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「そういえばその毒って、体の中に残ってたら、まさかあんな姿に変わっちゃうの?」




シェナの問いかけに、皆はゾッとしてレックスを見た。

レックスは咄嗟に、体中を隈なく見渡す。




「分からない……ただ、貴方は人間……

同じ人魚になったかどうか……」




レックスは想像を絶して顔を拭った。






 「それって、よくあるゾンビってやつ?」




真っ直ぐ飛び込んだのは、落ち着いた男性の声。

皆の視線の先には、漁師達と歳や体つきが似ている者が座っている。

シェナは、その目に黒いものを引っ掛けている彼に目を見開く。

明るいこの場だから気付いたが、掛けているそれは黒ではなく焦げ茶をしていた。




 彼は、昔よくやっていたゲームを思い出したと付け加えれば、周囲はまさかと言わんばかりに慌てて首を振る。

そんなやり取りにも無関心なライリーは、シャンディアの話を聞き入れ、患部を再び見た。




 ライリーは床に置いた荷物を広げ、

大きさが違う布類や、裁縫道具の他、釣り針を真っ直ぐに伸ばしたであろうものを並べる。

細い透明な糸も出てきた。

そして、来るまでずっと手にしていた瓶の栓を抜き、手や道具に塗り始める。




「うえっ」




ジェドはその臭いに、すぐさま鼻を瞬時に覆った。

何だか知っている臭いだと気付いたグレンは




「酒があんのか!?」




つい、声を上げてしまう。

どうやら、数える程に残っていたが、殆どをライリーに取られたそうだ。

それらは全て、度数が高いもので揃っている。

飲まないよう言われている理由は、今、彼女が施している事を見れば明らかだ。




 ライリーはふと、細長く巻いた布をレックスに手渡す。




「耐えるなら噛んで……

あと、何人か押さえてて……」




フィオは小さく声を漏らすと、大きく後退(あとずさ)る。

それにシェナも釣られ、後の2人も逃げるようにレックスから離れた。




 レックスの手足はいよいよ抑えられていくのだが、特に施術するライリーを蹴らないよう、右足にはマージェスとカイルが付く。

冷や汗が滲むレックスは早くもぐったりしてしまう。

腹を括っただなんて思う自分に、嫌気が差した。






 シャンディアが椅子から立ち上がると、怯える4人に近付く。




「大丈夫」




彼女は微笑むと、ふわりと鏡の双眼を見せた。

そこに映る光景に、4人は吸い込まれるように見入ってしまう。




「何だい?」




興味を示してやって来たのは、例の不思議なものを目に掛けた男性だ。

他にも数名の南の大人が来ると、シャンディアの眼を覗き込む。




「レックス寝てんじゃん」




ジェドはすっかり恐怖が吹き飛んだ。

ビクターは、そこに映るカイルの位置に疑問を浮かべる。




「立ってる。今は屈んで足押さえてんのに?」




その声に導かれるように、映像を見た皆は抑えられたレックスを振り返った。









代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


9月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




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