(21)
「何だよ」
ビクターは、身構えてしまうような話し方をするジェドを急かしてしまう。
大人達がそうせず聞いてくれるように、迷いながら自分を打ち明ける友達にもそうしてやりたいのにだ。
今の彼を見ていると、ここに残ろうとしたライリーが重なる。
同じような事があろうものなら、自分はマージェスのように止められるだろうかと、気が急いていた。
しかしジェドは、顔を上げると勇ましく光る目を向ける。
「俺が引き付ける。
心配すんな、どこに何がくるか分かっからよ」
予想外の返答に、ビクターは拍子抜けした。
とは言え、その潔い様子に胸を撫でおろす。
それはどういう策なのか、そのままジェドを追いながら聞き出した。
そうしている内に浜が見えてくる。
2人は警戒し、ガラクタが散らばる光景を前に足を止めた。
「……怖ぇよ全く……皆、そうだと思ってたのに……」
話し終えた後、ジェドの呟きが静寂を切る。
ビクターも、その気持ちに覚えがあった。
どうして、感じるものが伝わらないのか。
自分の説明の下手さが邪魔をしているのかとも思ったが、時が経つにつれそうではないと悟った。
自分が見ているものが、皆には見えていないという事実を。
自分にしか見えていないものがあるのだという事を。
ならば、その何かから皆を守ってやれるのは自分しかいない。
それをより強く思ったのが、空島の魔女が陽炎を放った時だった。
だが、陽炎の接触を免れたのは、女王リヴィアが炎で焼き消したお陰だ。
そう、自分はそれから逃げる事しかできないという事もまた、焼き付けられたのだ。
今でも、それを思い出すともどかしい。
互いに別の景色を見て黙っていたその時――
捉えられない筈の鏡の帳が光った。
2人は目を凝らすと、波打ち際の辺りの宙にまた、銀の斜光が数本走ると歪み、消える。
「行くぞ」
来るかもしれない。
危機を察したビクターにジェドは頷き、後に続いた。
シャンディアの話を聞き終えた南の者達は険しい。
静寂の中、不穏に満ちた数々の顔が、篝火に揺らぐ。
そこへ、誰よりも暗い影の中で俯くレオが、切り出した。
「そのコアって奴の件が解消すれば、この子達も助かるかい?」
4人を想う彼の質問に、シャンディアはそっと頷く。
彼は間を置いた後、小さな溜め息を吐いた。
「歪な何かを感じる事や、将又、そんなものに狙われるのは億劫だろうさ……俺には昔、そんな風に思える相棒がいた……何もできなかったんだ……そいつに沢山、助けられたのに……こんな事態になるまで、とうとう会えなかった……その時の俺が、今の俺だったらって思うよ……どうしようもない事なのに、ずっと……」
レオは、豊かな地球だった頃を思い出しながら、レンズの奥で過去を悔やむ。
家族も、多くのサポーターもいたが、中でも飛びぬけて気が合う相棒がいた。
そしてまた、最強のライバルだった。
口にするだけで目頭が熱くなってしまう程、それらが失われた事を未だに受け止め切れていない。
代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
9月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します




