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(6)




 冷風に横殴りされる篝火(かがりび)が、宵の街を歪め続けている。




 南の島の奥へ突き進む、先頭のジェド。

着地の際に船着場で激しい飛沫(しぶき)を受け、冷や汗との判別がつかない。

辺りには、浜とは違う砂っぽさや、鉄っぽさを含む臭いが漂っていた。

多くのガラクタが転がる地面に時折、目を奪われる。

主に角ばった小石や岩、レンガやアスファルトの欠片が敷き詰められているようで、踏む度に、貫通に至らない程度の尖ったものが魚皮(ぎょひ)のソールから感じられた。

東の島と比較にならない足場は、力走を妨げてくる。

合間に目にする、ブロックを規則正しく並べたスペースに生える草木もまた、不思議なものだった。






 気になる風景を抜け続け、直に捉えたのは夫婦らしき人物。

2人は陸を這い上がる人魚に恐怖し、足が竦んでいた。




「伏せろ!」




ジェドの怒号に、彼等は訳も分からず咄嗟に屈む。

途端、その頭上に1体が飛躍して現れた。

それはジェドを捉えるなり狂気の悲鳴を上げ、眼窩のオレンジの眼球を奇妙に躍らせる。

まるで、いる筈のない者を捉えたような素振りだ。




 夫婦に触れさせまいと、ジェドは引き延ばした槍を真横に構える。

そのまま、降りかかる人魚の両手と口に咬ませた流れで地面に叩きつけた。

横転した人魚の頭を2度、大きく槍で殴打する。

襲撃が一時止んだ隙に、彼は夫婦に奥へ進むよう促した。




 まだだ。

人魚が再び地面を這って襲い掛かろうとする。

ジェドは振り返ると透かさずガラクタの地面を蹴り、人魚の視界を遮った。

人魚の進行が止まるとカイルが合流し、尾鰭の根元を掴んでは海の方角へ勢いよく引き摺る。




 カイルは重過ぎるそれを手放し、傾斜を使って蹴って転がした。

その先では、グレンが別の1体に槍を奪われている。

だが彼は、間髪入れずに人魚の脇腹に複数回、素手で打撃を喰らわせた。




「目ぇ覚ませ!サタンなんかに惑わされるな!」




そんな声も届いていないのか。

人魚は身を捩らせ、地面に泡を吐きながら仰向けになり、苦痛の声を漏らす。






 「「シャンディア危ない!」」




(ようや)くフィオ達が合流する中、シャンディアは躓きながらも必死に前を駆け、激戦区に視線を這わす。

真っ白な肌をした彼女は、暗い島の中でも姿が強調されていた。




「下がれシャンディア!」




追いついて早々放たれたビクターの声が、人魚の下顎が激しく蹴り上げる鈍い音に重なる。

そこへ更に複数の人魚が彼に攻め始めた時、それらはシャンディアに叫声を上げながら牙を剥いた。

あまりの金切り声に周囲の者達は耳を痛め、鋭い異音が脳内に籠る。

人魚の目標はシャンディアに変わり、一点集中する視界にはもう、人間など映っていないようだ。









代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


9月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




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