罪の記憶10
ーーガチャ。
先生を呼びに行くと言って出て行っていた片桐はしばしの時間の後、先生を引き連れて戻ってきた。
但し、俺にとって予想外だったのは、片桐が連れてきたのは先生だけではなく、クラスメートも一緒だったことだ。おそらく、クラスメートのほとんどが集まったんじゃないだろうか?
続々と視聴覚室に入ってくるクラスメートの中には白雪の姿も見える。
クラスメートが増えたことによって、何となくやり辛くはなった。しかし、クラスメートが居ようがやることは一緒だ。俺は自分の無実を証明するだけだ。
ざわざわと騒がしい生徒を手で制し、先生が前に出てくる。俺のクラスの担任教師だ。
「女川君! 話は聞かせて貰いましたよ!」
どうやら、片桐はすでにどういう事があったかを話したらしい。
「そうですか。だったら話は早いですね。実はーー」
「アナタッ! 初瀬さんに乱暴しておきながら、罪を認めないなんて恥を知りなさいッ!」
「は?」
「罪を認めないだけならまだしも、乱暴を止めた片桐くんに暴力まで振るったそうじゃないですか!」
「ッ!」
先生の言葉に俺は片桐に視線を向ける。片桐を見ると、その頬が赤くなっている。
片桐のヤツ、自分の都合のいいように先生に報告したのか! 片桐が先生に嘘の報告をする可能性を失念していた。
それに、あの頬の傷。視聴覚室を出た時には、あんな傷はなかったはずだ。
片桐のヤツ……俺に罪を着せやすくする為に自分で傷までつけたのか!
片桐はわざとらしく頬をさすり、痛がるポーズを取る。痛がる片桐を見た女子たちが心配して「片桐くん大丈夫?」、「女川君ひどいよねー」などと声を掛けている。
イケメンの面目躍如とでも言うべきか。ちょっと被害者ぶるだけで心配して貰えるなんて、イケメンは得だな。
片桐には確かに腹が立つ。だが、今は片桐より自分の罪を晴らすことが先だ。
「先生、俺は初瀬に乱暴なんてしてませんし、片桐に暴力も振るってません。すべて誤解なんです」
「まだ言い訳をするつもりですか! 片桐くんのスマホで撮った動画を見せてもらいましたよ! 確固たる証拠があると言うのに、罪を認めないつもりですか!」
「ッ! いっ、いやその動画の件もおかしーー」
「言い訳はやめなさい!」
「……!」
なっ、なんだよソレ……。
片桐の言い分は信じて、なんで俺の言い分は聞いてくれないんだよ……!
話せば信じてもらえると思っていた……。
だが、俺の言葉は話す前に否定され、弁解することすら許されない。
弁解のために用意していた言葉は、音として形になることすら無く、喉の奥に消えていく。
言い訳すら許されない状況に憤る俺の前に、一人の女子生徒が立つ。俺に存在しない罪を着せた初瀬凛だ。
「女川君……もう辞めよう。私は許すから、ちゃんと罪を認めようよ!」
初瀬……!
コイツは何を言っているんだ?
俺に罪を着せたはずの初瀬が……俺の罪を許す?
そもそも、こんな状況になったのはお前のせいじゃないか!
冤罪をかけた人間から庇われるという事態に、頭が混乱する。頭がクラクラして思考が上手くまとまらない。
「ほら、初瀬さんもこう言っているんだ。女川君、しっかり初瀬さんに謝ってからやり直そうよ」
ハハハ……。今度は片桐くんから庇われちまったよ……。
俺をハメた2人から庇われる?
本当、どういう状況だよ。周囲のクラスメートも片桐と初瀬に同意するように俺に敵意ある視線を向けてくる。
「ほら、片桐くんも被害者の初瀬さんだってこう言ってるんです。女川君、初瀬さんに謝りなさい。私もこの件を大事にしたくはありません。しっかり謝れば、誰もアナタを責めたりしませんから」
さすが先生。被害者だけで無く、加害者にも気を配りますってか。ホント、大した人格者っぷりだよ。
見当違いの結論を導き出したことを除けば、ホント最高の先生じゃないか。
ハハハ……。
謝るか……。
もういっそのこと、謝ってしまおうか? 謝ってしまえば、この件を終わりにしてくれるってんだ。
謝っちまった方が楽でいいじゃないか。
誰も俺の味方なんてこの教室にはいないんだから。
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