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罪の記憶11


「先生、すみません! 早く来てください! 女川君が初瀬さんに乱暴しているんです!」


 片桐くんがそんな事を大きな声で言いながら、教室に入って来たのは昼休みのことであった。


 教室中が慌てた片桐くんの様子に、一気に静寂と化す。


 片桐くんの発言に、さっきまで談笑していたクラスメートたちが一斉に固まる。かくゆう私も、そんなクラスメートのひとりである。


 透が初瀬さんに……乱暴!?


 片桐くんはなにを言っているの? 


 透は初瀬さんに乱暴なんかしてない……。乱暴してるってのは冤罪で、みんなが誤解してるだけなんじゃないの?


 だから、2人で透の容疑を晴らそうって色々動いていたのに……。

 だって、これじゃあ……。


 まるでウワサが本当だったみたいじゃない……!


「片桐くん、その話は本当なんでしょうね? 嘘や勘違いは許されませんよ?」


 教室にいた先生が片桐くんにその発言の真偽を尋ねる。


 先生だけではない。片桐くんに話が聞きたいのは私も同じだった。先生に問い詰められても、片桐くんは少しも動揺した様子はない。


「ええ、先生。嘘なんてついてません。証拠だってありますから」


 すると、片桐くんは制服のポケットからスマートフォンを取り出す。


「こちらに女川くんが初瀬さんを襲っている時の様子が一部始終、写っていますから」


 嘘……。嘘よ!


 透がそんなことするわけないッ! 


 透はボーっとしてて、なに考えてるか分からないところはあるけど、自分から女の子を傷付けることなんてない……!


 でも……でも……でも、もし本当にやってたら……。


 透のことを信じたいと思っているのに、私はどこかで透がやってしまっていた場合のことを恐れている。


「では、その女川くんが初瀬さんを襲っている瞬間が写っているという動画を見せてもらいますよ?」


「ええ、構いません」


 片桐くんは特に抵抗することもなく、先生にスマホを渡す。片桐くんの飄々とした姿が、私の不安をさらに煽ってくる。


「……それでは見ますよ」


 先生が片桐くんのスマホを操作して、動画ファイルの画面に切り替える。先生が持っているスマホは、位置的に後ろから覗けば私にも見ることができる。


 透が初瀬さんを襲っている様子の動画……。


 とても気になる……。


 でも、見てしまったら透のことを信じられなくなるかもしれない。


 もし、本当に透が初瀬さんを襲っていたら。

 透を助けようとした私が間違っていたという事になってしまう。


 そうなった時、私は透の味方でいられるの?


 私自身にも私が分からない。


 それでも……現実をしっかり直視しないと……!


 覚悟を決めた私は先生の後ろ、スマホの画面が覗ける位置へと移動する。ちょうど、私が移動したタイミングで先生がスマホの再生ボタンを押す。


 ついに、動画が始まる。


「キャーーーーーー!!!!!」


 動画は初瀬さんの悲鳴から始まった。おそらく、角度的に教室の扉から覗くように撮られたもの。


「ッ!」


 動画を見て、私は驚愕に息を呑む。


 スマホの画面には初瀬さんを押し倒す透と、押し倒されて悲鳴を上げる初瀬さんが写っていた。透の手は初瀬さんの胸の位置にある。


 それは間違いなく、透が初瀬さんに乱暴を働いている瞬間の動画だった。


 なんでっ! どうしてなの……!


 透ッ……!


 透が初瀬さんを襲っていた。その事実に、ずっと瀬戸際で耐えていた私の心が折れる。


 何より、私が動揺したのは透が初瀬さんを襲っていたことではなく、自分以外の女の子に透が興味を持ったという事実だ。


 自分以外の異性に向けられた関心に、自分でも驚くほど動揺を隠せない。


 いやっ! 私以外の女の子に関心を向けないで!


 そんなことを考えている場合ではないのは理解している。


 それでも、心が理性を上回り、深い悲しみが私を襲う。


「誰かッ! 誰でもいいから助けてーーーーッ!!!」


 悲しみに暮れる間にも、動画は流れ続ける。スマホからは初瀬さんの助けを求める声が、静寂と化した教室中に響く。


 ーーガチャ。


 不意に、扉を開ける音とともに悲鳴が消える。すると、すぐに聞き覚えのある男の声がスマホから聞き取れる。


「女川透……お前の犯行はバッチリ目撃したぞッ!」


 声の正体はすぐにわかった。初瀬さんを襲う透を糾弾したのは、クラスメートの片桐颯太くんだった。


 片桐くんの登場に動揺する透が目に入る。


「女川透! 今すぐ、初瀬さんへの乱暴を辞めるんだ!」


 片桐くんが続けて、透の行為を咎めたところで動画が終了する。


 時間にして、20秒足らずの動画。その短時間の動画に、片桐くんが言うところの透が初瀬さんを襲っている証拠が写っていた。


 嘘よ……! こんなの嘘よ……!


 こんなのって……!


 こんなのって無いよ……!


 信じていたことが嘘っぱちで、信じていなかったことが真実だなんて!


「さあ、証拠は見せましたよね? なら、早くボクと一緒に来てください先生!」


「……わかりました」


 事態は混乱する私を置いて、どんどんと先に進む。片桐くんに続いて、クラスメートたちは教室を次々と出ていく。


 私も……行かなきゃ!


 透に……会わなくちゃっ!


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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