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【本編完結・書籍化進行中】本当の娘が帰ってきたので養女の私は消えることにしました  作者: 佐藤真白


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24/80

ファーストダンスはフィアンセと?

これは一体どういった状況なのでしょうか?

私は今離宮のテラスで第三皇子殿下と2人きりでお茶を頂いております。勿論侍女や護衛が控えている状況では御座いますが…


気まずさに庭園に向けていた顔を戻すとニコニコとした人懐っこいお顔の皇子殿下と目が合います。

「どうされました?スピカ嬢?」

「いえ…殿下とカブァリエを組ませて頂ける光栄に心が先に踊り始めてしまったようです」

そう、私のカブァリエは第三皇子殿下であるアーサー殿下だったのです。妹君であるアナ様とは同じ瞳の色ですが琥珀色の落ち着いた髪色で整った顔立ちですが他の皇族方よりも親しみのあるお顔立ちです。

第三皇子殿下だけお母君が第二皇妃様であるからかも知れません。


「僕がカブァリエで驚いた?僕も話を聞いた時には驚いたんだよ〜!でも安心して、君はまだ候補の1人だ。僕の婚約者候補は他に2人いる。君を入れたら3人だね。でも僕の意見が通るなら君がいいなって思ってるよ。君の優秀さは君の兄上達からよく聞いてるからね」


そうなのです。私は何故か第三皇子殿下の婚約者候補になってしまったようなのです。今回のデビュタントはてっきりアナ様のお友達の意味合いが強いと思っていたのです。それに兄様達から第三皇子殿下には近づくなとお耳にタコが出来るほど聞いていただけに戸惑いが大きくて、光栄な事なのですが心が追いついておりません。


今はそれぞれ紹介されたパートナーと意見交流の時間です。皇子殿下は素敵な方だとは思いますが女性に軽率な所があると、兄様達が口を揃えていらっしゃったのでどうしても警戒してしまいます。そんな私の気持ちを他所に殿下は学園の話や隣国の話などをしてくださいます。


「どうやらスピカ嬢に警戒されているようですね…フレット辺りから何か言われましたか?」

ドキリとしましたが私は至って平然とばかりに「お兄様達からは殿下の事はお聞きしたことが何度も御座いますが、今は只々緊張してしまっているのですわ。ご気分を害されたのであれば謝罪致します。」

頭を下げようとすれば制されます。


警戒する私に然もありなんとアーサー殿下はあまり気に留めていらっしゃらない様子です。

半刻ほどの歓談時間が終了し会場に戻れば他の皆さんは自分のカブァリエと仲良くなられている様子が見て取れました。


驚く事に今回のデビュタントでは皇族3人の婚約者候補の発表を兼ねているそうなのです。

1組目は私とアーサー殿下。もう1組はミッツバーグ公爵令嬢、パトリシア・クラウス・ミッツバーグ嬢と第二皇子殿下ガヴェイン殿下で、此方はほぼ確定のお話だそうです。そして3組目は皇女アルテラ様と隣国のバリーンバース王国王太子殿下との婚約だそうです。王太子殿下は御歳14歳と皇女殿下とも年齢家格ともに釣り合いの取れた政略的婚約です。現在我が国の学園へと遊学でいらっしゃっているのはお聞きしておりましたがこんな慶事につながるなんて驚きです。皇女殿下も初耳だったそうでとても驚いているのが印象的でした。しかし、残念ながら今日の会には参加されないそうです。今後も警備の観点から皇女様と特別指導が実施されるのだとか…なのでお二人揃ってお会いする機会はほとんど無いのかもしれません。



他の方々のカブァリエはそれぞれシャーシャ様はコロイド侯爵トーマス様、ユーナ様はエボン伯爵令孫ザンド様、トットゥーナ子爵令息ギャラハン様はモルガン子爵妹嬢ヴィヴィアン様、ロッシーニ男爵令息タイム様はステーキン男爵令嬢ローズマリー様とそれぞれカブァリエとなられました。こちらは特に婚約の話は無さそうですが今後のご縁が強くなりそうな組み合わせです。





一同が戻ると先程まではいなかった長身の女性がフロアにいらっしゃいます。

「お久しぶりの方もお初の方もいらっしゃいますのでご挨拶申し上げます。私ダンス指導担当のロッテンマイヤーと申します。これから皆様には基本のワルツを踊っていただきます。皇女殿下の相手は私が務めます。今日は初めてですのでどの程度お家で習っておられるのかの確認だと思ってください。エスコートは省略してフォールドから参ります。構えて下さい。」そういうと2度手を打ち移動を促されます。


