スキル熟練度も【脚力強化】【長駆】【剣術】がひとつ上がってやがる。そりゃあ動きがよくもなるだろうさ。
「とりあえず狼を回収するから一回りしてくれ」
「あ、はい。わかりました」
リアナが倒した狼たちを一頭ずつ【無限収納】に収納しながらリアナの急激なレベルアップについて考察する。といっても可能性としてはふたつだ。
ひとつはレベルが低いうちはちょっと魔物を倒しただけでどんどんレベルが上がっていく。そして、俺のエクストラスキル【経験値1000倍】の効果がリアナにも影響を及ぼしている、というこのふたつ。俺の感触としては後者だが……問題はなにがきっかけで影響を受けるようになったかだ。
「リアナ、この世界では同じパーティで戦っていたら戦闘に参加していなくてもレベルが上がったりするか?」
「はい、見て経験を積むことはできます。でもそれは実際に自分で戦って得る経験に比べたら微々たるもので、見ているだけではレベルが上がることはほとんどありません。レベル1の子供がレベルを2や3に上げるときくらいでしょうか?」
だろうな。そんなんでレベルがぽこぽこ上がるようじゃこの世界の奴らはみんな高レベルになっちまう。あの駄女神なら俺のレベル99を薄めるためにそこまでやりそうだが、さすがに今回は時間も余裕もなかったはずだ。
となるとやっぱり経験値は戦った奴が得る。戦闘に参加すればいいのか、とどめを刺す必要があるのかはわからないが……戦闘に参加しても見ているだけだとほとんど経験値がない以上は自の戦闘行為そのものが経験値を得る方法だろう。
つまり、リアナが得た経験値は俺がもらった1000倍の経験値から流れたものではなく、リアナ自身が得た経験値が俺の【経験値1000倍】の影響を受けて増幅されたものだと考えられるということだ。
「よし、狼の回収は終わりだ。まだ走れるか?」
すべてのグラスウルフを【無限収納】に回収する。陽が沈むまでにはまだ余裕がありそうだし、追われている可能性がある以上は進めるだけ先に進んでおいたほうがいい。
リアナが考えていたよりも速いペースで移動できているようだし、街まで数日かかるかもと言っていた状況もかなり上方修正されているはず。うまくいけば明日あたりには街に着ける可能性もあるからな。
「あ、はい。全力じゃなければ問題ないです」
「よし、じゃあ街に向かって走ってくれ」
「はい」
方角を確認してから再び走り出したリアナに肩の上でしばらく考え事をしていた俺は確認のために再度声をかけることにした。
「おい、もしかしてだが『奉名』すると死ぬと苦しむ以外にも何か変わったことが起きるってことはないか?」
「はい、よくご存知ですね。『奉名』をした者は、名を奉げた相手からの恩恵を受けるという話があります。剣の達人に『奉名』すると剣が少しうまくなったり、魔法の達人に『奉名』すると少し魔法が使えるようになったりするそうです」
やっぱりそうか。おそらく『奉名』をして俺との間で魂的なもの? が一部繋がってしまったことによって俺のスキルの効果がリアナにも及んでいる。
ただ、その効果はいまのところそれほど大きいわけではなさそうだな。俺の【総身強化】や【武神】スキル効果は、仮に半分だったとしても無双できるレベルになる可能性が高い。リアナは自分よりもレベルの高いグラスウルフが二十頭以上相手に、怪我ひとつ負わなかった。これは装備の効果だけではなく、俺のスキルのアシストも加わっていたからかも知れない。
ただ、戦闘時間はそれなりにかかっていたし、無駄な動きもあった。だからスキルの効果はさほど大きくない。おそらく五パーセントあるかどうかくらいか? だが【経験値1000倍】は効果がでかい。恩恵のある効果が俺の一パーセントだったとしてもリアナが得る経験値は10倍、リアナは今の戦闘でグラスウルフ二百頭を倒した計算になる。そりゃあレベルも五つくらい上がるだろう。
リアナはいきなり『奉名』なんて馬鹿な真似を選択するような早とちりの馬鹿のくせに、結果としてこれからの自分にとって最も利のある選択をしたことになるな。
単に運がいいだけなのか、俺の【鑑定】でもわからないような隠された力があるのか、それとも本当にただの馬鹿なのか……まあいい、こいつに死なれると俺も困るのは間違いないし、俺のサポートをさせる意味でも早く強くなってくれるなら、それに越したことはない。それに……育成ゲームみたいでちょっと面白くもなってきた。




