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【本編完結・書籍化進行中】本当の娘が帰ってきたので養女の私は消えることにしました  作者: 佐藤真白


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学園の生徒たち

私はエルネスタ。ツール準男爵家の三女です。

今は学園の教養科の四年生として勉学に励む身です。


夏の初めの月に私達のクラスに新しい仲間が加わりました。


憧れのスピカ嬢のお姉様、ステラ様とおっしゃるそうです。


菫色の瞳に薄い金髪の短い髪、屈託のない笑顔が印象的な可愛らしい人でした。


オリエンテーションの時の受け答えは、言い回しこそ平民感丸出しでしたがハキハキとした対応で好感も持てました。


そんな彼女が今まで完璧な令嬢と呼ばれ羨望の眼差しを向けられていた人の裏の顔を教えてくれた。



彼女は奇跡の令嬢として歌劇のモデルにもなった人なので半生は私も知っています。あんなにも辛い半生の先で戻れた生家では何と義妹によるいびりがあったようなのです。


スピカ嬢は品行方正で誰にでも分け隔てなく接する聖人君子のような方だと認識していただけに裏切られた心持ちでした


オリエンテーション後のステラ嬢はスピカ嬢の元に駆け寄り叱られる事を畏れていました。それだけでもお可哀想なのにロッカーの鍵の説明では聖力の使い方で責められている様子でした。貴族でもなければ使用もできない力を、さも使えて当然と語るのは本当に底意地が悪いとは思いませんか?更にはステラ嬢の大切にされていた腕飾りをわざと隠して騒がせたとか…


私の憧れは表面を取り繕っただけのメッキだったのです。普段は深く接することがなかったから知らなかったのですがこの調子でではきっと使用人に対しても非道な態度をとっていたのかもしれないと思うと怖くなります。


きっと貴族以外は人として見ない高位貴族特有の選民意識をお持ちなのね…今までは上手に隠されてきたのですね…

私の家は貴族としては大分下位なのでその辺りの蔑みには敏感です。今までそのような心持ちを表に出してこられなかった狡猾さに驚かされます。



ステラ嬢の授業や補講にもついていかれるのは嫌味や他の生徒に自分の事を風聴されないようにする為でしょうか…それとも自分より劣る義姉をみて優越感に浸っているのでしょうか…

あれだけ憧れていた人は今や私にとっては嫌悪の対象です。



しばらくすればクラス…いえ、学園自体が二分されていました。ステラ様をお慰めして支える下位貴族が主のグループと相変わらずあの偽物の令嬢を支持する高位貴族のグループです。


ステラ様は高位貴族とは思えないほどフランクで私達のような下位貴族とでもよくお話をして下さいます。高位貴族は澄ましていて疲れる、気取っているなんて愚痴も私達と同じように言われるので親近感があります。


昔の平民時代の話や家族の話もよく聞かせてくれます。

でも、他の方がスピカ嬢について聞けば口は途端に重くなるのですからいじめは相当だったのではないかしら…


「平民上がりの私が突然家族入りしたものだからスピカは一緒に居るのを嫌がって入寮してしまったわ…私はもっと仲良くしたかったのだけれど」などと溢されてましたね…

確かにステラ様が帰還されてから直ぐに入寮していましたがそういう事情でしたのね…


他にもお兄様の結婚式の時の話だと似合わないドレスを最初は見立てられて、その良し悪しも分からないままに当日を迎えれば、着替えた後になって別なドレスを着るように促されたのだとか…それも結婚式なのに白のドレスを薦められたんだとか…本当にやる事が陰険ですよね!

更にデビュタントのお披露目の際にはステラ様に自分のお古のドレスを着せたのだとか…

「私が新しいドレスを作る事を嫌がったんだと思う…一生に一度のデビュタントのドレスだけど妹のお古を着た令嬢って私くらいかもね」と寂しく笑われるのは心が痛みました。それに、家紋入りのドレスだった為ステラ様が罰せられる可能性すらあったというのですから酷い話です。



私も姉2人が着たドレスでのデビュタントでしたが、彼女は妹のお古なんですもの…私は彼女のデビュタントには参加していないので詳しくはわかりませんけれどとても屈辱的だったのではないかしら…



高位貴族の人たちは皇室でのデビュタントでは無い姉に自身が罰せられるのも覚悟で家紋入りのドレスを譲られたなんて美談になっているそうですけれど、私から言わせたら私は皇室デビューでしたけど平民育ちのお姉様は違うのね、お可哀想だから気分だけでもプレゼントしますわ的な傲慢な考えをお持ちだとしか思えませんわ!