いきなりの開始宣言ですが、慌てる事なく私は会場の小扉の近くに陣取ります。アーサー殿下も慣れた様子で手をとられ、音楽が流れ始めます。音楽に合わせ私は一歩足を踏み出すとアーサー殿下のリードで踊り始めます。ダンスはお家でも当然のように習っていて、リズムとステップは体が覚えています。アーサー殿下もすでに社交デビューされていて経験が豊富なのでしょう。問題もなくリードしてくださいます。


家ではお兄様達が代わる代わる私とダンスの練習をしてくださるので多少の癖には私も合わせることが出来ます。アーサー殿下はイタズラっぽく私の耳元で「随分と踊り慣れているんだね?」と囁かれます。私はあまりのことにステップを飛ばしてしまいそうになります。「揶揄うのはおやめくださいまし。3人のお兄様達がいるのは殿下もご存知でしょう?」私は必死に抗議致しますがアーサー殿下は私の反応が面白かったのか耳元でその後も何度も囁きます。私はこんなに近くで異性に話されることが初めてで戸惑いや気恥ずかしさでいっぱいいっぱいになりながらダンスを終えました。いつもの何倍も疲れました。

「お戯れは大概に致してください!」語気を強めて制すると、

「ダンス中に好きな女性を口説くのなんて社交界では当たり前さ!今から慣れておかないとね〜」

などと返されます。この人子供です‼︎

私が呆れ返っているとロッテンマイヤー女史に集合するように呼ばれます。

そこで「誰とは申しませんが紳士的で無い対応は今後お控えくださらないとカブァリエの交替も検討致しますよ!」と釘を刺して頂けたのでホッと致しました。


基本のワルツは全員合格を頂けたのですが、お披露目の夜会では特別なステップのダンスをデビュタント全員で披露するそうで、そちらのダンスレッスンが今後のこちらでの課題となりそうです。



ダンスレッスンが終わるともう夕刻が目前です。本日の工程の終了を聞き、皆様と共に帰り支度です。

皆様に別れを告げ控え室で汗を拭き着替えを済ませて部屋を出ると後ろから声をかけられます。

「さっきはごめんね!赤くなる君が可愛いかったからさ…お詫びに今度デートでもしようよ〜」

「お父様とお兄様達が許可して下されば考えます」

私は珍しく怒っているのです。それでも食い下がる殿下を振り切るように私は馬車に乗り込みました。



家に帰ってことの顛末を家族にお話しすると家族みんなが呆れ返り怒っているようでした。いえ、お父様は居心地悪そうに小さくなっています。婚約者候補の打診の許可はお父様が出したのですから家族総出の吊し上げをうけているのでしょうがありません。緘口令が敷かれていたとはいえ当人である私にくらい伝えてくれればよかったのです。心の準備もままならなかった腹いせにお祖母様特製の疲労回復茶(激苦)を3日間差し入れして差し上げました。きっと疲労で頭が回っていなかったのでしょうとの配慮です。





ですが、その後のレッスンの度に殿下は軽口は叩くのですが紳士的な指導もしてくれる事がわかりました。初めてのダンスステップは古典の要素が強く苦戦していると、「ここのステップは僕に預けるようにして、この動きの時には逆に緩めると踊りやすいと思うよ。」と身振り手振りを交えながら教えてくださいました。それも的確なアドバイスでしたのでお礼を言うと「僕のデビュタントの時苦戦したから分かるよ〜他のメンバーも大変だと思うからひと足先にマスターして教えに行けたらカッコよくない?」なんてウィンク混じりに言うのです。なんだか子供っぽいだけで憎めない人なんだと知っていけました。

お忍びのデートというものにも何度か誘われて出掛ける機会もあり、最初のような嫌悪は実は早い段階でなくなっていました。まぁ、お兄様が聞きつけて何度か一緒に出掛けるハプニングもありましたけれど…殿下はその出来事も楽しかったと笑っていました。レッスンの日にはダンスレッスンが予定されていなくても一緒にマナーレッスンを受けたりエスコートして下さったりとなかなかに忠実な一面も垣間見れ好感が持てました。まぁ、軽口は相変わらずなのでこれはもう性格でしょう。

それを知れば気の良い兄の1人のように思えてきたのです。



そんなこんなでデビュタント同期組とは仲良く切磋琢磨し、時にはお互いのお家に勉強会の名前のお泊まり会をしたり刺繍をしたりと過ごす間にデビュタントは目前になっておりました。

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