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 真下で波打つ黒い海に銀の鰭が沈んだ時、入れ替わるように人魚の顔が浮上した。

乱雑に動くオレンジの眼球が、真上を越えるジェドを捉える。




 跳躍したジェドを落とすまいと、カイルは限界まで腕を伸ばした。

シェナはジェドを喰らおうとする人魚に怒りの目を剥くと、忽ち大声を張り上げる。




「どいてーーっ!!!」




喉を焼くほどに熱く放たれたそれは、炎の如く太い旋風を巻き起こした。

漁船を大きく揺らすと、カーブを描くように海面を這い、落下するジェドを補助するように浮かばせる。

ジェドは危機一髪、船体を蹴って距離を詰めていたカイルの手首を掴んだ。

ジェドを引き寄せたカイルは、腹にロープが減り込む痛みに声を漏らす。

2人はそのまま船体に衝突し、吊り下がって落下を免れた。

しかし――続く旋風が船体を舐めるように吹き上がり、2人を宙に弧を描きながら高々と舞い上がらせる。

それは息継ぎをする間も与えない。

抱き合う2人は目を見開き、唖然とする。

あろうことか、漁船の上の帆桁(ほげた)が真下にきているではないか。

このまま漁船内に落ちると見たカイルは、ジェドを強く引き寄せる。




「縮め!」




更に背中を漁船に向け、我が身を下に受け身の体勢になった。

急接近する人々の悲鳴と漁船内まで、僅か数メートル。

カイルは恐怖に叫ぶジェドの頭を抱え、目を瞑った。






 「受けろ受けろ!」




慌てふためくスタンリーの声は、皆の騒音に激しく掻き消される。

落下する2人を見上げては、全員が纏まって腕を広げた。




 シャンディアとビクターが駆け上がった途端、凄まじい転倒音に忽ち目を瞑る。

フィオとシェナは抱き合い、顔を伏せていた。

顔を覆ってしまったスタンリーは、手の隙間から様子を窺う。




 辺りが(ようや)く静まり、皆は2人を見事受け止められて安堵する。

グレンとマージェスを土台に、多くの腕が合わさる中で見事、納まっていた。




「ああ……おっちゃんの腹って、便利な時もあんだな……」




カイルに包まれたジェドが、冷え切った空気を和ませようとするのだが




「そらどうもな!勝手な事ばっかしやがって!

下りろほら!さっさと!」




マージェスは上に圧し掛かる全てを、半ば乱暴に蹴り飛ばしながら立ち上がる。






 漁船の揺れが治まり、フィオは海を調べるが、人魚の姿はもうどこにもなかった。




 シャンディアは顔を強張らせながら、海を覗く。

黒い波を立てるそこに、微かに滲んで漂う緑の血。

強風は今も絶え間なく吹き続け、漁船を押す速度が増している。

来る時とは違い、酷く冷たく、凍えそうだ。




「……風」




この異変に呟いたシャンディアは、肩越しに恐る恐る振り返る。

その先には、4人に寄って集って心配する大人達の輪から離れ、恐怖と怒りを表情に滲ませるシェナがいた。

息切れの様子から、喉を痛めているようだ。

彼女の強い感情によって生じた風は、刃と化したか。

シャンディアは髪の隙間から、小さく震える彼女を見つめた。








イメージはカマイタチです

英語・日本語 共にしっくりきませんでしたので

そのワードは使いませんでした


さて 折り返し地点にきました

次章では 冒険の入り口を開きます

まずはここまで ついてきて下さりありがとうございます

これより 次作「不死伝説」まで戦いが続きます

よろしければ 彼らの旅に最後まで

付き添って頂けますと幸いです

よろしくお願いいたします




代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


9月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




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