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 「なあ、なんでそんな色なんだ?」




ビクターは、焼け焦げたようなレンズをひっかける男性に声をかける。

そこへジェドが、その問いを飛び越えるように前のめりに覗き込んだ。




「サングラスさ」




それを知ってはいても、ガラスを焼いたにしては色が均等な上に濃い茶色をしている。

本当に見えているのかと、4人はただただ凝視した。

そしてやっと、彼の穏やかな目が瞬くのが見える。




「妙だ。今は夜だぜ?ここは火しかない。

太陽の光はない」




ジェドの疑問に、男性は優しく称えた。




「そう。鋭いな。

俺の場合、明るいものを見ているとよくない目をしてる」



「何だそれ!?」




そんなビクターの反応を、その彼は面白がった。




「あの頃は、"日陰のレオ"で有名だった。よろしく。

君達だな?噂の冒険者で、悪戯っ子ってのは」



「ひかげのレオー?」




可笑しな名前だと顔を歪ませるジェドに、レオは再び笑う。

4人の話は早くも、漁船から移動するスタンリーやレックスから聞かされていた。

しかし南の者達は、彼等が経験した事を真っ直ぐ受け入れるのに、少々時間がかかっている。

ただ、先程の襲撃や目前のシャンディアの存在に、理解を促されていた。






 ライリーの施術が止まると、淡々と道具を消毒しながら、片付け始めた。

漁師達はその素早さに感動するが、共に住む者達は相変わらずだと話す。

そんな皆の会話も他所に、彼女はその場を去ろうと踵を返すではないか。




「ライリー待ってくれ」




スタンリーの声に、彼女は背を向けたまま立ち止まる。




「わし等は今、人魚の群に狙われておって、このままここにいたらまずいって話じゃ」




信用しない訳ではない。

彼女もまた、ここへ来る最中に不思議な現象を見て感じているものがある。




「いなくなった親子が喰われた……

次はわし等だろうと、その子が……」




ライリーがジワジワと肩越しに振り向くと、シャンディアと目が合った。

彼女は大きな灰色の眼を揺らしながら頷く。

だがライリーは首を落とすように目を逸らし、顔は髪で隠れてしまう。

そして、僅かに見える口元が動いた。




「そう……それはそれは……」



「「ライリー!?」」




それでも去ろうとする彼女に、一体どういうつもりかと仲間達は慌てて止めようとする。




「行けばいい……」




意味が分からない言葉を残し、彼女は外に数歩出たその時――




「来てもらう」




唯一、射止めるように飛び込んだマージェスの声に、彼女は驚きながら小さく振り返る。




「来てもらう。あんたも、守られるべきだ」




火花の音に紛れる、他の者とは違ったブレーキ。

何故、そんな言い方をするのか。

ライリーの目は徐々に警戒するように尖る。

出会って間もない者が、何をそう熱苦しくなる事があるのだ。

こんな自分なんかに。









代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


9月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




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