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「追いつけ!」




ビクターはジェドに放つと、シャンディアを船体の扉の梯子に誘導する。




「急いで!」




シェナの叫びに、(ゆる)んでいた帆が目一杯に張られた。

強風はジェドを置いたまま、漁船を押し始める。




「あいつまたっ!何やってる!」




マージェスは、またも勝手な行動を取るジェドに焦燥する。




 漁船は船着場に沿って進行していた。

ジェドが駆けて飛び乗るまでの距離は、あるか。




 大人達がジェドを叫ぶ横で、ビクターはじっと船体の横扉で待機し続ける。

その時、判断したカイルが漁船の最後尾に駆け、係留ロープを掴む。




「結べ!」




傍にいたマージェスが咄嗟に受け取ると、船内の適当な柱に結んで固定し始める。

それを任せる最中、カイルは船首の横に登り、腰にロープを結びながら頃合いを待った。

刹那、真下に大きな影が揺れ、カイルは転落しかかるのをどうにか免れる。

鋭利な銀の光から遂に、それは姿を現した。




「やあどうも。二度とって言ったのに懲りねぇな」




彼は浮上する人魚の顔に引き攣り、苦笑いする。




 カイルを捉えた1体は、船体に爪を立て、口から泡を吹きながら悲鳴を上げた。

そこへ、脇から数個のアスファルトの欠片が投げつけられる。

人魚は威嚇の牙を剥きながらそちらを振り返ると、ジェドは偶然拾った錆びて曲がった鉄棒を投げ、人魚の額に命中させて沈めた。




「走れジェド!飛べ!」




カイルは痺れを切らし、ロープで船体を伝う体勢に入る。




 ジェドは徐々に離れていく漁船を気にしながら、鉄棒を当てた人魚にも目を光らせていた。

人魚は案の定、再び顔を見せると辺りに視線を這わす。

彼はその様子に、口笛を短く吹いた。




「目がいいんじゃねぇのか?こっちだ!」




挑発された人魚は牙を剥きながら悲鳴を上げると、いよいよ尾鰭で水中を蹴って飛躍する。

更に別の方角から数体が跳ね上がり、着地した。






 ビクターは、つい体が飛び出しそうになるのを堪える。

ジェドが必ず戻ると信じ、遠ざかるその姿を見守り続けた。

2人きりになった際の、彼の言葉を噛み締めながら。

その時、漁船の後部では、間に合わないと思ったカイルがロープを伝って船体の半ばまで下りて飛び移ろうとしていた。




「待てカイル!」




つい、声が出た。

あと少し、任せてもらえないだろうか。

彼は、この襲撃をきっと止められるだろうから。




 カイルはビクターの声で動きを止めるが、心臓は今にも口から出かかっている。




「もーっ!早く乗んなさいよあんたーっ!」




シェナが腹を立て、顔を真っ赤にした時、突風が船着場を一掃するように吹き抜けた。






 ジェドはそれに少々煽られるも、風は主に人魚を吹き飛ばし、陸を派手に転がした。

片や漁船は、今すぐ飛べばカイルを掴める位置にまだいる。

間に合わせてみせる。

ジェドは威嚇する人魚を睨んだ。









代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


9月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




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