寓話 欲張りな王様
これは昔々のとある国の王様のお話です。
ある国にとても我儘で欲張りな王様がいました。
王様は皆んなが持っていないものを手に入れるのが大好きで、世界に1つと言われるものを他の人が持つ事を禁止しました。
世界で1番美しいと言われる人がいると聞けば妻にし、世界で1番頭が良い人がいると聞けば国に呼び付けました。
他にも沢山の宝石や珍しい動物も世界各地から取り寄せました。
それでも王様の心は満たされず、もっと、もっと色々なものを求めました。
中でも最も執着したのは命でした。
王様は死ぬのが怖かったし、老い衰えることが恥ずかしかったのです。
なので国中の魔法使いや錬金術師に不老不死の霊薬を作るように言いつけました。しかし誰もそんな物を作る事は出来ませんでした。
王様ははとても怒りましたが出来ないものは出来ないのです。
それでも王様は諦めがつきません。
そんな王様の耳に不死の男の話が届きました。
王様は喜んでその話を聞き、その男の人を呼びつけました。
その人は近くの国の教会の偉い神父でしたが、神様を裏切り悪魔と契約をした咎で不死の神罰を与えられたのだと言いました。
王様は喜んで神様を裏切る儀式をしました。
するとどうでしょう。
神様はとても御怒りになり、王様に死ぬことが出来ない神罰を与えました。
神罰を与えられた王様の額には恐ろしい神罰者の印が浮かび、災いが国を襲いました。
そんな理不尽が元凶で苦しんだ国民は反乱を起こし王様を糾弾しました。
王様は不死となっていたので、何をされても死ぬことがないとたかを括っていました。
国民達は数々の責苦を与えて王様を懲らしめました。
死ぬ事は出来なくても体は傷付き治りません。
痛みが引くこともなく、王様は涙ながらに助けを求めました。
しかし、誰も王様を助けようとはしませんでした。
国民の心が晴れる頃には王様は死を望む程でした。
でも王様は死ねないのです。
それは王様が欲張って欲しがった、神様からの贈り物だったからです。
新しい国に王様がいると災いがまたやって来るので、王様は遠い遠い忘れられた神罰者の大地へと流されました。
謝る事を知らない王様は、今でも死ねない事を嘆きながら生きているのかも知れません。
欲張りな王様
おわり




