(18)
「なあ、なんでそんな色なんだ?」
ビクターは、焼け焦げたようなレンズをひっかける男性に声をかける。
そこへジェドが、その問いを飛び越えるように前のめりに覗き込んだ。
「サングラスさ」
それを知ってはいても、ガラスを焼いたにしては色が均等な上に濃い茶色をしている。
本当に見えているのかと、4人はただただ凝視した。
そしてやっと、彼の穏やかな目が瞬くのが見える。
「妙だ。今は夜だぜ?ここは火しかない。
太陽の光はない」
ジェドの疑問に、男性は優しく称えた。
「そう。鋭いな。
俺の場合、明るいものを見ているとよくない目をしてる」
「何だそれ!?」
そんなビクターの反応を、その彼は面白がった。
「あの頃は、"日陰のレオ"で有名だった。よろしく。
君達だな?噂の冒険者で、悪戯っ子ってのは」
「ひかげのレオー?」
可笑しな名前だと顔を歪ませるジェドに、レオは再び笑う。
4人の話は早くも、漁船から移動するスタンリーやレックスから聞かされていた。
しかし南の者達は、彼等が経験した事を真っ直ぐ受け入れるのに、少々時間がかかっている。
ただ、先程の襲撃や目前のシャンディアの存在に、理解を促されていた。
ライリーの施術が止まると、淡々と道具を消毒しながら、片付け始めた。
漁師達はその素早さに感動するが、共に住む者達は相変わらずだと話す。
そんな皆の会話も他所に、彼女はその場を去ろうと踵を返すではないか。
「ライリー待ってくれ」
スタンリーの声に、彼女は背を向けたまま立ち止まる。
「わし等は今、人魚の群に狙われておって、このままここにいたらまずいって話じゃ」
信用しない訳ではない。
彼女もまた、ここへ来る最中に不思議な現象を見て感じているものがある。
「いなくなった親子が喰われた……
次はわし等だろうと、その子が……」
ライリーがジワジワと肩越しに振り向くと、シャンディアと目が合った。
彼女は大きな灰色の眼を揺らしながら頷く。
だがライリーは首を落とすように目を逸らし、顔は髪で隠れてしまう。
そして、僅かに見える口元が動いた。
「そう……それはそれは……」
「「ライリー!?」」
それでも去ろうとする彼女に、一体どういうつもりかと仲間達は慌てて止めようとする。
「行けばいい……」
意味が分からない言葉を残し、彼女は外に数歩出たその時――
「来てもらう」
唯一、射止めるように飛び込んだマージェスの声に、彼女は驚きながら小さく振り返る。
「来てもらう。あんたも、守られるべきだ」
火花の音に紛れる、他の者とは違ったブレーキ。
何故、そんな言い方をするのか。
ライリーの目は徐々に警戒するように尖る。
出会って間もない者が、何をそう熱苦しくなる事があるのだ。
こんな自分なんかに。
代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
9月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します