こんなにも純粋で貴族の穢れを知らないステラ様を私は守らなければいけないのです!










俺の名前はレオニール。帝都でも最近名の知れ出した生地商会の跡取り息子だ。


学園は基本貴族様が多いがそれは魔術科や騎士科の話で、商業科や経理科なんかは裕福な商家の奴らが殆どだ。例に漏れず俺もその1人。今は商業科の5年に在籍している。



この学園は帝国の縮図なので在学中に商家の倅に求められるのはコネクション作りだ。


そんな中あんまり俺は太いコネを作れずにいた。

まぁ、ほとんど幼少期から貴族ってのはお抱えが決まってるもんだから新規の参入が難しい…加えて俺の家は最近帝都で名が通ってきたばかりの地方商会。地元の貴族は贔屓にしてくれるが中央貴族には新参者に見えて警戒されているらしい。要はまだ実績が足りない。



そんな俺にも転機が訪れた。エメンタール家の奇跡の令嬢の入学だ。

ここ最近の注目株で大領地の領主一家ともくれば影響力は計り知れない。おまけに貴族社会から縁遠かったらしく柵も偏見も無いとくれば動かない道理がない。



俺は早速観察と接触を試みた。

観察して見ていれば彼女のイイ性格には舌を巻いたね。性格が良いんじゃ無い。イイ性格なんだ。


じわじわヘイトを募らせていって相手に罪を擦りつける系の強かな女だった。色んな奴を見てるけどあんだけ神経図太いのは中々いないな。


そんで、俺は接触に成功した。自分で言うのも何だけど、俺って顔がいいんだよね〜性格も商家育ちで社交的。

そんなんだから奴さんのシンパの下位貴族で懇意にしている令嬢のお茶会の招待状をゲットし近づけばすんなりとお友達になれた。


後は自分でもびっくりするくらい気に入られて実家の商会も使ってもらえた。後はちょーっと悪い遊びもしたけれどお互い様ってやつだし、お互い一線は引いていた。



俺が望むのは一時の火遊びではなく末長いお付き合いなのだから…








私はメアリー。エラルド公爵家に列なるものです。

はい、大叔父がエラルド公爵様なだけで我が家はお父様がお母様の男爵家に婿入りされているのであまり力のない地方貴族です。私自身5人兄弟の末子で学園に入学出来るだけありがたいと思っています。


入学後はタウンハウスなど持たない弱小貴族の私は入寮して生活をしています。




入学入寮して直ぐに貴族社会ではビッグニュースがありました。私達が小さい時に頻発していた貴族子弟の誘拐事件の被害者が発見され、生家に帰還するというニュースでした。それも大領地の領主、名門エメンタール家の令嬢だと言うから驚きです。


私にはあまり関係が無いだろうと傍観していれば寮にはエメンタール家の養女姫が入寮してくるし、半年後には帰還した奇跡の令嬢と机を並べて学ぶ間柄になりました。




心情的には壮絶な人生を送られてきたステラ様には同情や労りの念に絶えません。共に学べばやはり貴族教育の遅れが見て取れますが頭は良い方だとお見受けします。



スピカ様はステラ様が入学されてからはすっかりと悪女と認識され特に私達のような下級貴族からは嫌われておいでです。


私自身は寮での触れ合いもありスピカ様を嫌いにはなれないのですが周りの方との足並みを揃えるのも生き抜くための力なき者の知恵と申しましょうか…




はい、はっきりと申し上げればステラ様方に肩入れしている状況でございます。

スピカ様は決して悪い方では無いと思っているのですが、何故か悪女として最近の評価はされておいでです。それならば奇跡の令嬢に肩入れするのは致し方ないと思っていただく他ないのです。


そんな私にも気をかけて下さるスピカ様は本当に申し訳ないと思いつつも今日もステラ様やそのお友達の方々とお茶会をしてきました。


私には力はないのですがエラルド公爵と血縁がある事が判るとステラ様には何故か気に入られ重用されるようになりました…貴族的な見返りが怖い今日この頃です…


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― 新着の感想 ―
いつも更新を楽しみにしています。 少し疑問なのですが「思いは違えど」の方ではステラは薄い茶色の髪と記載されていましたが、こちらだと薄い金髪とあります。 どちらが正しいのでしょうか? ライトブラウンあた…
なるほど、ステラの派閥も一枚岩じゃないんだ? なんか面白くなってきた。www でもこういう話はスパッと終わらせて欲しいかも? マイナス感情のお話は、長引くと嫌気が差すよねぇ。
この展開いつぐらいまで続きますかね?読んでてきつい
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