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「何だよ」




ビクターは、身構えてしまうような話し方をするジェドを急かしてしまう。

大人達がそうせず聞いてくれるように、迷いながら自分を打ち明ける友達にもそうしてやりたいのにだ。

今の彼を見ていると、ここに残ろうとしたライリーが重なる。

同じような事があろうものなら、自分はマージェスのように止められるだろうかと、気が急いていた。

しかしジェドは、顔を上げると勇ましく光る目を向ける。




「俺が引き付ける。

心配すんな、どこに何がくるか分かっからよ」




予想外の返答に、ビクターは拍子抜けした。

とは言え、その潔い様子に胸を撫でおろす。




 それはどういう策なのか、そのままジェドを追いながら聞き出した。

そうしている内に浜が見えてくる。

2人は警戒し、ガラクタが散らばる光景を前に足を止めた。




「……怖ぇよ全く……皆、そうだと思ってたのに……」




話し終えた後、ジェドの呟きが静寂を切る。

ビクターも、その気持ちに覚えがあった。




 どうして、感じるものが伝わらないのか。

自分の説明の下手さが邪魔をしているのかとも思ったが、時が経つにつれそうではないと悟った。

自分が見ているものが、皆には見えていないという事実を。

自分にしか見えていないものがあるのだという事を。

ならば、その何かから皆を守ってやれるのは自分しかいない。

それをより強く思ったのが、空島の魔女が陽炎を放った時だった。

だが、陽炎の接触を免れたのは、女王リヴィアが炎で焼き消したお陰だ。

そう、自分はそれから逃げる事しかできないという事もまた、焼き付けられたのだ。

今でも、それを思い出すともどかしい。




 互いに別の景色を見て黙っていたその時――

捉えられない筈の鏡の帳が光った。

2人は目を凝らすと、波打ち際の辺りの宙にまた、銀の斜光が数本走ると歪み、消える。




「行くぞ」




来るかもしれない。

危機を察したビクターにジェドは頷き、後に続いた。






 シャンディアの話を聞き終えた南の者達は険しい。

静寂の中、不穏に満ちた数々の顔が、篝火に揺らぐ。

そこへ、誰よりも暗い影の中で俯くレオが、切り出した。




「そのコアって奴の件が解消すれば、この子達も助かるかい?」




4人を想う彼の質問に、シャンディアはそっと頷く。

彼は間を置いた後、小さな溜め息を吐いた。




(いびつ)な何かを感じる事や、将又(はたまた)、そんなものに狙われるのは億劫だろうさ……俺には昔、そんな風に思える相棒がいた……何もできなかったんだ……そいつに沢山、助けられたのに……こんな事態になるまで、とうとう会えなかった……その時の俺が、今の俺だったらって思うよ……どうしようもない事なのに、ずっと……」




レオは、豊かな地球だった頃を思い出しながら、レンズの奥で過去を悔やむ。

家族も、多くのサポーターもいたが、中でも飛びぬけて気が合う相棒がいた。

そしてまた、最強のライバルだった。

口にするだけで目頭が熱くなってしまう程、それらが失われた事を未だに受け止め切れていない。









代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


9月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




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